第52号:工場実習とインターンシップ

この夏もいろいろな形式のインターンシップが各企業で実施されており、多くの学生が社会勉強をしていることと思います。インターンシップという言葉を聞くと、いつも思い出されるのは、理工系学生に伝統的にあった「工場実習」です。今では経験者も少なくなっているようですが、これはインターンシップという言葉が輸入される前からあった、日本の伝統的な学生の社会勉強でした。決して効率の良い社会勉強ではありませんでしたが、学ぶことは多かったと思います。

理工系学生の工場実習とは、所属する研究室の教授の指示によって特定の製造業の工場へ行き、見習い社員のように生産ラインでモノヅクリの現場を体験することです。期間は1ヶ月程度で、企業での待遇はアルバイトとされていることが多かったです。インターンシップと違って、特にカリキュラムが組まれて指導されるわけではありませんので、なんとなく単純作業のアルバイトで終わってしまったという学生も多かったですが、心ある先生は「何を学ぶかは自分で考えろ。」「何を学べるかは君の問題意識次第だ。」という言葉で送り出してくれました。

工場実習の経験者には、「そうは言われても単純作業で終わっちゃったよ。」「工場の人と仲良くなっただけだったなあ。」という感想も多いのですが、インターンシップでも工場実習でも、忘れてならないのはカリキュラムの充実度ではなく、参加する学生の学ぶ意欲ではないでしょうか。整備されすぎた環境の中では人間の創意工夫する力が衰えます。「必要は発明の母」という言葉通り、問題意識のあるところにアイデアが振ってきます。

しかし一方で、インターンシップという名称で学生をアルバイト要員として招集する困った企業もあります。過日のダイヤモンド・ビッグ&リード社のセミナーでも就職課の方から、そういった企業の対策はどうすべきか?というお問い合せも戴きました。インターンシップの定義を定めるというのは難しいことですが、そういった企業・業界は特定の分野に限られると思いますので、ブラック・リストを作って就職課ネットワークで共有すれば良いのではないでしょうか。学生向け個人商法では既に行われている対策だと思います。(最近は学生向けの就職情報サイトでもこういった情報が提供されています。)

また、ちょっと無情かもしれませんが、そういった失敗も社会勉強だ、致命的にならない程度の失敗は学生のうちにやっておいた方が良い、と指導する発想もありえます。無駄のないこと、完成されたもの、安全なもの、の中だけで学ぶことは社会勉強としては何か不足しているのではないかと感じるのです。夏休み、可愛い子には旅をさせたいものですね。

第51号:「就職課に対する採用担当者の声」

先日、ダイヤモンド・ビッグ&リード社主催の大学就職指導ご担当者向けのセミナーがあり、「大学就職部の役割を探る」というテーマで講演をさせて戴きました。事前にProfessional Recruiters Clubのメンバーに呼びかけ、大学就職課についてのアンケート調査を致しました。セミナーで一部を発表したのですが、講演後に詳細を知りたいというご感想を多く戴きましたので、ここでいくつかご紹介したいと思います。歯に衣着せぬ言葉もありますが、採用担当者の生の声ですので是非ご参考下さい。

  • 大学就職課についての満足・不満足について:

「一部の私立大学の就職課は主体的に外を見ようとし、採用担当者などの意見を真摯に聴き、そこからヒントを得て進取の取り組みをされています。一方では内にこもり、従来踏襲型で内外に対して主体的に動こうという姿勢が見られないところもあります。また、人事異動が極端に頻繁なところもあり、経験やノウハウの伝承が分断されてしまうのが、とても残念です。就職サポートに対する組織側の姿勢の希薄さを感じるとともに、これでは、学生に対しても、企業に対しても満足なサポートができないのもやむなしかなと思えるところもあります。」

「大学によって温度差がある。それは特定の大学様では学生の就職、並びに企業の採用ということに真剣に取り組んで頂き、それが画期的なセミナーなど行動となって表れている。その反面、学校の経営(自分の城)に目が行き過ぎ、学内の人事ローテーションが盛んになり、長期的な取り組みを出来るだけの人材並びに風土が確立されていないと感じる。」

「大学によって異なるが、窓口がオープンでない所がある。(窓口を特定の企業にしかオープンにせず、その他の企業に学内セミナー等の機会を提供してくれない。国公立に多い。)」

「就職課の影響が強すぎて、学生が自分で考えず、就職課のいいなり(就職課がこう言うからこれが正しい)になっている。概して就職課の態度が威圧的。カウンセリングというよりも「私は知っているが君たちは知らないだろう。だから聞いておかなければいけないんだ!」という押しつけ&不安感を持ちやすい。」

  • 大学就職課へ今後期待する役割、取り組んで欲しいテーマについて:

「学生への情報提供の場の形成を期待する。大学進学率が100%になろうとしている少子化の中にあって、今まで以上に大学をキャリアの通過点と捉える兆候がある。そこで、従来通りのアカデミックな学問を学ぶ場としての学校とは別に、より実社会を知りキャリアについて学べる場所の確立を期待している。そこには企業から何らかの協力を注ぎ、文系学生に対しても産学共同で日本の未来を担える人材形成の第一歩としたいと考える。」

「学生、採用担当者、その他関係者の声に真摯に耳を傾けること、そこで感じたことを実際に行動に移すことや学生に対するフィードバックやカウンセリング機能の強化。通常では、学生の関心が動かない良質の業界や企業の認知させるための活動。早期からのキャリアについての啓発機会の頻度向上。就職活動期以外で、企業の採用担当者を学生のモチベーションアップ(学生生活の糧となるべき啓発機会)に利用するなどの仕掛け。などを期待します。」

「学生が自分で考えて、自分で判断できるような就職活動の指導。就職課の押しつけや決めつけ、過保護的な指導は学生の考える力を損なう。」

第50号:採用担当者とキャリアカウンセラー-2

昨年、このタイトルで採用担当者とキャリアカウンセラーの似て非なる点を書きました。その後、私の主催するProfessional Recruiters Clubにおいてもキャリアカウンセラーの資格取得者が徐々に増えてきましたが、何故、採用担当者がキャリアカウンセラーを目指すのでしょうか?

採用担当者がキャリアカウンセラーの資格を取得する目的は多様ですが、以下のものが中心でしょう。

1.面接の応募者を見かねて:

毎日学生と接しているうちに、「もっとこう言えば良い面接になるのに」「もっとこう考えれば良い志望動機になるのに」「こんなことで日本の若者は大丈夫か?」という歯がゆい気持ちから見かねて応募者の支援側にたちたくなります。採用担当者には企業の能力開発者を兼ねている方も多いので、教育・指導的な見地になるのでしょう。

2.自分の仕事の幅を広げたい:

「採用担当者は季節労働者」とよく言われるとおり、年間を通じて同じような業務(母集団形成・採用選考・内定者フォロー)を繰り返すことが多く、そのためマンネリ化を感じて仕事に変化をつけたくなる方が居られます。特に向上心の強い方が、こんなに同じことばかりを繰り返していて良いのだろうか?と思われるようです。

3.自分の経験を活かして新たなキャリアを身に付けたい:

自分の仕事の幅を広げるだけではなく、それを自分自身の新たなキャリアとして仕事ができないか?と考える方も多いです。実際、Professional Recruiters Clubの中には、いつかは大学就職課で働きたいと考えている方も少なくありません。

4.必要性に迫られて:

新卒採用の早期化により学生の内定期間1年間近くに伸びてきており、辞退者防止対策、内定者教育等の新たな業務が発生してきています。それには学生の指向性やキャリア・プランを一緒に考える必要性があります。また即戦力の中途採用面接においては応募者の過去の経験を振り返ることが多く、キャリアカウンセリング型の面接スキルが求められます。

さて、こういった背景の元に採用担当者兼キャリアカウンセラーが増えてきているのですが、意外とその知識と経験を社外で活かす「場」がありません。日々の業務の中で活用する機会もあるのですが、そこには「採用担当者と応募者」という厳然とした関係があり、「クライエントとカウンセラー」とは似て非なるものです。

そこで新たな試みとして、Professional Recruiters Clubの中でチームを作り、相互の勉強会・情報交換会を行い、ご協力戴いている大学での就職ガイダンスのお手伝いを始めてみました。まだ試行錯誤を繰り返しているところですが、新たな学生のキャリア開発と採用担当者自身のキャリア開発とが同時にできればと思っています。活動状況についてはまた折りをみてこちらでご紹介して参ります。

 

第49号:4年生の就職活動リターンマッチ

3年生向けのガイダンスが盛んに行われる毎日ですが、とある就職サークルから4年生の就職活動への支援依頼があり、お手伝いしてきました。就職活動リターンマッチと銘打たれたこの企画は、まだまだ頑張っている就活学生向けのものでしたが、リターンマッチというよりは準備不足で初戦もまだ十分にこなしていない方が多かったです。適切な相談相手や指導者をもっていない学生ほど、就職活動に出遅れたり固定した自分の価値観から抜け出せないようです。

この企画ではまず参加学生の方々の自己分析と面接方法の再考を行い、最後は模擬面接まで行いました。最近はコンピテンシー面接のような実体験を求める面接が多いので、自己分析によるアピールポイントと実体験とが論理的に整合しているかがポイントです。この基本的な点が意外とできておらず、面接者として聞いた時にアピールポイントがはっきりしていない方が多々見受けられました。

今回参加された学生は、大きく3つのタイプに大きく分けられると思います。

1.内定ホルダー

既に内定を持っておりますが、内定企業に納得できていない、または業界を変えて再検討中の学生です。こういった方は、自分の本当にやりたいことを再考するキャリアカウンセリング的な対応をすると、新たな道が見えたり迷いが無くなってきます。

2.スロー・スターター

事情はいろいろありますが、本当に4月から就職活動を始める学生って居るんですね。面接という非日常的な空間に戸惑ってしまい、緊張感から実力を発揮できないようです。自己分析の会話ではしっかりしているのですが、模擬面接になると驚くほど話せません。個人差はありますが練習を積んで少し慣れればよくなります。

3.唯我独尊者

一見、自分の確固たるスタイルをもっているように見えますが、他人からの評価を聞く耳を持っていません。人に評価される恐怖心をもっていたり、面接での自己アピールはどこか自分を脚色しているようで自分にウソをついている感覚に襲われるようです。頭の良い学生に見受けられますが、信頼関係のできた年長の指導者に当たる必要があります。

さてこの時期の採用担当者側の視点ですが、シーズン前と違って多くの企業ではそれぞれで今シーズンの採用選考基準を固めており、内定ラインを設定しています。つまり、この時期の採用担当者は目が肥えてきているのです。ですから「この時期にまだ採用活動をしている企業なんだから・・・」と甘く見て臨むとあっさりと門前払いになります。一方で、この時期に就職活動を行っている学生さんの多くは疲れ気味です。この企画に最後に参加者にお伝えしたのは、「失敗にへこたれず、それを次につなげる積極性です。」ということでした。この時期に一番、必要なのはやはりこれにつきますね。それは元気の無い学生さんの中でこそ光るものですから。

第48号:低学年のキャリア教育について

いよいよ3年生向けの就職ガイダンスがあちらこちらで始まってきている中で、チラホラ見かけるのが1~2年生を対象とした低学年向けのキャリア教育です。若年労働者の就業問題は、今では年金問題を出すまでもなく国家的課題になりつつあり、早期に若者の就労意識を高めていくべきだ、との声も聞きますが、その方法論はまだ模索中というところが多いでしょう。いろいろなアプローチがあると思いますが、その基本中の基本は「モデリング(観察学習)」、やはり自分の理想とするモデルを見つけることからはじまるのではないかと思います。

この時期に開催される低学年向けのキャリア・ガイダンスは、就職課の方が多忙なせいか、就職情報企業や学生サークルにアイデアから実行まで委託しているところが多いようです。いくつかのガイダンスを見学いたしましたが、どうも参加者数はいまひとつのようです。ガイダンスの内容はよくできていて、参加した学生の関心も高いようですが、やはり課題は動員数を如何にあげるかという点で、大学によってはガイダンスから講義に昇格させて強制的に聴講させているところもあります。いましばらくは主催者にとっての模索の時期が続きそうですね。

低学年向けのキャリア・ガイダンスでは、「なりたい自分をみつけよう」とか「やりたいことを見つけよう」というスローガンを良く伺います。初心に返ってこの言葉を考えたとき、私の頭にいつも浮かぶのは、「坂本龍馬」「野口英世」「豊田佐吉」「ファーブル」「シュリーマン」等々の偉人達です。初学生の頃に図書館で読みあさった偉人の伝記は今でも鮮烈な記憶に残り、いつか自分はこんな研究者・発明者になるんだ、というイメージをもったものです。これはまさにキャリア開発でいうところの、「モデリング」です。遠い世代・世界の偉大な人物なので直接に薫陶を受けることはできませんが、大きな夢を描くには十分なモチベーションになりました。

最近の子供達はどんな偉人伝を読むのだろうと、知人に聞いたところ、最近は多くの伝記が廃版になっていると聞き残念でしたが、NHKのプロジェクトXを見て感動する若者が最近多いと聞きます。これもモデリングなのでしょう。

低学年のキャリア・ガイダンスで何をやるべきか?今の雇用情勢を伝えたり、身に付けなければならないスキルを教え、足元をしっかり固めることも必要でしょう。しかし、一番大事なのは若者が高い空を見上げる意志と希望を持たせることではないかと思います。自分よりも高いところにモデルを見つけた若者は、きっと自ら努力もするでしょうし、敬語も自然に使うようになるでしょう。モデリングとはタテの人間関係を知ることに他なりません。低学年のキャリア・ガイダンスの大きなヒントがここにあるような気がします。

 

 

第47号:世代別のキャリア開発アプローチ

企業の採用人事は選考と内定者のフォローに神経を尖らす時期になりましたが、大学では早くも3年生を中心とした来シーズンの就職指導が始まってきました。並行して2世代の学生を支援するのは大変な労力ですが、世代や学生のレベルに応じたアプローチを考えたいものです。

先日、3年生に向けた職業ガイダンスで企業の最新採用動向と自己分析についての講演を行いました。「最近の企業の選考基準を考えると、自己分析には無理にやらなくても良い部分もあるので今からあまり肩に力を入れる必要はありませんよ。むしろ行動の方に比重を置いて下さい。」とお伝えしたら、多くの受講者から「なんだか大変なことをやらなくてはいけないと感じていましたが、少し気が楽になりホッとしました。」という感想を戴きました。

この時期には、たまに就職スタッフを対象とした学生の就職指導についての話を求められることもあります。キャリアの開発支援をする場合、1つの手法だけでは指導者側のペースになりがちですから、できればクライエント(学生)の状況に応じて、コンサルティング、コーチング、カウンセリング(前者ほど指導的要素が強い)等のアプローチを使い分けたいものです。指導側レベルや都合にクライエントを合わせるというのは、スキルやテクニックの指導には良いかもしれませんが、心の発達には向きません。

私見ですが、一般のキャリアの開発支援を行う場合には大きく分けて下記の4つの各世代でアプローチを変える必要があると思っています。キャリアカウンセラーもこの全領域をカバーするのは困難でしょうから、今後は自分の得意分野(専門分野)を明確にする必要があるでしょう。

1.家庭~小中学高校生(10代以前)

2.大学生~新社会人(20代)

3.中堅社会人(30代)

4.中高年社会人(40代以降)

大流行になっている「低学年からのキャリア教育」についても、職業意識を早期に持たせたり考えさせたりする機会をつくることは大事ですが、その手法を高学年と同じにやっていては成功しないと思います。その結果、主催者が考えたほど参加者が集まらなかったり、上記の例のように学生にプレッシャーを与えたり、早期にテクニック論に走らせてしまうことになってしまうかもしれません。

先日、中央職業能力開発協会から若年者に会わせたキャリア開発手法およびキャリア・コンサルタントのスキルについて報告書がでました。またキャリアカウンセリングの資格が増えるのかと思うと勉強で頭が痛くなりますが、これもクライエント(学生)にっとっては望ましいことだと思います。

参考資料:若年者向けキャリア・コンサルティング研究会報告書(中央職業能力開発協会)

http://www.mhlw.go.jp/houdou/2004/04/h0428-2b.html#top

第46号:新卒の雇用ミスマッチ

就職活動もいよいよ後半戦になりました。大手企業の採用活動は一段落したようですが、中堅企業についてはこれからが本番になるでしょう。この時期になると、学生にとっては就職活動を続けることは精神的にも辛いとですが、大事な頑張りどころですので応援してあげたいものです。同時に、なかなか自分にあった仕事が見つからないと戸惑う学生には、仕事選びの考え方を改めて伝える機会だと思います。

現在の厳しい就職状況をみていると、メディアではいつも「雇用のミスマッチ」という文字を見つけます。求職者の持っている専門性や指向性が、求人企業のそれとズレているということであり、厚生労働省でもこの対策に必死になっております。では新卒採用に「雇用のミスマッチ」というのはあり得るのでしょうか?私見ですが、職業経験の無い新卒学生はあまり気にしなくても良いのではないかと思っています。

人が職業を選択する場合、やりたいことがあってそれに就く場合と、就いてみて経験した後にそれがやりたいことだったと思う場合とがあると思います。この2つのスタイルは、個人によって異なりますが、同様のことを採用面接で質問しています。「貴方は、今の大学・学部を何故選んだのですか?」という問いがそれにあたりますが、その回答で「××先生について学びたいと思ったのです。」「こういった職業に就きたいと思ったからです。」と卒業後にやりたいことを明確に回答する学生は100人に数人居るかどうかです。同様な質問で、高学年になってから「貴方は今のゼミ・研究室を何故選んだのですか?」という質問をすると、その理由を回答できる学生は数十人に増えてきます。つまり、その組織に入って初めて自分のやりたいことが見えてくる、逆に学んだことをどう社会で活かすか、という発想がうまれるわけです。

実際、企業の就職でも同じで、OB体験談で語る社会人のキャリアの体験談で「最初からこんなキャリア・デザインをしていたのです。」と講演される方もおられますが、楽屋で裏話をすると「いや、綿密に計算していたわけではありません。」と本音を話される方が殆どです。最近のメディアの風潮では、自己分析やりたいこと本当の自分、を探させるカウンセラーや就職塾のようなものが多いです。しかし、それは本当に必要なものでしょうか?

雇用のミスマッチ」の最大の問題は、この言葉を流行らせてしまったところにあるのではないかと感じることがあります。この言葉がメディアで声高にいわれているから、「就職活動が厳しいのは私のせいではない、社会のせいだ。」と考える学生を増やしてしまい、結果的に、やりたいことを探し続ける学生、何となくフリーターになってしまう学生を許容しているように思えます。

今から就職活動に頑張る学生に一番必要なのは、どこかのTVCMではないですが、

考えるな、Just Do It!

という言葉ではないかと思います。そうしてぶつかってきた学生に対して、初めてフォローのカウンセリングやコーチングの出番になるのだと思います。

第45号:グループ採用企業の課題

GWを前に企業の内定出しも進み、採用担当者としては内定者の入社意志の確認に神経を使う時期になりました。学生からの相談内容もこれまでの自己紹介や面接対策から、内定を貰った企業に行くべきか辞めるべきかという相談が増えてきています。最近、ちょっと気になる相談は、グループ採用を行っている企業の内定者からのものです。ネット時代になって応募者の採用選考プロセスがしっかり管理できるようになった反面、新たな課題が出てきたようです。

企業のグループ採用とは、一般に複数の関連会社(子会社)をもつ本社(親会社)がその知名度を活かして関連会社全体の広報活動および採用応募の窓口を行うものです。企業にとっては知名度の低い関連会社の採用広報を支援でき応募者の管理も効率化できますが、応募者にとっては募集内容が関連会社間で待遇が違っていたり、最終的に自分が何処の会社になるか不明確という不安な面もあったり、たまに法律的な問題(雇用条件を明確にせずに内定を出す場合等)になることもありました。

今回の学生さんの相談は、グループ採用企業内の数社に応募していたところ、幸いにもその中の1社に内定したというもの。ところがこの応募者は同グループ内の他の関連会社が第一希望で、並行して採用選考を受けていたのですが、先に内定した企業から入社意志確認の誓約書の提出を求められてしまったのです。勿論法的には、誓約書を出したとしてもその後の採用活動を拘束することはできませんが、グループ内の他企業を受けることは、すぐにわかってしまうのではないか、と心配しておりました。仮に、第一希望の企業に内定したとしても、先に内定した企業を辞退するのにグループ内他企業に入社するのは言いにくいことでしょうね。

本来であればグループ採用を行う企業は、こういったグループ内の併願問題については事前に応募者へ明らかにすべきことなのでしょうが、残念ながらまだ徹底している企業は少ないようです。最近ではグループ企業内に人事アウトソーシングの専門会社を作り、応募者のデータを一括管理するところも多いですから、企業側の方で学生の併願状況を把握することは技術的には容易になったことでしょう。しかしその情報の取扱には細心の注意が求められます。

今回の相談のように、応募者の受付情報を一括管理してグループ内の関連会社に配信することは許されても、その応募者の採用選考が進んで関連会社毎の採用面接結果情報をまとめて共有することは許されるか、という点は問題です。まだこれについては判例も無いようですが、先日、企業人事労務関係者の勉強会でこの問題を議論したところ、とある企業では倫理上の問題から例えグループ内企業であっても採用選考情報(つまり誰が内定したかという情報等)については情報交換を禁止しているとのことでした。

ITが進み、個人情報の取扱がますます容易になってきておりますが、だからこそこういった情報を扱う採用担当者には最新の注意が求められてきています。間違っても、自社の内定者に対して「君は、うちの親会社を受験しているよね?どうする気なの?」なんて質問はうっかりでは許されないでしょう。

GWを前に企業の内定出しも進み、採用担当者としては内定者の入社意志の確認に神経を使う時期になりました。学生からの相談内容もこれまでの自己紹介や面接対策から、内定を貰った企業に行くべきか辞めるべきかという相談が増えてきています。最近、ちょっと気になる相談は、グループ採用を行っている企業の内定者からのものです。ネット時代になって応募者の採用選考プロセスがしっかり管理できるようになった反面、新たな課題が出てきたようです。

企業のグループ採用とは、一般に複数の関連会社(子会社)をもつ本社(親会社)がその知名度を活かして関連会社全体の広報活動および採用応募の窓口を行うものです。企業にとっては知名度の低い関連会社の採用広報を支援でき応募者の管理も効率化できますが、応募者にとっては募集内容が関連会社間で待遇が違っていたり、最終的に自分が何処の会社になるか不明確という不安な面もあったり、たまに法律的な問題(雇用条件を明確にせずに内定を出す場合等)になることもありました。

今回の学生さんの相談は、グループ採用企業内の数社に応募していたところ、幸いにもその中の1社に内定したというもの。ところがこの応募者は同グループ内の他の関連会社が第一希望で、並行して採用選考を受けていたのですが、先に内定した企業から入社意志確認の誓約書の提出を求められてしまったのです。勿論法的には、誓約書を出したとしてもその後の採用活動を拘束することはできませんが、グループ内の他企業を受けることは、すぐにわかってしまうのではないか、と心配しておりました。仮に、第一希望の企業に内定したとしても、先に内定した企業を辞退するのにグループ内他企業に入社するのは言いにくいことでしょうね。

本来であればグループ採用を行う企業は、こういったグループ内の併願問題については事前に応募者へ明らかにすべきことなのでしょうが、残念ながらまだ徹底している企業は少ないようです。最近ではグループ企業内に人事アウトソーシングの専門会社を作り、応募者のデータを一括管理するところも多いですから、企業側の方で学生の併願状況を把握することは技術的には容易になったことでしょう。しかしその情報の取扱には細心の注意が求められます。

今回の相談のように、応募者の受付情報を一括管理してグループ内の関連会社に配信することは許されても、その応募者の採用選考が進んで関連会社毎の採用面接結果情報をまとめて共有することは許されるか、という点は問題です。まだこれについては判例も無いようですが、先日、企業人事労務関係者の勉強会でこの問題を議論したところ、とある企業では倫理上の問題から例えグループ内企業であっても採用選考情報(つまり誰が内定したかという情報等)については情報交換を禁止しているとのことでした。

ITが進み、個人情報の取扱がますます容易になってきておりますが、だからこそこういった情報を扱う採用担当者には最新の注意が求められてきています。間違っても、自社の内定者に対して「君は、うちの親会社を受験しているよね?どうする気なの?」なんて質問はうっかりでは許されないでしょう。

 

第44号:学生の相談からみる現状

4月の中旬になり採用選考も本格的になりましたが、今年も内々定を取れる学生と取れない学生とに二極化しているようです。今回は、ダイヤモンド・ビッグ&リード社でのキャリア・セッションにおける相談内容をご紹介しましょう。来訪する学生の希望者に対しては企業でと全く同じスタイルで模擬面接を実施しておりますが、内々定の取れない学生には下記の点がよく見られます。

・正解探しから抜け出せない

熱心に多くの企業に応募する学生にありがちなのですが、「どういえば受かるのですか?」という正解探しから抜け出せていません。採用選考で正解を求められるのは初期選抜の段階だけで、最低限の基準をクリアした後は、個性の比較になります。内々定を取った学生の回答はその個人と一体となって意味があるので、同じことを他の応募者が話しても同じ結果にはなりません。極めて基本的なことなのですが、特に自己主張の強い性格の学生にはこのことを理解するのが難しいようで、言い方をあれこれ探して変えているうちに、自分の言いたいことがわからなくなる循環に陥っています。気づかせるのに最も時間がかかるタイプです。

・自己主張したいポイントにオリジナリティがない

採用面接で悩ましいのは、最終的に相対評価になりますのでどんなに良い志望動機や自己PRでも他の応募者と同じ回答では差がつかないという点です。一次面接をクリアしてもなかなか内々定を取れない学生にあるパターンで、第一印象ではそつなくまとまっていて減点するところはなくても、加点ができない応募者です。例えば今年は「リーダーシップ」を持った学生を求める企業が多く、「貴方が何かリーダーシップを発揮した実例をあげて下さい。」という質問が増えています。学生の回答でワンパターンになっているのは、「私はみんなを引っ張っていくタイプではないのでリーダーシップはありませんが、相手の話を聞くのが得意でメンバーの意見の調整役やまとめ役をこなしてきました。」というもの。「リーダーシップ」にはいくつかのタイプがあるのですが、何か指導的な役割をこなしていないとリーダーシップが無いと思いこんでいる学生が多いです。「私の考えるリーダーシップ」という点を明らかにすると、自分の意見がでてくると思うのですが。

・回答内容の関係が明確になっていない

採用面接ではいろいろな質問を行いますが、その回答内容が一貫していないことがあります。基本的な「志望動機(結論)→自己紹介・PR(理由)→エピソード(実例)」という流れができておらず、それぞれの質問の内容で主張したいことが別々になっている、または明らかになっていないケースです。

一方、「エントリーシートに、こう書いてしまったので志望動機はこう言わないと・・・。」とか「一次面接で、こう言ってしまったのでこう言わないと・・・。」という点に悩む学生もおりますが、これは採用選考を通じて学生の企業理解が深まることを採用担当者はわかっているので、変更した回答内容の筋が通っていれば気になりません。

限られた時間での採用面接では、全ての会話はその人を理解するためのものです。応募者は全ての回答を自分が何をアピールしたいのかという意図から回答して欲しいものです。趣味を伺うのも世間話をしているわけではないのですから。

第43号:就職ガイダンスからキャリア教育へ

桜咲く日本の4月は新しいシーズンの始まりですね。企業人事部は新入社員の受け入れに、大学就職ご担当の皆様は新入学生の受け入れに慌ただしく追われる季節です。大学生のキャリアに関する講演やトレーニングを行う私の方にも今期のお問い合せを戴くことがありますが、最近は就職ガイダンスというよりもキャリア教育という視点でのご依頼が増えてきました。時には教授と協力して正規の授業の講義として行うこともあり、徐々にではありますが、大学改革もようやく春を迎えつつあるのかな、と感じます。

この春は多くの企業業績も上向いておりますが、少数精鋭の号令の元、採用と能力開発に関わる人員は削減されたままで、両方の業務を兼務している方は多いです。今はまさに新入社員の研修プログラムが始まったところですが、企業と大学とは似た課題を抱えているようにみえます。例えば現在、若年社員層の能力開発の基本路線は外部業者を使ったアウトソーシングを導入することであり、優秀なインストラクターを確保することがポイントですが、これは大学就職担当の方が職業ガイダンスの講師を選定するのと同じことです。そして厳しい競争を越えた上級社員になると、コーポレート・ユニバーシティという名の社員講師(その企業の役員やトップレベルの業績を出している実力者)が直接指導したり、留学として社外の修行に出したりしますが、それは大学上級生のゼミや、交換留学にあたるのかもしれません。

さて、こういった新入社員・学生向けのアウトソーシング中心の能力開発スタイルには2つの課題があるかと思います。

まずは、星の数ほどある業者のメニューや、講師をどう組み合わせて全体のプログラムの方針を考えるか、ということです。大学の就職ご担当の方からは、「今年はこんな内容で実施するつもりですが、他に何かご提案はありますか?」というお話をよく伺います。各プログラムは十分な内容で、新しいメニューを追加する必要は無いようですが、気になるのはそこには全体に流れる思想はあるか?各メニュー間の関係はとれているのかな、という点です。

次に、そのメニューを受講していく新人の進捗状況はどのようにフォローするのか、という点です。企業においては、ここをフォローするのがOJT(On The Job Training)という各配属現場の先輩社員による指導やナレッジ・マネジメントというITのシステムです。小規模な大学であれば、学生全員に面談を行ってきめ細かく指導することもできるでしょう。しかし、ある程度の規模を越えた時、就職担当者だけでは対応は不可能になり、それを支援するシステムやチームが必要になってきくるのではないかと思います。

また、就職活動からキャリア開発活動へ、就職ガイダンスからキャリア教育へ、という課題の答えもここにあるのではないでしょうか。時節柄、就職年次だけではなく、新入生からキャリア開発教育が必要だ、という声を多くの大学からの方々からお伺い致しますが、まだ日本のどこの大学もこれといった切り札は持ち合わせてはいないでしょう。しかし、大事なのは暗中模索しながら実行することで、それはまさに個人のキャリア形成と同じことではないかと思います。同じやるならば、企業の能力開発も大学のキャリア開発も、同じ豪華なフルコースのメニューを作るだけではなく、例えスープの一皿だけでも暖かい我が家だけの手料理のメニューを作ってみたいものですね。「ガイダンス」から「教育」へ進化させる秘密のレシピもそこにあるのではないでしょうか。

 

Just another Recruiting way