第102号:採用戦力になっている内定者

就職・採用活動の長期化により、入社までの内定期間も長くなりましたので採用担当者は内定者に対しての辞退防止のフォロー策にも気を遣うこの頃です。この時期になると3年生(修士1年生)向けの来シーズンの採用活動も盛んになって参りますが、最近は内定者を採用活動に引き出す企業も多くなりました。入社前教育として集合研修や教材を渡すくらいならまだ良いですが、「戦力」として扱うならば、せめてアルバイトとして扱って欲しいと思うこの頃です。

 

今は昔、私たちの世代が就職活動を行っていた頃は解禁日が10月1日であり、(4年の)夏休みに内定を持っている友人が居ると羨望のまなざしで見られたものでした。のどかな時代で入社までの内定期間の約6ヶ月、内定した企業の採用担当者に「何か入社前にやっておいた方が良い勉強はありますか?」とこちらから尋ねてみても、「学生のうちに思いっきり遊んでおきなさい。」と言われることが多く、入社前に膨大な課題を与えられるのは金融機関に内定した学生くらいでした。

 

ご存知の通り、入社前に内定者を最大限に戦力にしているのは人材ビジネス(人材派遣・紹介、就職情報等)業界でしょう。学生自身の日常の活動やネットワークがまさに即戦力になる産業ですから。大学内で後輩を集めて先輩体験談を行ったり、就職活動支援サークルを作ったり、ときには企業の人事部を訪問して就職イベントの提案まで持ってきてくれます。人材ビジネスに内定した学生にとって、これらは確かにとても良い「インターンシップ」でしょう。しかし企業サイドから見たとき、彼らは明らかに有望な戦力になっているわけですから、待遇面での考慮も忘れないで欲しいと思います。

 

私も以前、学生サークルから起業した就職情報のベンチャー企業とお付き合いがありました。熱心な内定者が稚拙ながらも学生らしい提案をもってきたので、広告でも出してあげようかと、いざ企画書や名刺をよく見てみると連絡先が個人の携帯電話番号・メールアドレスになっていることに気づきました。学生本人に確認してみると、内定企業のボランティアとして自主的に活動しているとのこと。しかし、たとえ本人が納得していたとしても、企業としては無給で働く学生個人と取引するわけにはいきません。その学生さんに法的なことも説明して、アルバイト社員になって貰ってから改めて出直して戴きました。

 

これは特殊なケースだったかもしれませんが、今は内定者を自社のセミナーに参加させることは多くの企業が始めてきております。これから就職活動を始める学生には先輩体験談はなによりの情報でしょう。しかし、法律やビジネス面で知識の少ない学生には、大人がしっかり配慮してあげなければいけないと思います。逆にこういった面をしっかり学生に教えて配慮し、協力を仰ぐやり方ならば、それは内定者にとっても非常に良い社会人教育になると思うのです。

 

 

第101号:採用担当者はマニュアル通りが嫌い

ICU(国際基督教大学)の大学院生が企業採用担当者の面接における意識調査を行いたいとの依頼があり、Professional Recruiters Clubを中心に約50名の採用担当者にアンケート調査を致しましたのでその結果を少々ご紹介致します。この研究はドイツ・米国・日本の採用面接において各文化による印象管理の相違を明らかにしようということだそうですが、いわゆる採用の面接本に書かれていることが、本当かどうかを調べてみたいとのことでした。

 

▼カジュアルな服装はあんまり気にしないが好印象にはならない。

服装についての印象は「どちらでもない(43.4%)」「悪い(41.5%)」の回答で、「良い(1.9%)でした。カジュアルな服装はデメリットになってもメリットになることは殆ど無いとのことですね。これかファッション業界等で集計すると傾向が変わるかもしれませんが。

 

▼ノックは2回でも3回でも気にしない。

入室時のノックの回数ですが、2回ノックは「良い(30.2%)」「どちらでもない(56.6%)」、1回または3回ノックは「どちらでもない(77.4%)」で、殆ど気にしていないということですね。採用担当者は応募者の入室待ちの時は、選考書類の確認に集中していることが多く、ノックの回数まで気にしていないと思います。マナー研修講師は「2回はトイレのノックですので止めましょう。」と良く言われますが、これはやはり笑い話にとどめて良いと思います。

 

▼給料や手当について質問するのは好まれない

「どちらでもない(49.1%)」「悪い(49.1%)」の回答ですが、これはこの質問自体が良くないというよりは、もっと就職に関する大事なことを聞いて欲しいということだと思います。給料等の実態は企業間・企業内でも差がありすぎて回答にもあまり意味がないでしょうから。外国のように給与が個別契約で一人一人異なる国では逆に印象が悪くなることはないと思われます。

 

▼マニュアルを見るのは良いが、マニュアル通りに回答されるのは嫌い

マニュアルを読んでいることについては「どちらでもない(45.3%)」「悪い(37,7%)」でやや印象が良くないようですが、実際の面接の回答でマニュアル通りの暗記回答では「悪い(43.4%)」「非常に悪い(30.2%)」でした。やはり「生きた会話」をしたいというのは大切なことのようです。

 

正直な所、アンケートでは採用担当者が全く気にしていない設問があったり、設問文言だけでは一概に判断できないこともありますが、大きな傾向として見るには参考になるでしょう。

マニュアル・ブームは情報過多社会の若者の傾向で、考える労力を省くという非常に危ないことです。学生と日々触れ合っていての個人的な感覚ですが、今の若者は「言葉にしないとわからない」「よろしかったですか?と過去形で丁寧表現をする」等、米国化が進んでいるようです。日本人は「空気を読める高等民族(?)」だったのですが、なかなかそうはいかなくなってきたようですね。

 

 

第100号:いざ戦場へ、そして休戦へ

国際情勢は某国の核実験によって一触即発の危険な状態に陥った・・・。現実世界もアクション映画のような昨今ですが、企業採用担当者は一足早く戦場に足を踏み入れております。10月に入り大学での業界研究セミナーが始まり、早くも学生とのコンタクトが始まって参りました。未だに4年生(修士2年生)の採用活動も終わっておりませんが、早くもターゲットは2008年卒業生へ・・・。

以前のメルマガで、就職戦線は下記の通りに展開すると書きました。

・「空中戦」・・・インターネット上での広告・学生登録

・「地上戦(郊外戦)」・・・大学近郊での企業合同説明会(就職情報企業主催)

・「地上戦(市街地戦)」・・・大学内での企業合同説明会(大学内組織主催)

以前はこの順番で行われてきたのですが、国立大学の独法化以降、大学内での就職ガイダンスやキャリア教育が大流行になり、空中戦と地上戦が同時発生しているようです。

今年になってますます顕著になってきた傾向は、情報の洪水化です。企業の採用予算が増えて例年以上に就職広告が増えてきておりますが、反対に学生は減少してきていますから、どうしても飽和状態になります。そのため、企業もターゲットを絞り、効率の良い早期の囲い込みを行おうとしますので、最近は「結果の二極化」から「情報の二極化(大学間情報格差)」が起きているようです。特に中小企業では最初から濃い小集団の形成に努めるようになるでしょう。

この傾向が進むと、企業は更に深いところから大学と関わろうとします。それは就職レベルでのアプローチではなく教育レベルのアプローチです。既にANA、キヤノンが特定の大学と連携して社会のニーズに適した学生の育成に取り組み始めました。この取り組みが成功すると、近い将来にはANA、キヤノンに入社したい学生が、その大学を志望するようになり、おそらく偏差値も上がることでしょう。その結果が、大学は優秀な人材を集めることができ、企業も戦争無しに学生と採用することができます。

採用する前に育成する「養殖型採用」の始まりですが、これこそが休戦協定なのかもしれません。

 

第99号:パーマネント・アドレスの重要性

10月に入り、大手企業と就職情報サイトでの学生登録が本格的に始まりました。通勤電車内の中吊り広告にも登録用のアドレスを記入したURLを見かけます。大学から卒業生の在籍確認や連絡先の確認を戴くのもこの時期ですが、個人情報保護法の影響で思うとおり情報提供ができないのは大学も企業も同じです。こういった状況では大学が独自に卒業生リストを整備する必要がありますが、その第一歩はパーマネント・アドレスの提供でしょう。しかし、なかなかこれに対応していない大学が多いのは何故なのでしょう?

パーマネント・アドレスとは、大学が学生に与える電子メールアドレスを卒業も恒久的に使えるようにすることで、卒業生の囲い込みに熱心な米国の方では常識的に行われておりますが、日本の大学では対応しているところは少ないです。何故、これを行わないのは不思議なのですが、予算や管理工数の問題だとしたら、それは相当な誤解です。メールアドレスの運用に使われるコンピュータの性能や管理手数はどんどん低価格かつ高機能になってきております。インターネット上に多くある、無料のメールアドレスの容量をみればすぐにわかることでしょう。

パーマネント・アドレスがあれば、卒業生との直接のコンタクトもメーリングリスト(同報メール)だけで済み、通信連絡費のコスト・ダウンにもなるでしょう。確実に卒業生から返事があるかどうかは、メールの問題ではなく、学生個人と大学との精神的な交流の深さの問題ではありますが、連絡ルートが有ると無いとでは大きな違いです。

パーマネント・アドレスを更に発展させたものが、先日書きましたWeb2.0のmixiのように、卒業生のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)サイトを作ることになりますが、それについても価格・技術の面で導入しやすくなりました。これを入学時からちゃんと作れば、4年になってからの就職先報告の回収率も上がることでしょう。

卒業生リストの整備は、就職課にとって緊急の課題であると思いますが、まずはパーマネント・アドレスの設定から始めることを強くオススメ致します。個人情報保護法を理由に多くの企業が卒業生リストを出さなくなるのは常態化してくると思いますが、大学の方でこれがちゃんと整備されているとしたら、今までとは逆に企業の方から卒業生を紹介して下さい、と相談がやってくると思いますよ。

(大学で無料人材紹介を初めても良いではないですか。大学の株は間違いなく上がります。)

少子化の影響でこれからは新卒だけではなく転職市場が主流になってくるとしたら、ますます卒業生とのパイプをもつことが重要ですね。

 

 

第98号:名実ともに全入時代

だんだんと秋が本格的になり、採用担当者も来春の採用活動に向けた「仕込み」に入る頃です。そんなとき、ふと飛び込んできたニュースは大学の入試受付変更に関するものでした。「来春の入試の指定校推薦は高専を含む国内すべての全日制高校を指定校にする」。なんのことかすぐには理解できなかったのですが、全国の高校全部を推薦指定校にするとは、結局、推薦を廃止する、または入試を廃止する、ということなのですね。採用担当者が今でも大きな拠り所にしている大学入試偏差値が、音をたてて崩れていくようです。

この時期は今春の採用活動の総括を終え、新たな企画をたてて母集団形成の準備を始めます。どんな学生をターゲットにするべきか、どんな広告をうつべきか、どんな会社案内をつくるべきか、何処の大学を重点的に訪問するのか、どんなメッセージが学生に響くのか・・・、メディアが多様化している今日、限りある採用予算でどのような配分をするかはとても悩ましい問題です。如何に資質の高い学生と効率よく出会うのか?採用担当者の考えるのはただその1点です。

そういった戦略を考えているこの時期に、このニュースの採用担当者へのインパクトは大きいと思います。AO入試が増えたとはいえ、現在でも大学の偏差値が企業採用担当者にとって最も有効な指標であることには変わりません。それを大学の側から放棄したということは、企業のターゲットリストからも外されることは間違いないでしょう。このニュースを聞いた高校教員が「生徒に配る指定校リストには掲載しなかった」と語っているのと同じ心境です。企業にも、知名度をひくためにいち早く来期の採用手法のネタを明かして(新聞等に広報して)学生の応募意欲をそそる手法はあります。広告を数多く出稿している大手企業ならではのやり方です。今回の大学の告知もそういった意図ならば理解もできますが。

先日、懇意にさせて戴いていた大学のキャリアセンターの方が、急な人事異動で入試広報に異動されました。いろいろな企画を一緒に考えて成果を出してきただけに残念なことですが、今の大学にとって応募者を集めることは経営上の緊急課題ですから優秀な人材を最重要のポジションに配置する事情はわかります。そのご担当者は企画力に優れた方でしたので、きっと良い仕事をされると思います。しかし、入試広報ではなく入試”広告”の仕事にならないことを祈るばかりです。その大学とは今後も長いお付き合いを続けたいものですから。

 

 

第97号:Web2.0型採用戦略

企業の採用広告においてインターネットはもう必要不可欠のメディアになってきております。そのためインターネットの技術的な進化による新しいサービスがたくさん出てきておりますが、なかなかこれについていくのは大変です。書店では「Web2.0」関係の書籍がベストセラーになり、TVのニュースでは「SNS」が頻繁に解説されておりますが、みなさんはどこまで理解されているでしょう?これにちゃんと追いついているのは若者の方でしょうね。

つい先日、mixi(ミクシィ)という企業が株式上場しました。既にみなさんもご利用されていると思いますが、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)という技術を使った双方向性の高く参加者同士が出会いやすい仕掛けのサイトを運営しています。加入者が既に500万人ということですから、これはは立派な社会(コミュニティ)ですね。

このサイトの特長は紹介制であることで、既に加入している会員の誰かから紹介状を送って貰わないと入れません。そしてこれがWeb2.0の世界で大事な「信頼性」を保証しているのです。ITに詳しくない方のために、ちょっと就職サイトを例に説明してみると、以下のとおりです。

・Web1.0 ⇒ 情報提供者側(企業・広告代理店)から学生への一方的な情報提供

・Web1.5 ⇒ 情報提供者に匿名学生からの反論情報(2ちゃんねる、みんなの就職活動日記)

・Web2.0 ⇒ カリスマ就職学生側からの情報提供&交換(信頼性の高い個人日記:ブログ)

つまりマスコミ側からの一方的な情報提供だったのが、就職活動をしている現役学生の発信する個人情報の方がどんどん台頭してきているということです。それに決定的に欠けていたのが「信頼性」で、Web1.5の時代は情報が多いものの信憑性に欠けるものが殆どでした。ところが、最近は(人物は特定出来ない程度に)個人情報を開示して、リアルに就職活動を公開する学生が出てきました。そのため、10000人の信頼性のない情報よりも、数人の信頼性のある情報(ブログ)に閲覧が集中し、いわゆる「カリスマ就活学生」が登場してきました。就職情報提供企業の方も、最近はそういった学生を集めてブログの集合体のようなホームページを運営するところが出てきています。

さて、こんな時代になると企業の採用戦略は非常に難しくなり、採用担当者に求められるセンスが高度になってきます。これまでは企業の都合で立てられた採用戦略が、これからはWeb2.0型就活を行う学生の動きを見ながら戦略を考えなければなりませんから。それでなくても少子化は始まっているし、いやはや大変な時代になってきたものです。

*参考文献:

「ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる」梅田望夫:筑摩書房

「Web2.0でビジネスが変わる」神田敏晶:ソフトバンククリエイティブ

 

第96号:面接官出張、どこでもAO入試

ニュースで「面接官出張、どこでもAO入試」という記事に目をひかれました。採用担当者として全国の地方都市をまわり、「出張面接」を行っていたことを思い出します。いよいよ大学の学生確保にも火がついてきたなと感じますが、これからますますこういった施策は増えてくるのでしょうね。

私が在籍していた企業は産業界での知名度は高くても、一般の社会・学生には殆ど知られておりませんでしたから、採用担当者として如何に応募者を増やすかが大きな課題でした。自社で待っていれば応募者が山のようにやってくる有名企業が羨ましかったです。そのため、首都圏から飛び出て多くの地方都市に向かい、企業のセミナー&選考の出張も数多く行いました。地方の出張面接で行うのは一次選考(書類選考、一次面接)までで、それをパスされた方には後日、首都圏の本社で二次面接・最終面接を行います。

「出張面接」は地方にある営業所の会議室を借りて行うのですが、小規模であるために学生との距離も近く、なかなか良い採用活動ができるのですが、たまに採用担当者の中でも出張を面倒くさがる者が居り、面接官を派遣するのに苦労することもありました。採用担当者は常に臨機応変に対応することが求められるのですが、なかなかそれが出来ず、面接室・必要書類当、準備万端整っていないと選考ができないというウルサイ面接官も居ります。(そんな面接官ほど人を見る目が偏っていたりします。)今回のAO入試では教員の方が出向かれるようですが、職員の方は苦労されてないかちょっと心配になりました。

これからは空前の少子化時代で人材の需要と供給が逆転します。本社の机で待っていては採用活動も難しくなることでしょう。高校野球を回って有望な選手を発掘するようなスカウト型採用がこれから増えてくると思います。私は海外の大学まで出張して面接をすることもありましたが、良い学生なら交通費(海外渡航費)も出して日本に呼んで役員に合わせるということも行いました。地方に、海外に、これから採用担当者は視野とフットワークを広く持たなければならないと思います。

ところで、今回の記事を良く読んでみると、これは採用担当者の行っている「出張面接」とはちょっと異なるところがあるようです。入試と銘打っておりますが、面接の指導があったり、「選考」というよりは「広報」の方が比重が高いような気がします。他社のやっていないことをやって注目をひくというのも、重要な採用ブランディング戦略です。如何に新聞の一面に自社の名前を出すか、ということに燃えている大手企業の採用担当者も居りますからね。

 

第95号:生涯学習センターのキャリア・セミナー

8月に入った途端に日本列島は猛暑が続いておりますが、如何お過ごしでしょうか。学生が夏休みに入り、都心では朝の通勤ラッシュがずいぶんと楽になりました。余裕のでてきた電車を見回してふと気づくのは、車内の大学広告の多さです。学生募集が殆どですが一般社会人向けの公開講座もあり、興味を惹かれるテーマには思わずメモを取ってしまいます。

公開講座の開催の多くは、大学の生涯(公開)学習センターに類する組織が企画されていますが、最近はこの部署でのキャリアに関する支援もチラホラと増えてきています。その内容を見ていると、各大学の方針がみえて興味深いです。大きく分けると「教養系」と「資格系」になっていることが多いです。

  • 教養系:

学内の教員が講師として大学の研究成果、大学の授業を一般向けにアレンジしたもの

  • 資格系:

専門学校等の学外の講師を招いて特定の資格講座をアレンジしたもの

それぞれに講者の求めるニーズは異なり、受講者はそれぞれの関心とニーズで参加していますが、これは企業採用担当者のニーズとも似ています。あまり専門性は気にしないで人間性や教養を求める企業もあれば、具体的なスキルを求めて「手に職」を重視する企業もあります。(一般に、企業は新卒に資格は重視しないと言われますが、中堅以下の企業では資格重視のところも結構あります。)

夏の電車の中でまた気づくのは、受験予備校の夏期講習に通う小中学生です。かくいう私もその一人でしたで都心の大学の会場に通っておりました。その予備校の先生の話で今でも強烈に覚えているものがあります。「大学というのは夏休みが2ヶ月もあるんだよ。春休み長いから、大学生というのは1年間の半分しか勉強しないんだ。」この言葉を聴いたとき、「よし絶対、この大学に入るぞ!」と誓ったものでした。

閑話休題、夏休みは日頃の環境を変えて学習する良い機会ですね。夏期一斉休暇で大学事務も閉じるところも多いと思います。是非、職員の方々もこの機会に他大学で学んでみては如何でしょうか?3年生の多くがキャンパスを飛び出してインターンシップに取り組んでいるように、日頃とは違った環境・人脈によって再発見できるものが多いのではないかと思います。

末文になりますが、暑中お見舞い申し上げます。皆様のご自愛をお祈りしております。

*参考セミナー:

上智大学公開講座:「大学教育とキャリア支援 」

日時:8月21日(月)14:00~17:00

場所:上智大学中央図書館 L-921会議室 (9階)

▼詳細は下記まで

http://www.sophia.ac.jp/J/extfiles.nsf/vwFile/moushikomi_06summer.doc/$FILE/moushikomi_06summer.d

 

第94号:授業を通じて教える就職活動

非常勤講師を担当している大学の前期授業が終了しました。学生一人一人のレポートを見ながら成績をつけていくのは大変な作業でしたが、改めてわかったのは授業を通じて就職活動の基本はしっかり教えられるということでした。同時に、多くの学生は自分の可能性を眠らせたままキャンパスライフを過ごしているのだなあと感じました。これはおそらく日本の最大の資源である若者のエネルギーを眠らせているということですね。

私の担当している「キャリア開発論」という講義は、いわゆるキャリア教育にあたるもので、それは以下の3つの分野を中心としています。

1.マインド系(人生哲学、リーダーシップ等)⇒心の成長

2.スキル系(プレゼンテーション、グループ・ディスカッション等)⇒対人スキルの向上

3.ビジネス系(マーケティング、資料作成等)⇒社会状況の理解

特に講義ではマインド系を中心として、自分自身のキャリアモデルを探し、自己成長の方向性を定めることに重点をおいております。そのため、レポートでも重視して指導していたのが、受け売りではなく自分の意見を書くことです。

ところが、学生は最初ピンときておりませんでした。毎回書かせているレポートでも講義で話した内容をそのまま「理解したこと」として書いてくる学生が半分以上で、これでは学生が何を考えているのかわかりませんでした。これが就職活動なら、企業セミナーで聞いたことをそのままエントリーシートや面接に書いているようなもので、あっさり不合格になってしまいます。いわゆる「生徒」であって「学生」になっていないのですね。就職ガイダンスと同様、授業でも「知識ではなく見識を書け」「講義を聴いてから考えるのが学生だ」と毎回、口をすっぱくして伝えていたところ、最初は戸惑っていたものの、レポートの内容にドンドン個性が出てきました。

他にも議論(グループ・ディスカッション)の仕方や効果的なプレゼンテーション、はては感じや敬語の使い方まで教え込みましたが、これらは決して就職テクニックのためだけではなく、学問や仕事をする上での基本的な「技術」です。そもそも採用試験というのは、社会で通用する基本の技術や知識(ビジネス系)をちゃんと身につけているか、それを相手に伝えられるか(スキル系)、そしてそれをどのように活かして企業や社会で活躍して自分の人生を描きたいのか(マインド系)を知るために行うものです。大学に授業を通じて、いくらでも身につけることができるものですね。これは私が担当しているキャリア系の授業に限らず、どんな科目を通じても教えられることだと思うのです。

前期の授業を通じて、更に今後の課題も見えてきましたが、日本は人材の資源大国だと思い知らされました。この貴重な資源を眠らせずに発掘したいものですね。

*参考文献:

「できない大学生たちが、なぜ、就職で引っ張りだこになったか」カワン・スタント:三笠書房

「学生と読む『三四郎』」石原千秋:新潮選書

 

第93号:採用活動としてのインターンシップ

はやいもので巷では2008年卒の学生(学部3年生、修士1年生)向けの就職ガイダンスが始まってきました。例年ならこの時期は自己分析・業界研究等、就職活動の初期段階のセミナーが多いのですが、今年は採用面接のスキルとかエントリーシートの書き方等、かなり具体的な就職テクニックの問い合わせを受けていて驚いています。この背景には夏のインターンシップの存在があるようです。

今年は就職ガイダンスにちょっとした異変を感じています。前回のメルマガで4年生向けの「就職リターンマッチ」について書きましたが、最近は4年生向けのガイダンスに3年生が顔を出しているのです。とある大学では、20名ほど集まった学生の殆どが3年生で面食らいました。参加者に事情を聞いてみると、「来年のために今から聞いておこうと。」という用意周到な方も居られましたが、最も多かった回答は「インターンシップの選考対策のためです。」というもの。

周知のとおり、今は3年生に向けての夏のインターンシップ募集をかけている企業が多いです。これまでインターンシップでシビアな選考をする企業は大手の一部でしたが、最近は多くの企業が事前の軽い選考(エントリーシートによる書類選考や短時間の面接)をするようになってきたようです。それが結果的に3年生の就職テクニック研究に走らせているようです。

インターンシップの捉え方は企業によってマチマチです。長期のものから短期のものまで、給与の出る社員同様のものからアルバイト作業のようなものまで、多種多様になってきていますね。最近の調査では学生は短期のものを多く受講することを好み、長期間に渡って1社に拘束されるものは嫌う傾向があるとのこと。これではインターンシップの本来の意義は達成できなくなるのですが、企業側の方でも「ワン・デイ・インターンシップ」という恐るべき非常識な言葉を定着させてしまったので、いたしかたないですね。

こういった短期のインターンシップで、しかも大人数で共通のプログラム(多くは簡単なグループ・ディスカッション等のワークショップ)をこなすものはキャリア教育としてのインターンシップではなく、採用活動のための母集団形成に他ならないでしょう。このようなセミナーを数多く受け、深く一つの企業・業界を掘り下げない学生さんは、就職活動でも多くを回りすぎて志望動機が浅くなかなか内定が取れない学生とイメージが重なってきます。どんな経験でも無駄にはならないと思いますが、彼らが来年の「リターンマッチ」セミナーに顔を出さないことを祈っています。

 

Just another Recruiting way