第122号:スタート・ダッシュで始まった09シーズン

後期授業が開講し、大学内での就職ガイダンスが本格的に始まりました。多くの大学で企業合同説明会や就職活動に関するセミナーが開催されていますが、今年は非常に、というよりも異常に学生の動きが早いように感じます。

 

例年、この時期には大学に呼ばれて自己分析や業界研究等のセミナーを行っております。既に数校回っていて驚いたのは、例年と比較して参加学生が異様に多いことです。若干増どころではなく、2倍・3倍となっており、余裕をもって用意したはずの会場に受講者が溢れて大学職員の方が慌てております。売り手市場と言われる中で、学生の動きがスローになるならわかりますが、何故この様な動きになっているのかはまだわかりませんが、いくつか要因を想像してみます。

 

  • 企業側の要因

・今年は企業の夏休みインターンシップが急増して学生に火を付けた。

⇒昨年と最も異なるのはこの点だと思います。学生と話していても夏のインターンシップに参加した学生が非常に増えています。

・インターンシップで仕事や企業の本質は理解していない

⇒今はOne-dayのような仮想的なインターンシップが多く、参加しても仕事の実態が理解されずに期待だけが膨らんでいます。(通常のインターンシップでは、現実を知って進路を考える学生も出ますが、最近はゲーム・イベント感覚で関心を高めるタイプが多くなっております。)

 

  • 学生側の要因

・マスコミやメディアに影響されやすくなり、周りと一緒でないと安心出来ない。

⇒IT環境の進化等により、情報が高速大量に流れて今の若者は非常にマスコミやメディアの情報に敏感であると同時に、自分独自の判断で動く学生が少なくなっているように見えます。これは昨年から急に変化したわけではなく、IT環境の進化は90年代後半から始まった来ていることですが、企業からの採用情報がシーズン前から準備万端、満を持して配信され始めたのは今シーズンからです。(昨年はまだ業界や企業によってムラがありました。)情報が長期間大量に流れると、多くの人間は画一化された意識と行動パターンをとるようになります。企業の採用担当者が広報活動に全力を尽くすようになったのも全く同じです。

 

さて、シーズンが始まったばかりの今、この動向が何処まで続くかわかりませんが、先日の大学での内定者による就職体験談の司会を行ったとき、ちょっと感動した学生(有名企業内定者)がおりました。

「私は留学のため、実質、1ヶ月間しか就職活動はできませんでした。」

留学自体はもう珍しくはありませんが、このセリフを自信をもって発言した学生が光って見えました。もしかすると、この学生に内定を出した採用担当者も私と同じ印象をもったのかもしれません。就職活動は、最終的に自分と他者の相違点をアピールすることなのですから。

 

第121号:改正雇用対策法の求人年齢制限禁止

この10月1日から施行された改正雇用対策法では、企業の募集・採用時の年齢制限の設定が禁止されました。米国では人種・性差別と同様に以前から法律で禁止されておりましたが、ようやく日本でも適用されたわけです。ところが、日本企業の雇用慣行の主流である新卒採用については例外として見送られ、新卒募集要項には応募資格に「××年卒業見込」という表記が許されています。

 

このような例外が認められたのは、今回の年齢制限禁止の狙いが中高年や30歳を超えた年長フリーターなどの就職機会を広げる点にあったためですが、新卒採用という日本独特の雇用慣行にはまだ社会的に合理性があるということなのでしょう。もしも、いま新卒採用に年齢制限が禁止されたら、学生と企業の双方にデメリットが生じます。

 

学生が卒業後いつでも企業に応募出来るようになると、既卒の方の経歴はかなり多様になるので面接選考にコスト(時間・手間)がかかります。実際、採用担当者で既卒(中途)採用に慣れている方もそうは多くありません。採用担当者も転職経験のある人の方が少ないですし、大企業では新卒と中途採用の担当者は完全に別になっていることも多いです。

 

もし、こういった現状を踏まえなずに新卒採用の年齢制限が撤廃されたなら、企業側に採用する意思がないのに採用される可能性があると考える応募者が増えてしまい、結果的に双方が無駄な労力を費やすことになります。法的な見地からは不公平なことですが、雇用機会均等法で女性差別が撤廃されても、未だに「一般職採用」が残っているのと同じです。(寧ろ、復活を喜ぶ学生・企業がある位です。)

 

しかし、それも時間の問題でしょう。というのは、少子化という人口構造が変化しない限り、企業はいずれ中途採用(年齢不問採用)に力を入れざるをえませんから変化は確実に進みます。既に、同じ既卒でも他社で良い職業経験のある「第二新卒」は人気の的になっており、水面下の奪い合いになっています。

 

あまりのんびりともしていられませんが、日本は欧米社会の短期契約関係とは違って長期信頼関係を重視する農耕型民族です。流血革命は苦手で世界からは遅れているように見られるかもしれませんが、雇用問題というのは民族の労働観や文化的な側面も大きく、優劣で語るものではないと思っています。

 

第120号:「学士力」と採用選考基準

去る9月10日に中央教育審議会の大学分科会小委員会から、採用担当者にとって嬉しいニュースが流れました。ご存知の方も居られるかと思いますが、大学卒業までに学生が最低限身につけるべき能力を「学士力」として定めて卒業認定を厳格に行うとのこと。これが本当に実現するなら画期的なことです。

 

ほぼ全入時代の現在、採用担当者にとっての大きな悩みは「採用基準に達する応募者の不足」です。散々、言われているようにこれは大学だけではなく、社会環境の変化・家庭の躾に始まる日本の大きな問題です。「学士力」の概要説明を見ると、「知識」「技能」「態度」「創造的思考力」の4分野13項目で構成されるそうですが、これはまさに企業の採用選考基準と同じです。

 

更に大学毎に成績評価の基準が設定され、卒業試験による「厳格」な認定が行われるとのことですが、もしこれが本当に出来たら、採用担当者にとっては応募者への大きな採用選考情報になります。大学の成績が採用選考に真面目に取り込まれるとは画期的なことです。

 

こういった記事が流れると、必ず「大学は就職予備校ではない。」「大学序列に繋がる!」等とおっしゃる教員がおられます。(一方で同じ先生が「企業は雇用責任を何と考え得ているか!」と批判されることがありますが、こんな矛盾した言い分はありません。そういう高貴な先生は俗世の就職率など気にしてはいけません。)

 

しかし、詳細はまだ知りませんが、企業採用担当者が期待する「学士力」とはセンター試験のような共通学力を求めるものではないと思います。それは入学時に確認しているはずですね。「学士力」は寧ろ、その大学が育成したい人物像に合わせて大学毎に個性化すべきものでしょう。それが大学のカラーにも繋がるものだと思います。基礎学力は入試で、卒業能力は学士力で評価です。

 

企業が学士力に協力できるとしたら、盛んになってきた寄付講座や(本当の)インターンシップで社会のニーズを伝えることでしょう。「学士力」が何処でどんな風に応用出来るか社会の窓を開けて見せることです。一部の採用担当者が誤解しているのは、「大学で学ぶのは勉強だけでは無い。」と言って大学教育を軽視することです。確かに「勉強だけ」ではないのですが、勉強が第一でないのは世界の大学教育・企業の採用選考基準から見ると不思議なところです。

 

政府が混沌としてしまっていて教育再生会議がどうなるか心配ではありますが、こういった取り組みがどう実現するか楽しみです。

 

 

第119号:大学内就職セミナー参加に苦労する無名企業

9月に入り、多くの企業では2009年卒業学生向けの具体的活動に動き始めました。前半戦(年内の活動)の活動の中心は企業広報で多くの母集団を形成することです。今は売り手市場になりましたので、企業も多くの予算をかけておりますが、なかなか苦労しているのが大学内で開催される就職セミナーへの参加です。

 

周知の通り、大学内で開催される就職セミナーを主催者別に整理してみると下記のタイプがあります。

・大学就職課(キャリアセンター)

・理工系就職担当部署

・就職には直接関係ない部署(生協、リエゾンオフィス、大学OB会等)

・公認学生団体(ゼミ、研究室等)

・未公認学生サークル(イベント、自己啓発系)

 

大学内での就職セミナーは、大学外で開催される就職業者の合同説明会と違って来場される学生の資質が一定であること、特定の研究分野に絞られていること、また費用も低価格・無料であること等が好まれ、企業の採用担当者は熱心に参加努力をしています。

しかし売り手市場になったいま、ここでも大学の二極化が進んでいるようです。いわゆる有名大学では無名の企業が大学内セミナーに参加を希望しても簡単には入れて貰えません。先日、とある企業(なかなか業績も良いが無名の新興中堅企業)の採用担当者が某有名大学の就職担当者に大学内就職セミナーへの参加を申し込んだ所、下記のようなご対応で残念ながらご縁はできませんでした。

 

職員「御社には当大学の卒業生(採用実績)は居りますか?」

採用担当者「いえ、まだ実績はありません。」

職員「では、これまで当大学のセミナーに参加されたことは?」

採用担当者「いえ、初めて参加させて戴きたいと・・・。」

職員「残念ですが、当大学では先の二つが参加の条件ですので・・・。」

 

売り手市場になったとは、まさにこういうことなのでしょう。これでは新興企業の出場機会は全くありませんね。かつて企業にも指定校制度というのがありましたが、大学にも見えない指定企業制度があるようです。大学側も企業側も実績のあるところとの縁を大事にすると言うのはよくわかります。

しかし、マーケットはいつか変わるものです。大学にお奨めしておきたいのは、余裕のある今のうちに良い新興企業をしっかり見極めてチャネルも作っておくことです。大企業は放っておいても学生がコンタクトします。特に今の学生は視野が広いように見えて、知名度で企業の選択をしがちですから。日本を支える無名企業にも是非、愛の手を。

 

第118号:今年最初の就職セミナーにて

いよいよ就職世代の交代時期のようですね。先日初めて3年生対象の就職セミナーに行って来ました。期末試験直後でしたが大勢の参加者でなかなかの盛況でした。初回のセミナーなので、まずは就職活動全般を理解して貰うことが目的なのですが、特に重視したのは就職活動を多面的に理解することです。企業の採用選考の場では、自分自身が外部基準によって多面な評価に晒されますからね。

 

「自分軸」、「鉄則」、「ホンネ」・・・最近の学生が就職活動で好んでよく使う言葉ですが、不安定で先が見えない活動の中で、「絶対的」にぶれないものが欲しいのでしょう。(もしかすると、就職ハウツー本のタイトルの影響かもしれませんが。)しかしながら、就職活動においてはそういった絶対的な回答が存在しない点が悩ましいところです。企業人事の採用担当者自身も、この時期は「求める人材像」は何だろうか?と見直しながら来季の戦略を考えているのですからお互い様です。

 

余談になりますが、採用担当者も自分の所属する企業の「求める人材像」がわからなくて悩むことが本当にが多いです。採用コンサルティングの仕事をしていると、社内会議で延々とこれについて議論している企業がありますが、最後に落ち着くのは「一緒に働きたくなる人材」とかになったりします。

 

ともあれ、社会へ出る準備を進める学生にとっては、まずは「絶対的」な価値基準の世界から、他社の価値観を受け入れて「相対的」な価値基準の世界へ進んで貰う必要があります。「自分軸」に加えて「他人軸」もあるんだな、と気づいて貰うわけです。就職セミナーでそれを伝える場合、一つの課題に対して多様な立場の回答や見方を提供することが一番です。

 

そこで今回のセミナーでは参加学生からの質問に対して、4年生(企業内定者)、卒業生、企業採用担当者、そして場面に応じて大学就職課職員の方からもコメントを戴きました。一般の就職セミナーでは(学生だけで運営するものは特に)学生の質問に対して一つの見方を提供するものが多いのですが、同じ質問でも学生と採用担当者では異なりますし、ホンの1年でも社会人になった卒業生と現役学生ではものの見方に雲泥の差のあることも多いです。今回はコメントからコメントが生まれて、そこから質問がまた生まれ、最後まで質疑応答が途切れなかったのは印象的でした。

 

また、このように多面的な見方ができるようになるとストレス耐性も向上します。ストレスの原因は、自分の思うとおりにいかないということが大きいです。しかし、世の中は自分のためにできていない、ということを理解できるようになると現実的な対応に目が向きますし、多面的な見方(手段)を身につけていれば、切羽詰まってしまうことも少なくなるでしょう。

 

夏休み中に学生たちが多様な経験をして、多面的な見方ができるようになり、タフに就職活動を迎えることができるように祈っています。就職ご担当の皆様も夏期休暇でリフレッシュされますように。

 

第117号:プロが居なくなる人事異動

企業の人事異動の季節にもいろいろありますが、最も多いのは6月末でしょう。多くの日本企業が3月末の決算を経て株主総会を終えた頃です。大学就職課の方々や企業採用担当者もちょうど今がシーズンの切り替えなので、今年も多くの方から異動のご挨拶を戴きました。しかし私は短期間の就職課職員・採用担当者の異動には反対です。それはプロを育てない人事異動だと思います。

 

定期人事異動は長らく日本型人材育成のシステムでしたが、それが有効なのは環境や市場の変化の少ない安定的な経済成長が続くときであり、かつ転職等の外部労働市場が存在していないときです。まだまだ自分自身の専門性の形成段階にある20代の現場の若い担当者ならば、定期人事異動で組織文化を学びながら自分の適正を見極めていくのは良いことでしょう。しかし、現在のような環境変化の激しい時代では、「その道のプロ」である就職課や採用担当者等の中間管理職の異動については慎重であるべきだと思います。何故なら、この仕事は組織外部に関わる仕事が益々増え、その内容も高度になってきており、この分野で専門性と人的ネットーワークをもった人材が重要になってきているからです。それらは組織の貴重な財産になっているはずです。

 

就職課も採用担当者も中間管理職が異動になると大変です。特に全く未経験の部署から異動してくると、本人は右も左もわかりませんが、そんな中でも相談や面接に来る学生に、さもベテランのように対応しなければなりません。学生から見たら、就職課も採用担当者も相談のプロだと思っていますし、その信頼がなければ学生も心を開いて話してくれません。かつてはそんな場面でも、その部署の内部で助け合って教え合ったものですが、企業においては成果主義の名の下に他者(後輩)を助ける余裕が無くなってきています。(さて、皆さんの大学は如何でしょう?)

 

その結果、企業の採用担当者には急速に企画・立案の出来るプロが少なくなっているようです。そんなプロは転職して外部で採用コンサルティングの仕事に就き、退職後も業務委託契約等で継続して同じ仕事を行っているケースも増えてきました。これと似たような形で、大学でも卒業生の就職支援を人材サービス企業に委託したり、学外のキャリアカウンセラーを契約社員として起用している例は珍しくなくなってきましたね。

 

しかし、外部パートナーとの協働作業で注意したいのも、やはり人事異動です。というのは、人事異動が繰り返されてくると、新しく異動してきた新人よりもベテランの外部パートナーの方が組織の内情や課題に段々と詳しくなります。その結果、社員が外部のパートナーに教わっているなんて逆転現象がおきます。まあ、独立したプロには有り難いことなのですが。

 

 

第116号:日本のインターンシップの夏

就職戦線は早くも夏のインターンシップに向けて動いています。その形態や期間は本当に多様ですが、採用担当者がインターンシップを担う場合、その目的の殆どが早期の母集団(応募者)形成に他なりません。そのため、”日本のインターンシップ”は「短期間」「パッケージ化」「隔離」という傾向が大きくなってきました。

母集団形成がインターンシップの目的となると、できるだけ多くの学生に参加して貰うことがポイントとなりますので、学生が気軽に参加しやすい形にならざるをえません。今の学生は情報過多の社会に生まれてきましたので、短時間に結果だけを知りたがります。その結果、多くの企業のインターンシップは短期間で概要を伝える方向になり、OneDayインターンシップという言葉も生まれたのですね。

また、効率よくインターンシップを開催するためには、できるだけプログラムをパッケージ化して同じサイクルを数多く回すことが必要です。その結果、研修企業がインターンシップを請負い、その企業に合わせたビジネスゲームのようなプログラムを作り、合宿形式で仕事場と隔離運営する形態も出てきています。大企業がCSR目的と謳って大学で寄付講座(社会人教育)を行っているところもありますが、それもこの形態に近いですね。

こういうわけで、採用目的の”日本のインターンシップ”は、一見多種多様になってきているように見えますが、実はその根本的なところ、学生の取扱方では似てきています。これはインターンシップが採用目的になったせいなのか、同質化を目指す日本人の特性なのかわかりません。明らかなのは、それを受講した学生の体験やものの見方は似て来るということです。

さて、こういった環境になると、これからは「インターシップや就職活動はやっていません。勉強(サークル活動)ばかりやっていました。」という学生の方がキラリと光ってくるかもしれませんね。上記の通り、同じような経験をした学生は、当然に体験から話す内容が似てきますから差別化が難しくなってきます。ファースト・フードや居酒屋やコンビニエンス・ストアのアルバイト体験談が光らないのと同じです。

前期試験を前に、この夏休みの計画を考えている学生も多いと思いますが、是非他者とは違う個性的な夏休みを過ごして欲しいと思います。

 

第115号:法政大学キャリアデザイン学部のキャリア教育検証

今春、初めて卒業生を輩出した法政大学キャリアデザイン学部開催のシンポジウムに参加してきました。この4年間のキャリアデザイン学部の取り組みを通じて見えてきたキャリア教育の検証というテーマで、非常に参考になる内容でした。

 

シンポジウムの個別内容は多岐に渡りましたが、その中でも私個人の印象に残った言葉をご紹介したいと思います。

・『自分探しの学生はお断り』

キャリアデザイン学部は創設当初より高い人気で志願者を集め、大学経営としては成功を収めました。しかし志願者の内訳は期待通りではありませんでした。というのは、この学部に志願する方は「他者のキャリアデザインを支援できる人材」と「自分のキャリアデザインができる人材」であり、前者を社会人、後者を高卒学生と想定しておりました。その社会人と学生との交流から学習するのが狙いだったわけですが、社会人学生の入学は少なく殆どが「自分探し」の学生になってしまったそうです。

しかし「自分探し」は大学生(若者)にとっては当たり前の行為であり、しかも卒業までに答えの出るものでもありません。そのため、キャリアデザイン教育という独自性がわかりにくくなってしまい、最終的に卒業後にどんな分野でどんな活躍をする人材を輩出するのが曖昧になってしまいます。その点への問題提起でしたが、非常に潔い言葉だと思いました。

 

・「キャリア教育は道徳教育」

キャリアデザイン学部は設立する前からそのコンセプトを理解して貰うのに苦労したそうです。経験豊かな教授に説明をすると、「なんだそれは道徳教育ではないか!」と言われてしまったそうです。確かに多くの大学で導入されているキャリア教育プログラムを見ると、以下のようなものが多いです。

1.学外社会人講話によるオムニバス講義

2.自己理解・自己発見ワークショップ

3.コミュニケーション系トレーニング

4.インターンシップ

5.地域コミュニティ活動

これらを見ていると、やはり日本社会から失われつつある人間関係を感じます。本来はそこから自然に身に付いた道徳や常識や対人スキルが未成熟成っているのでしょう。それに大学進学率向上やデジタル社会等の現代の社会変化が拍車をかけています。

 

こうしてみると、キャリア教育には、これまで当たり前でやらなくても良かったものを、改めて行うところに現代的な意義があるようです。キャリア教育としての議論もいよいよ第二章に入ってきたようですが、法政大学にはこの分野の更なる研究を期待したいと思います。

第114号:続けるべきか止めるべきか

いま、採用担当者がもっとも悩んでいる問題です。先日の新聞紙上では大手企業の4割が新卒採用を終了したと報じておりましたが、これは全国の企業数の1%にも満たない有名大企業の中の4割ということで、殆どの企業が採用活動をまだまだ継続中です。しかしながら今の環境を考えると、採用担当者が採用活動を続けるべきか止めるべきかでハムレットばりに迷っています。

 

ピークを越えたと言われる現在、採用・就職活動を続ける企業と学生の心境はどんなものでしょう?

▼企業の気持ち:

・良い学生はもう就職活動を止めてしまったのではないか?

・まだまだ採用枠はあるけれど、どうやって応募者を集めたら良いのかわからない。

・人出も足りないし、そろそろ来年(2009年卒採用)の準備をしないといけない。

⇒その迷いの原因は、何処に就活継続中の学生が居るのかわからない「出会い不能」の悩みですね。就職情報企業のデータからマクロな傾向はわかっても、その学生が何処でどうしているのかわからない、ということです。大学就職課でも最近はなかなか状況を把握できないのですから。

 

▼学生の気持ち:

・今の内定企業では納得できないけれど、昨年秋からずっと就活なのでもう1日も早く止めたい。

・まだ一つも内定がないが、もう疲れた(もう選考で評価されて落ち込むのは嫌だ)。

・魅力的な企業が見つかったのだが、今の内定企業に誓約書を出してしまって動けない。

・まだ続けたくても、採用活動を続けている良い企業が見分けられない(怪しい所が多いのではないか?)。

⇒こちらの原因は、何処に良い会社があるのかわからない「出会い不能」の悩みだけではなく、新たにゼロからチャレンジするのは辛いという心理負担もあります。早期に就活に取り組みながら、春先は人気企業ばかり回ってしまい、納得いく結果が得られなかった学生が陥りがちな心境です。

 

こうしてみてみると、この2者には出会いのミスマッチだけではなく、精神力のミスマッチも起きているのがわかります。企業は採用意欲満々でも、相手の学生は応募意欲が切れかかっているということですね。この双方の悩みはまだしばらく続くでしょう。

 

ところで大企業で意外と多いのが、「トップダウンで決まったので継続採用をやるしかない(現場はもう無理だと感じていても、形の上でもやっておかないとトップが納得しない)。」というケース。そういえば、かつてはリクルーター経由で採用活動の大半が終わっていても、対外的な世間体のために就職協定解禁日に自由応募の会社説明会を開く企業がありました。どちらも採用担当者にとってはトホホの不毛の仕事で泣きの声をよく耳にします。売り手市場でも買い手市場でも採用担当者の苦悩は尽きません。

 

第113号:採用担当者のモラル

前回、「就職活動の法律知識とモラル」というタイトルで書きましたが、残念ながら採用担当者のモラルが問われる事件が起きてしまいました。全く言語道断のことですが、これを機会にリクルーター制を導入する企業側の責任についても触れておきたいと思います。

 

周知の通り、今シーズンからリクルーターの大量導入が盛んです。メディア過剰の現在、ネットではなく人的交流から学生を惹きつけようとする傾向は今後もしばらく続くことでしょう。リクルーター制の是非はともかく、こういった事件がおきてしまった以上、リクルーター制をとる企業は、その行動について指示委管理監督をより強化することを求められるでしょう。これはもう、リクルーターを使う企業にとって、コーポレート・ガバナンスの問題でもあります。「人が唯一無二の資本である。」と謳う企業なら尚更です。

 

一般社員をリクルーターとして大量に導入している企業は、社内で学生対応のための説明会を開催したり、マニュアルを配付したりしています。その中身は、リクルーター活動の重要性・具体的な活動内容・持参資料・人事への報告方法・出張経費精算等ですが、必ず学生に接する際の心得についても触れています。しかしながら、まだまだがパワー・ハラスメント、セクシャル・ハラスメントについて、しっかりルール化しているところは少なく、「社会人として、××企業の社員として、恥ずかしくない態度をとること」という程度に説明されているのが殆どです。

 

一昔前の日本ならば、それで十分に通じたのですが、残念なことに今は個人の判断に任せるだけでは十分ではなく、例えば『学生との個別コンタクトは密室で行わず、必ず他者の目に触れる場所(大学食堂、喫茶店等)で行うこと。』といった具体的な指示が必要でしょう。大学内の就職指導時に、学生に対しても指導すべきですし、大学就職課の方から企業人事に対してリクルーター制の有無と運用ルールについては確認されても良いと思います。

 

採用面接の場においても面接者のモラルは大事です。私は企業人事の時代、採用担当者全員に面接開始時には自分の名前を名乗って貰っていました。社員を信用しないわけではありませんが、そういった行動をとることによって面接者が自戒できるのです。企業説明会でも「もし、私たちの面接を受けられて不快な想いをされたら、遠慮無くそのインターネットでその面接者の実名を書いて下さい。」と伝えていました。幸いながら一度も不名誉な事態は起きませんでしたし、多くの企業採用担当者は問題ないでしょう。

 

上述の通り、今回の事件は企業人事部の管理下以外で発生したものではありますが、リクルーター制をとる企業は今後、一層厳しい管理監督を行うべきだと考えています。今回のテーマは触れるのも嫌で、日本人として情けないことですが、現実と想像の区別がつかなくなってきている事件が多発している現在、改めて注意を喚起しておきたいと思います。そろそろ新卒学生向けの法律相談所も必要な時代かもしれません。

Just another Recruiting way