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第280号:夏採用開始

取り切れていない企業が多いようです。追加採用が多いです。

企業も小口の求人には苦労しますが、それは中途採用と同じです。

画一化された新卒採用しか知らない若い採用担当者が苦労することです。

こうした状況では、新卒人材紹介が流行る地盤ができます。

それは、新卒/中途の区別のない採用活動です。

 

 

手企業の採用活動もだいぶ目処がついてきて、学生からの内定報告も出揃ってきました。ダイレクト・リクルーティングの進行で、今シーズンの大学内企業セミナーはどちらでも盛況かと思いますが、教員

 

 

  • 結果の見える大学内企業セミナー

大手企業の採用活動もだいぶ目処がついてきて、学生からの内定報告も出揃ってきました。ダイレクト・リクルーティングの進行で、今シーズンの大学内企業セミナーはどちらでも盛況かと思いますが、教員から見ると日頃から知っている学生の結果がわかるところがとても参考になります。先日も、大学内企業セミナーでそれを目の当たりにしました。

 

教室に集まった学生の座り方を見ていると、殆どの学生がいつもの授業と同じ席に座っていたのです。これが企業の用意した初めての選考会場ならば、多少、様子を見ながら席を選ぶのかもしれませんが、日頃授業を受けている教室が会場の大学内セミナーでは、迷わずいつも自分が座っている座席エリアに着席します。窓側に座る学生は窓側に、後方に座る学生は後方に。習慣がしっかり身に付いています。

 

そして、後日選考結果を教えて貰ったところ、最終選考まで残った学生はやはり最前列に座っていた学生達でした。セミナーでの質疑応答を見ていても、前列側の学生が最初に手を挙げて、後方の学生は周りの様子を見回しながら手を挙げます(手を挙げないで質疑応答を聞いているだけの学生の方が多いですが)。後方に座る学生のもう一つの共通点は、友人達と一緒に固まっていることです。前列に座る学生は、逆に一人でやってきてサッと座ります。

 

こうした現象がすべての学生に当てはまるとは思いませんが、日頃の行動が習慣化してその人の将来を決めることは間違いありません。だとすれば、学生は嫌がるかもしれませんが、授業では着席を指定して、顔見知り同士で固まらせず、知らない者同士で座らせて積極的に、いや、強制的に質問させるべきですね。着席位置を変えるだけで人生が変わるのならば、教員としてはお安い御用です。

 

・・・とはいうものの、イマドキの学生の習慣を変えるのは、至難の業です。企業研修においては、業務命令という伝家の宝刀がありましたが、大学では学生の頭と心に訴えかけて自発的に変化して貰わないと意味がありません。そこで、最近の授業で学生に影響を与えた言葉をひとつご紹介したいと思います。

 

それは、「性格は行動の結果である。」です。学生が性格だと考える背景には、変えられないもの、仕方ないもの、と思い込むことによって、無意識に面倒な努力を避けていることがあります。しかし、続けて「確かに性格はすぐには変わらないけれど、行動なら一瞬で変えられる。試しに(いつも)最後方に座っている学生は、今日だけ最前列に来なさい」と話し、座席移動をさせてみると、学生自身が授業の聞こえ方の変化に驚きます。

 

なかなか面倒なことですが、それで学生が気づいて行動を変え、人生の舞台の傍観者から登壇者になってくれるなら、ウルサイ先生と思われても教育的指導をしたいと思います。

 

第279号:もうちょっと取り繕って話そうよ

景気の上昇ムードを受けて採用担当者の顔が明るいです。新しい人材を求める仕事は、企業にとって大事な活力の補充であり、未来への希望があるということですから。ところが、財布の紐を緩めているある採用担当者から、採ってあげたくてもなかなか採れないので困った、という話しを伺いました。

 

このGWに、それほど有名ではありませんが、好業績で業界大手企業の人事部長と情報交換を行ったときのことです。学歴フィルターなどまったく無縁の人物重視の採用活動を行っているのに、なかなか最終選考まで上げられないというのです。その理由が「あまりに学生が正直すぎて、自分の思っていることを臆面も無く話すので、社員としてお客様の前に出すのが心配だ。」というのです。

 

実際の面接の会話において、以下のようなセリフを堂々と話されたそうです。

「私は人見知りで、なかなか人と打ち解けられませんが・・・」

「私はゲームが大好きで、何時間でも集中できますので・・・」

「御社はネット上で、ブラック企業と言われていますが・・・」 etc.

人物は素直で良さそうなのに、これではとても社長面接には上げられないとのこと。

 

実は、私も最近、なかなか内定が出ない学生の就職相談で似たような言葉を聞きました。その学生も愛想の良い子なのですが、こんなことを話すのです。

「たまに変な質問をされる採用担当者の方が居られますが、私はできるだけ笑顔で接するように心がけています。つい先日も『貴方を動物に例えると何ですか?』と聞かれましたが、落ち着いて『私を動物に例えるとナマケモノです。』と応えてきました。」というのです。(この質問を今でもする採用担当者って本当にいるんですね。)

 

この回答に呆然としながらも、学生に「何故、ナマケモノなの?」と尋ねたところ、「私はいつもゴロゴロしていますが、何かある時は機敏に動けます。ナマケモノは、ピンチの時にはとても素早く動くそうですよ。ご存知ですか?」私はしばらく言葉を失いました。この学生は全く無邪気に自分の話に自信を持っているのです。もうちょっと採用担当者の気持ちを察して、必要以上に盛らなくても良いですから、繕って話して欲しいものです。

 

授業で学生のレポートを見ていても、似たような現象がチラホラ増えてきました。キャリア教育等で社会人ゲストの仕事の現場の体験談を聞くと、「ゲストの方の話しを聞いて不安になりました」「私はついていけそうもありません」というような言葉がとても多いのです。確かに正直なコメントなのでしょうが、これを読んだゲストはどんな風に感じるのかを全く察することができていませんし、もっと心配なのは、自ら「不安だ」「不安だ」と何度も書くことにより、自己暗示をかけてしまうことです。

 

今の若者は生まれた時から不安な経験しかしていないというよく指摘されますが、楽観的になれとまでは言わずとも、自分だけではなく相手にも不安を感じさせるような話し方は避けて欲しいものですね。

 

第278号:採用学というものの難しさ

横浜国立大学の服部泰宏准教授が「採用学」という新しい学問を提唱されています。業務量の多い採用担当者の仕事を科学的に分析する試みは、とても面白い試みではあります。しかし、学問として確立させるのはなかなか扱いづらい分野だと思います。というのは、学問の基本であるデータ収集が困難であること、採用活動(特に大学生の新卒採用)は限られた市場でのゼロ・サムゲームだからです。

 

採用活動の合わせ鏡である学生の就職活動については、これまで社会学者(東大社会学研究所等)や経営学者(明治大学の永井教授等)および研究機関(JIL-PT等)からも研究されてきました。学問の基本としてのデータ収集を、大規模な質問票調査(アンケート)や学生へのヒアリング調査(インタビュー)等で行い、統計学的処理によって法則性を探ってきました。大学院生や学部生レベルでも、こうした論文はわりと多く見られますが、それが可能なのは上記のようにデータ収集が行いやすいからです。

 

一方、今回の採用学では企業採用担当者の活動にフォーカスしていくようですが、企業の採用活動は、如何に他社に先行して学生を集めるか、如何に他社とは異なる質問で学生の面接対策を乗り越えるか、如何に上手い説得方法で学生に内定承諾をさせるか、というノウハウの部分が多いです。そのため、なかなかデータの収集が難しいです。アンケートには協力しても、ホンネで回答できるかどうか、またアンケートの質問自体が採用担当者の活動を十分に分析して作られているか、という課題があります。

 

同じ人事の仕事でも、人事労務や能力開発の研究は、既に無数の学会報告があります。それは、採用活動のようなパイの奪い合いではなく、各社が競って良い仕事をすれば、産業全体の生産性が向上してマーケットが広がるからです。ところが、採用活動というのは何処かが成功すれば(採用できれば)、何処かが失敗する(辞退される)ことになる、ゼロ・サムゲームです。

 

他にも、この分野はITの導入、大学生の量的質的変化、労働法の規制緩和等、環境変化が非常に激しく、やっと確立したノウハウや手法がすぐに陳腐化してしまいます。この10年間で確立されてきたコンピテンシー面接も、学生の対策が素晴らしく進んでおり、採用担当者は工夫をし続けなければならず、学問として研究している間に前提条件が変わってしまう可能性もあります。

 

最後に、こうした研究活動は、広く一般の公開されなければ意味がありません。経営学の研究でもよくありますが、本当のノウハウは公開されないことがあります。学会報告を見て学び、やってみたらうまくいかない。研究者に直接問い合わせてみたら、「それにはコツがあり、私の秘密のレシピがあります。私を呼んで戴ければいつでもやってみせます。」と言われたら、これは学問ではなくコンサルティング業務ですね。しかし、そうした壁に挑戦するのもまた学問の使命です。今後の採用学の活動を興味深く見守っていきたいと思います。

 

以下、参考サイトURL:

▼採用学プロジェクト

http://saiyougaku.org/

▼参考URL:文献「大学生の就職活動」本田雪、中公新書

第277号:採用担当者と学生の単純な言葉の認識差

採用選考が始まり、内々定の頼りもチラホラ届き始めました。一方でなかなか結果がずに、だんだんと焦ってくる学生も見受けられます。そんな学生に気づいて欲しいことは「自分のやり方には何か間違っているところがないだろうか?」「企業の求めるものと、自分が伝えているものはズレがあるんじゃないだろうか?」という冷静で客観的な視点です。

 

採用担当者(社会人)と学生とのズレは、いたるところにありますが、特に気をつけたいと思うのは、単純な言葉の認識差です。例えば「主体性」と「コミュニケーション力」です。この二つの言葉は、採用担当者から見て学生に求める資質の常にベストスリーに入っています。経済産業省の資料(下記URL参照)でも、「主体性」と「コミュニケーション力」の重要性は、学生も上位にあげておりますが、問題はその認識の程度の差です。学生は「主体性」が自分に欠けているとちゃんと自覚しておりますが(5.6%)、採用担当者は学生の約4倍(20.4%)もあります。同様に「コミュニケーション力」については、学生が8%、採用担当者は倍以上の19%です。

 

この報告書では「大きなギャップが存在する」とに指摘にとどまっておりますが、このギャップの意味はもっと踏み込んで理解する必要があります。そこには、採用担当者と学生が「主体性」と「コミュニケーション力」という言葉を同じ認識で使っていてそのレベルに差があることと、その言葉のそもそも認識が違っているということとがあります。前者なら問題はシンプルなのですが、後者は意外な盲点となります。

 

というのは、学生の理解する「主体性」とは、自主的に自分で意志決定して企画したり提案したことや組織のリーダーになった経験などをイメージしてアピールすることが多いですが、採用担当者の視点では、それだけではありません。誰かに指示されたり頼まれたりしたことを喜んで引き受ける、他者が意志決定した企画でも、言われた通りにやるだけではなく更に自分なりの工夫したり改善したりすることも含みます。それが、実際の会社の中で行われている仕事の形だからです。そして、そうしたタイプの人が、一緒に働きたくなる人、というものです。

 

このように、同じ言葉であっても、学生と採用担当者では属する社会が違いますから、その意義が違っていることがよくあります。一見、単純で言い慣れてしまっている言葉だからこそ、認識差について気づかないことがありますので、注意したいものですね。

 

以下、参考サイトURL:

▼大学生の「社会人間」の把握と「社会人基礎力」の認知度向上に関する調査(経産省)

http://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/201006daigakuseinosyakaijinkannohaakutoninntido.pdf

 

 

第276号:採用担当者の機能と面接トレーニング

4月の選考解禁直前となり、採用担当者の方も選考準備に追われています。企業の方から面接のトレーニングの依頼を受けるのもこの時期です。採用担当者は人を見るプロですが、初めて面接を担当する時には誰でも緊張するものです。

学生と違って、面接を担当する採用担当者は「初めてなので緊張していますが、一所懸命に頑張りますので宜しくお願い致します。」と言うわけにもいきません。模擬面接を行ったり、本番の面接を見学したりして、経験値を上げていきます。そうした面接者の役割は、大きく以下の3点が挙げられます。

1.広報機能 ⇒ 応募学生に安心感を与え、話しやすくする

2.判定機能 ⇒ 面接から応募者の能力を測り、適性を見極める

3.説得機能 ⇒ 判定後、有望と思われる学生に自社をPRする

面接を行う採用担当者は、どんな応募者がやってこようとも、丁寧公平に対処しなければなりません。学生は面接者の印象を、その企業のイメージとしてそのまま捉える傾向にありますから。判定不合格と感じても、ここで不遜な対応をとったりすると、クレーマーになってしまうこともあります。

また、面接の質問によって、学生のクチコミが広がるようなことを意識することもあります。例えば、常に語学力を問う質問をすると、学生間には「あの企業は英語ができないとダメだよ」という認知が広がり、英語の強い学生が集まり、弱い学生が避ける、ということになります。

次に、前回お伝えした「会話力」から応募者の仕事能力を測り、どの部署で働けるか、将来どんな人材になりそうかを想像し、合否を判定します。つまり合否判定とは、採用担当者が応募者のキャリアプランをイメージできるかどうかです。学生が自分のやりたい仕事を熱心に説明しても、言葉通りに受け取るのではなく、採用担当者は何処に配属できてどんな成果を出しそうかを考えています。

そして、配属イメージが浮かび有望だと感じたら、「こんな仕事に関心ありますか?」とか「貴方はこんな仕事に向いてそうですね」と打診します。学生が素直にその仕事に好奇心を示せば良いのですが、そうでない場合は、その仕事の魅力を説明して説得します。この点、営業出身の採用担当者は上手です。(この手法は、集団面接ではやりにくいですが。)

こうしたプロセスを採用担当者も模擬面接で練習し、判定結果のバラツキを確認します。どんなにトレーニングを行っても、人の判定機能は厳密には一致しませんので、面接者の基準を完全に統一しようとするのではなく、面接者各自の判定のクセや考え方を話し合って理解するのです。その価値基準の交換によって、面接者達は質問内容や判定能力を向上させることができます。(質問内容を工夫して、面接者のバラツキをなくすコンピテンシー面接という手法もありますが。)

別の言い方をすると、採用担当者は「求める人材像(選考基準)」にマッチした若者を求めるというよりは、「求める人材像」になりそうな若者を模索するのです。つまり、採用担当者の面接トレーニングとは、想像力のトレーニングと言えるかもしれませんね。

第275号:大学講義で鍛えられる会話力

採用面接でよくあることですが、丸暗記したことをそのまま話すのは御法度ですね。面接に慣れていない学生が練習のために行うなら問題はありませんが、早く「記憶再生モード」から「会話モード」に入って欲しいものです。採用担当者が丸暗記を嫌うのは、応募者の能力が測定できないからです。(逆に言えば、丸暗記の記憶再生を行う応募者はNGと判定できますが。)

 

「会話」からはいろいろな能力がわかります。知識や関心の広さ、機転や頭の回転の速さ、相手への気遣い等々。脳科学者の茂木健一郎氏によると、会話で使われている脳は、聞いている時と話している時では以下の通りに異なるそうです。

 

・聞いている時 ⇒ ウェルニッケ野の感覚性運動野(感覚系学習回路)

・話している時 ⇒ ブローカ野の運動生言語野(運動系学習回路)

 

この2つ回路は脳の中ではつながっていないため、相互に繰り返して使うことで「会話」ができているそうです。これでおわかりのとおり、採用担当者が丸暗記を嫌うのは、どちらか一方だけしか使えない人を避けたいからです。仕事というのは常にいろいろな業務がやってきて、優先順位を考えながら進める必要があります。「1つの事に夢中になると周りが見えない人」は困るのです。

 

翻ってみると、大学生は授業でこうした脳の使い方を鍛えられているでしょうか?教員が同じトーンで淡々と話していると、感覚系の学習回路しか鍛えられませんし、それ以前に活動停止してしまうかもしれません。脳は飽きっぽくて常に新鮮な刺激を求めているそうですから。

 

実は私の授業ではこうしたの脳の使い方を鍛えています。200人を相手にしている講義型の授業でも、数分に一回、問いかけを入れて受講生の運動系の学習回路を動かします。学生が応えられなくても問題ありません。大事なことは、ほんの一瞬でも脳の回路を切り替えさせることです。面白いもので、最初は何も答えられない受講生達が、何回かの授業を繰り返して行くうちに、だんだんと回答ができるようになってきます。

 

大学でキャリア教育を行うようになって数年が経ちましたが、私は採用&能力開発担当者時代に求めていたことを授業で学生に求めていることに気づきました。良い授業というものを考える時、自分自身の教員としての話し方を向上させるだけではなく、受講生の聴き方と話し方、つまり授業の受け方や会話力を鍛えるという視点がとても大事だと思っています。それは採用選考でも就職後でも活かせる脳の使い方を鍛えることですから。

 

以下、参考サイトURL:

▼「脳を活かす伝え方、聞き方」茂木健一郎(PHP新書)

http://www.amazon.co.jp//dp/456981669X/

▼参考URL:法政大学産学連携3D教育プロジェクトシンポジウム案内(私の授業についても話します。)

http://3dep.hosei.ac.jp/event/details/2014/02/18/id3200

第274号:エンジャパン社の学生就職情報サイト終了

2月24日付けで報じられた、エン・ジャパン社の学生就職情報サイトのサービス終了は、新卒採用関連の業界人には驚きを与えながらも「さもありなん」と受けとめられています。業界が大きな構造変動の時期を迎えつつありますから。その直接の原因は、倫理憲章の見直しによる企業の採用活動期間の縮小だと思いますが、もう少し業界の背景を少し見てみましょう。

エンジャパン社といわれて私に思い浮かぶのは、社会人1~2年目の元気な営業担当者です。生命保険の業界のセールスレディーのように、足繁く売り込みに来られていました。大学就職課にも精力的に訪問し、就活学生のサイトへの登録を熱心に勧めていたことでしょう。同社は、新卒採用業界では後発でしたが他社を猛追し、マイナビ、リクナビに次ぐポジションを占めるようになりました。その同社の撤退理由は、以下のように述べられています。

「近年の新卒採用・就職活動は、SNS利用の拡大、就職情報サイトに依存しない各種コミュニティを通じた活動など多岐に拡がってまいりました。」(同社下記ウェブサイトから)

これは、就職情報サイトによる多数登録の新卒採用・就職活動に、企業も学生も疲弊して、愛想を尽かしたということです。学生は毎年行うわけではありませんが、企業は毎年同じ作業を行っております。そして、サイトの運営企業は登録者数の増強のため、1人の学生に数多くの登録を勧めてきましたので、結果として、企業の応募辞退者数・選考辞退者数・内定辞退者数も増えてきたわけです。

他にも、上位先行2社との違いとして、エンジャパン社の就職情報サイトは、就職という単一目的の専門サイトである点、集めた登録者を他の目的のサイトに引っ張っていくビジネスが展開できないという点も指摘できます。リクナビもマイナビも、いまや就職情報サイトだけではなく、旅行や書籍の販売にも案内していくことが可能です。特にエンジャパン社は株式上場企業ですから、不採算事情の継続には株主からの目も光っています。

就職情報サービスは変に肥大化してしまいました。本当に必要な苦労や投資なら、誰でも労をいとわずに取り組むと思いますが、あまりにも成果が出ない作業は、継続することはできません。その判断は、ふつうの採用担当者にはなかなかできません。自分で自分の仕事をを縮小することですから。エンジャパン社の判断も、現場ではなく経営者の妥当な判断でしょう。

ドワンゴ社の「入社試験手数料」の件でも、私が一番、感心したのは、会長が「うちの採用担当者はわかってない」と自ら経営判断をして実行したところです。

こうした変化は、この1年で相当に起きてくると思われます。そんな中で、本当に世の中に求められる仕事だけが生き残り、生まれてくるのだと思います。

▼参考URL:エンジャパン社ニュースリリース(2014.2.14)

http://corp.en-japan.com/IR/pdf/ir_release_20140224_1.pdf

 

第273号:Be動詞の前に学んで欲しいこと

 

入学試験の季節ですね、お疲れさまです。私も期末試験のレポートの採点と、たまにやってくる教え子のエントリーシートの評価とで、無数の学生の文章を読む季節です。全入時代といわれて久しいですがが、大学生の文章力は益々低下、というより変な使い方をするようになってきました。

 

先日のニュースでBe動詞を教える大学が報じられましたが、それ以前に学んで欲しいのは、正しい日本語です。ということで、今回はレポートやESで見かけた最近の学生の変な使用例をご紹介しましょう。入試シーズンの息抜きにして頂ければ幸いです。

(これらは文字変換のミスでは無く、手書き文書での間違いです。全てネタではなく、事実です。)

 

▼授業感想から

「多くの座掘が役だった」⇒挫折か不屈か発掘か、それが問題です。

「今後にご気待下さい」⇒ちょっと期待できそうもありません。

「昔の歴史と今の現状を比べると」⇒朝のモーニングショーというやつですね。

「欠席日数が不足していて申し訳ありません」⇒ 出席日数の方ですね。

「教室で久しぶりに枕に向かい」⇒机に向かったんでしょうね。(枕持参で居眠り?)

「先生の話は自前に考えてるのですか?」⇒事前(じぜん)に自前(じまえ)で考えてます。

「御遊戯なお話しを有り難うございました。」⇒ 授業で踊った覚えはないのですが。

 

▼グループ・ディスカッションにて

「最初の合札は大事ですね」⇒最初は挨拶の方が大事です。

「商品企画のグループ・ワークでは、談合する時間が足りなくて」⇒「討議」ですね。

「みんな私の意見に参動してくれた」⇒賛同して山道を参道?行動的なんですね。

「討議が息詰まった時はどうすれば良いですか?」⇒まずは深呼吸して下さい。

「その場を指揮って話す」⇒教室はコンサートホールではありません。

「討議では小極的になってしまった」⇒討議で萎縮してしまったのかな?

「近密に確認をとらなければ」⇒緊密でも密着しなくて良いです。

 

▼エントリーシートから

「私はマスコミを目覚しています」⇒ 業界に革命的な記者になりそうですね。

「私はCAに身重が足りない」⇒ 身長と体重?慎重さも足りないようですが。

「バイトで努られても前向きに」⇒ 怒られないようにして下さい。

「今をおごそかにしてはいけない」⇒勉強もおろそかにしないで下さい。

「同じ殻にはまらないように・・・」⇒君はヤドカリですか?

「完結に結論を述べると・・・」⇒終わらない結論って何でしょう?

「人を支援する機械が欲しいので・・・」⇒「機会」ですね。(まさかドラえもんが欲しい?)

 

如何でしょうか?昔のような単純な漢字の書き間違いでもなく、文章変換ミスでもなく、何か言葉の理解や使い方そのものが変わってきた感じが致します。これらを入試に出しても良いかもしれませんね。

第272号:就職活動と大学成績

先月、日本経済新聞の一面を飾った記事に、就職活動(採用選考)における大学成績の扱い方がありました。12月の就職活動が本格的になる時期にタイムリーな報道(広報?)だと思って静観注視してきましたが、扱われ方が落ち着いてきたようです。

 

本件のニュースタイトルを並べてみると面白いです。

「就活、激変! 成績を問う企業が続出する理由」東洋経済オンライン(11月)

「採用、再び成績重視 三菱商事や富士通など15社」日経新聞(12月)

「採用基準が迷走する理由とは?」ハフィントンポスト(1月)

「オールAでも不満? 成績重視する企業のホンネ」日経新聞(1月)

 

ご興味有る方は、各ニュースタイトルを検索してみて下さい。昨年末は、多くの企業が採用選考に大学成績を重視することになったと盛り上がっておりましたが、年をこえてみると、ちょっと待てそうでもないぞ、となり、最近はやはり(日本では)大学成績だけではないだろう、という流れがみえます。

 

私も身近な企業採用担当者数十人に尋ねてみましたが、殆どの企業は「大学成績は見るけど特別扱いはしない」との回答でした。これは前々回にお伝えした「採用活動に関する大学との共同研究-7」と同じことです(文系採用に限ります)。採用担当者は、学業は軽視していませんが、学生も自ら話さないし、特段、質問していませんでした。

 

しかし一方で、採用活動を知らない一般社会人の方(これは就活学生とその親御さんの受け止め方と同じでしょう)に尋ねてみると、「大学成績が見直されるんだって?今の学生は大変だね」との認知でした。大手企業15社が、某社の大学成績情報を採用しただけで、これだけのインパクトを与えるとは、流石に日経新聞の一面です。

 

大学成績を企業が重視するのはどういうことなのか?この大きなテーマの良し悪しは、この短いコラムでは語りきれませんが、近づける努力は必要なことでしょう。その際に大切なことは、企業が大学の授業を評価する(知ろうとする)だけではなく、大学も企業の求める能力を知り、大学の知見をもって解き明かそうとする努力です。

よく人事部が言う抽象的な「求める人材像」の明確化などではありません。人事の向こうにある働く現場の課題に、大学の力で取り組もうとすることです。今、多くの大学が取り組んでいるPBLは、その有効な手段になって欲しいですし、それが採用活動(就職活動)につながれば良いと思います。

 

ビジネスコンテストなどをやる場合でも、学生の単なる思いつき発表会ではなく、仮説をたてて、実地見学・統計調査・質問調査・サンプル作成・試行等を行って検証した「企画」にすることで、そのベースになる「統計学」「心理学」「経営学」「経済学」等の有効性を学生に教えることができます。それが学習意欲の向上につながり、大学成績の向上につながり、最終的に企業に納得させられたら良いですね。このような大学と企業の関係性の中に、大学成績のあり方が見えてくるのではと思います。

第271号:使い回しコピーは指導のチャンス

冬期休暇が終わり、大学も期末試験の時期になりました。コピーマシンの前には学生が行列をなし、友人のノートをコピーしまくっています。試験前の風物詩といえる後景ですが、授業のレポートでも「使い回し」を行う学生がたまにおります。きっとそうした学生は、企業のエントリーシートでも行っているのでしょうが、成績評価でも採用選考でも、あまり良い結果は出ないでしょう。

 

私のシラバスでは、15回の授業のうち3回欠席すると成績評価対象外になります。健康上の理由、アルバイト、就職活動だろうが、区別はしていません。しかし欠席した事情によっては、1回分だけレポートでの穴埋めを許すことにしています。(3回の欠席の場合、レポートを出せば2回欠席の扱いで評価対象になります。)

レポートのテーマは、以下の中から選ばせることが多いです。

1.欠席した理由(および欠席した日に考えたこと)

2.私のキャンパスライフとキャリア

3.自由テーマ

 

採点基準は、授業で説明しているアカデミックスキル(論理的記述)で書かれているかと、内容が授業とどのように関連づけられているかですが、上記のテーマを出した場合、期末試験等の繁忙な時期ですと、3の自由テーマを選ぶ学生が増えてきます。学生は「自由テーマ」なら何を書いても良いだろうと安易に思い、上記の採点基準をつい忘れてしまうのでしょう。結果、書き直し(不合格)になるケースも多いです。

つい先日も、締切日ギリギリに提出されたレポートで、全く私の授業とは関係のない内容のものがありました。当初は提出先を間違えたのかと思いましたが、学生に確認してみると「自由テーマだから何でも良いと思った。それで単位を貰ったこともある。」とのこと。しかし、私は受理せず再提出を求めました。レポートの使い回しは認められませんから。

 

こんな時、学生に助け船を出すことがあります。同じレポートをそのまま出すのではなく、そのレポートをデータ(材料)と扱って、私の授業や自分自身の能力開発(キャリア)につなげる書き方をする、つまり分析と考察を書き加えることです。これは、就職活動で、自分の体験してきた事実(データ)をどのように分析(自己PR)や、考察(結論⇒その企業への志望動機)につなげるのと同じことです。1つの体験から多くの知見を考え出すことです。

 

すべての授業でこのようなやり方が通じるとは思いませんが、少なくとも私の考えるキャリア教育では有効かつ社会でも通じます。それは大学での学びを社会や就活で活かせるようになるということで、「自由テーマに」はまった「使い回しコピー」の学生は絶好の指導チャンスです。

 

逆に応募者が山のように来る採用選考では、絶好の不合格ポイントです。就活のエントリーシートで、「ああ、これは何処の会社にも使えるワンパターンだな。締切日ギリギリにとりあえず出してしまったんだな。」などと思われるようなものを書かせてはいけません。「自由」は難しいけど、ちゃんと理解して、やり甲斐があるものとして取り組める若者に育てなければいけませんね。