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第320号:これからの採用活動で起きること

期末試験のシーズンになりましたが、相変わらず学生は企業インターンシップに呼び出されています。以前であれば、試験期間は企業セミナーを開催してもどうせ学生が集まらないという理由で、企業にも自粛ムードがあったものですが、今期は前倒しになって採用担当者もなりふり構ってはいられないという感じです。こうした混乱状態は、今の世界情勢と重なって見える気がしませんか?

 

「米国は、世界の警察官ではない」昨年9月の米国オバマ大統領の発言です。それは世界における米国の存在感の変化であり、絶対的な強権がなくなるということです。これからは米国・ロシア・中国の3リーグ体制になるなどの憶測もありますが、それもプーチン大統領の体制、中国の経済成長率の低下など、余談を許しません。

 

私には、この米国の現状が経団連の状況と重なって見えました。これまで大きな影響力をもって倫理憲章や採用指針を打ち出してきた経団連が、もう本気でそれを遵守する気を失ったようにみえます。昨年の企業の採用活動を見ていて、もう少し経団連の影響力はあるのではないかと思っていたのですが、経団連に加盟している企業群がここまで権威を無視するとは思いませんでした。もっとも経団連幹部企業自体がフライングをしているのですから、何をか言わんや、です。

 

ではこれからどうなるのでしょう?これも世界情勢と似たような動きになってくるように見えます。いま企業採用活動のトレンドは「ダイレクト・リクルーティング」もしくは「ターゲット・リクルーティング」です。マスメディア以外のチャネルから小規模に学生を囲い込み、インターンシップ等に動員する手法です。この手法は大規模で目立つような動きではなく、小規模なゲリラ戦、いやこの表現はベトナム戦争ですから、局地的なテロ活動ということになるのでしょう。(物騒な例えで恐縮です。)

 

ダイレクト・リクルーティングは小回りがきいて狙った学生にアプローチできますし、学生側から見ても大集団で十把一絡げに扱われませんので自ずと企業への好感度も上がります。この手法は他企業との差別化のために、独特な採用手法(以前ご紹介したような「顔採用」等々)を行う傾向にあり、そのバリエーションたるや多種多様で感心します。こうした仕事は比較的規模が小さい採用コンサルティング企業などでも請け負えますので、新興ベンチャー企業が台頭してきて成果を出しています。

 

しかし、この傾向が続くとまた新たな事態が起きてくると思います。それは経済学でいう「合成の誤謬」です。これはミクロで見る(少数が行っている)と成功する事例が、マクロで行われる(多数が行うようになる)と失敗になるという事象です。例えば、授業期間中にインターンシップを行う企業が少数ならば目立ちませんし効果もあり教員も多目に見ますが、この調子で増え続ける学生は何処に行っていいのか選べなくなりますし、ゼミや授業に学生が集まらず崩壊します。

 

世界情勢や難民問題を見ていると、何らかの国際秩序がまた求められると思うのですが、果たして今後そうした権威は登場するのでしょうか。それともこれからの世界は混乱・混沌が当たり前になるのでしょうか。とても悩ましい問題ですね。

第319号:インターンシップで教えてほしいこと

年が明け、インターンシップを理由に3年生の授業欠席が増えてきています。それも一気に2人、3人と抜けるようになってきたのでワークショップ形式の授業は成立しませんし、ちゃんと出てきている学生の足を引っ張っる支障が出てきています。嘆いてももはやどうにもなりませんが、秋学期の仕上げの時期に呼び出すなら、企業の方がには学生を甘やかさずに、しっかりビジネスマインドを教えて欲しいものです。

企業の採用活動はれっきとした営利活動であって、若者のための慈善事業ではありません。ところが、採用担当者にはこれが意外と盲点になっているのではないかと思います。学生は社会のことを知らなくて当然と考えられ、新入社員研修では、「働くこととは何か」というプログラムまで用意されています。それは、一面では世界に誇る日本文化なのかもしれませんが、あまりに学生をお客様(子供)扱いするのは見直されるべきではないかと思います。用意されすぎた現代社会の中で、学生の成熟化は遅れ、いつまでたっても夢を追いかける芸能人研修生になっているようです。

では企業が学生に教えて欲しいものとは何でしょうか?時間、法律、常識を守るというのは大学で行われているインターンシップ事前研修でも教えられるでしょうが、大学ではビジネスについてのセンスはなかなか教えられないと思います。その代表的なものをあげれば、「主体性」の考え方です。求める人材像としてどこの企業でもあげるものですが、それだけに盲点になりやすいのです。

例えば「報連相」というのはTVCMにもなり、今や多くの学生が知っている言葉になりましたが、この報告する際に大事なことは“主体的な”報告であることです。相手に尋ねられてから答えるというのは報告ではなく「回答」に過ぎません。報告とは本来、ビジネスの相手(上司・同僚)に対して言われなくても状況を伝えることです。そうすることによって組織は様々なビジネス機会をつかめたり、危機を逃れたりできるのです。

ところが大学のグループワークで学生が望む「自主的な研究」をさせてみると、グループの現状を自分から伝えに来る学生はまずいません。これは以前述べた卒論の研究でも同じで、学生から定期的に報告に来て始めて教員は指導できるのとも同じです。会議(グループ・ディスカッション)でも同様です。聞かれた時に答えるのではなく、言うべき事を言うべき時に自ら話すのが主体性です。

こうしたビジネスマインドをしっかり企業の方が教えてくれるなら、授業を欠席してインターンシップに参加する意義もあるでしょう。しかし、インターンシップに行った学生に聞いてみると、まったくこうしたことは言われなかったり、ただ社内見学して簡単な質疑応答や学生同士のグループ・ディスカッションで終わったり、というものもあります。

まあ、実際は企業の社会人でもこれができていない人や組織は多いものですが、せっかく授業を欠席して迎えた学生にはしっかり企業らしい教育をして欲しいものです。

 

第318号:今年の採用活動トピックス

2015年を現す漢字は「安」となったそうですが、今年もいよいよ残り少なくなりましたので採用・就職活動の大きな出来事を振り返ってみましょう。もっとも、今年は「後ろ倒し&前倒し」の一色に染まってしまった気がしますね。

 

▼2016卒(2015年)採用・就職活動の主な出来事

1.後ろ倒し

2.前倒し

3.ユニーク採用

4.オワハラ

5.内定率好調

 

「後ろ倒し」については、それが本当に良かったのか悪かったのかは判断できません。学生アンケートでは今年と昨年の状況が異なるので(学生は毎年就活をするわけではないので)比較できませんし、今年は前例のない環境変化だったので学生の不安が高まるのは当然のことですから。

「前倒し」の6月決着とは半端な結果になったものです。前倒し賛成派は、3月に戻したかったのでしょうがそれでは流石に採用担当者も業者も対応が間に合わなくなります。もっとも、この「後ろ倒し&前倒し」には採用担当者も呆れています。私が取材した企業からは以下の声を聴きました。

「まったく茶番で議論するのも馬鹿らしい。」

「いつでも良いからコロコロ変えるな。」

「今年もこっそり6月からやっていましたから、何も変わりません。」

それにしても経団連の威光がここまで地に落ちたのは意外でした。というより、経団連も最初から守る気がなかったのかもしれません。

 

「ユニーク採用」は前回のコラムでお伝えした通りです。この傾向はダイレクトリクルーティングを進める企業や採用支援企業の発展によってますます広がることでしょう。一つ懸念されるのは、ユニーク採用は小集団で数多く行われますから、多くの企業が始めることによって学生へのアプローチが増加します。ますます学生が時間を取られることになりそうです。

「オワハラ」も大きな社会問題になりました。先日、ブラック社労士が社員を合法的に解雇するブログで炎上しましたが、労働法を知らず、かつ強い意志で断れない学生には丁寧な指導が求められるでしょう。内定した学生に早く報告をさせるキッカケになるかもしれませんね。

「内定率好調」は、あまり話題にされませんがバブル期並みになった地域もあります。こうした明るいニュースは、学生の不安を取り除くためにもしっかり報道して欲しいものです。

 

私の年内の大学授業も今週で終了しましたが、クラストップ成績の学生が教職課程を諦めたとしょげていました。教職をやると6月の就活とぶつかるので教育実習は辞退すべきだと大学に指導されたとか。他の3年生もインターンシップを理由に授業を欠席し始めました。それも一気に3人、5人と抜けるのでワークショップ形式の授業は成立しませんし、ちゃんと出てきている学生の足を引っ張って支障が出てきています。

いやはや来年も問題のある1年になりそうです、皆様、良いお年をお迎え下さいませ。

第317号:多様な採用手法に込められたメッセージ

最近の採用活動のトレンドは、採用方法そのものを広報手段とすることです。大規模な母集団形成ではなく、自社の求める人材にターゲットを絞り、選択的な母集団形成をすることです。そのため、他社とはひと味違う多様な採用手法をあみ出し、刺激的な広報で惹き付けています。

 

ユニークな採用活動を行っている企業のまとめサイト(こうしたまとめサイトができるということからも、ユニークな採用手法が流行しているとわかります)は文末の参考URLでご覧頂けますが、本当に百花繚乱です。一見、真面目にやっているのかな?と思わされるものもありますが、採用担当者は真剣に取り組んでいるのです。

 

例えば、広告業界である東急エージェンシー社の「顔採用」というのはひときわ目立ちますね。人によっては怪訝に思ったり、面白いと思ったりすることでしょう。これは、あえてネガティブなキャッチコピーを使うことによって目立たせ、これまで広告業界に関心のなかった人にも振り向かせるのが狙いです。そして、こうした人の好奇心をかき立てる行為が広告業界(東急エージェンシー社)の仕事であるとのメッセージが込められています。

 

という意図なので、「顔採用」という言葉を四角四面に捉えておこるような人はこの業界には向かないよ、という選択的広報がなされているのです。勿論、実際の選考で容姿を採用基準にいれているわけではありません。同社の広報サイト(以下URL参照)をご覧頂ければわかりますが「顔採用」の結果で得られるものは、面接希望日が選べる等のものでしかありません。

 

これとは真逆の四角四面型採用手法といえば、チームラボ社の「卒制/卒論採用」でしょう。同社はユニークなデジタルアートの開発で急成長してるいベンチャー企業ですが、東大・東工大の理工系学生達による創業です。そのため、モノヅクリ(システムインテグレート)が基本で、面接で見るコミュニケーション力よりも、論理的にアウトプットを出せる力が重視されます。その資質は卒論の書き方ではっきりわかるわけです。(以前のコラムで書いた通り、これは文系学生でもある程度わかります。)

そのため、卒論をしっかり書かない(書けない)学生は、同社を避けることになるでしょう。

 

このように、採用手法に個性を出すということは「求める人材」のメッセージを明らかにするということです。企業セミナーで「我が社の求める人材像は・・・」等と何処でも似たような要素を挙げるのではなく、採用手法を通じて具体的に示しているわけです。学生にはこうしたメッセージをちゃんと読み解いて応募してほしいものですね。

 

▼【ちょっと変わった】面白い選考方法取り入れている会社【就活】

http://matome.naver.jp/odai/2132949328677520401

▼東急エージェンシー社の「顔採用」(YouTube)

https://www.youtube.com/watch?v=bHTy_0mdCdM

▼チームラボ社「卒制/卒論採用」

http://sotsusei.team-lab.com/

第316号:経済三団体の発言の違い

倫理憲章を巡る論争は決着がついたようですが、この問題についての経済三団体(日本経済団体連合会、日本商工会議所、経済同友会)トップの発言を聞いていると、それぞれ個性があって面白いです。意外とこの三団体についてご存知ない方が多いので、整理しておきましょう。

日本経済団体連合会経団連)は大企業中心の約1400社からなる団体(一般社団法人)で、その代表者(榊原定征氏:東レ会長)の発言は財界の代表として政治に大きな影響力を発揮します。労働問題についても議論して倫理憲章を定めていますが、歴代代表者はあまり新卒採用については詳しくなく、事務局の用意した内容を発表するだけにとどまっているようです。そのため記者会見で突っ込まれると、ポロッと感情的な発言をすることがあります。倫理憲章を設定している団体ながら全体の調整的な見解が多く、最近は確固たる信念や方針がないままに右往左往しているようです。(きっと他のもっと重要な案件で大変なのでしょう。)

日本商工会議所日商)は約125万社の中小企業からなる団体(特別民間法人)で、全国に514箇所の拠点を構えています。代表者(三村明夫氏:新日鉄住金相談役名誉会長)は大企業の方ですが会員の殆どである中小企業の意見を述べています。法律に基づいてできた団体であるため社会福祉のための公的な性格の活動です。今回の倫理憲章の6月への前倒しを経団連に泣きつくような形で提言しました。しかし、倫理憲章は学生のために作られたはずなので、こうした企業の便益を図るために変更するというのはちょっと変ですよね。

経済同友会は戦後すぐに出来た経営者同士の勉強会がルーツで、企業経営者約1300人が個人の資格で参加する団体(公益社団法人)です。先進的な経営を目指した提言をしており、経団連や日商とは違って、代表者(小林喜光氏:三菱ケミカルホールディングス会長)個人の考えを元に歯に衣着せずに話すので説得力があって面白いです。先日も倫理憲章についての見解を述べられましたが(下記URL参照)、理想は世界の常識である「通年採用」であり新卒一括採用からの移行を提言しています。

さて、これら経済三団体のそれぞれの意見の中で傾聴すべきは、やはり経済同友会のものではないかと思います。というのは経団連と日商は最終的なあるべき姿が描かれていないからです。倫理憲章で時期の問題だけを論じるのはその時々の社会背景や特定の団体の利益に左右されてしまいます。そうではなく、段階的でも良いから理想を描いて目指すべきです。

こうした理想(あるべき姿)を描く場合、やはり総合商社で世界を見てきたビジネスパーソンの見識が役立ちます(下記URL参照)。太平洋戦争開戦前夜、世界の情勢を良く見ていて開戦絶対反対を主張したのもかつての商社マンたちでした。しっかり世界を見据えて倫理憲章を論じるべきですね。

▼小林喜光経済同友会代表幹事の記者会見発言要旨(2015.11.12)経済同友会

http://www.doyukai.or.jp/chairmansmsg/pressconf/2015/151112a.html

▼国際大学学長(槍田松瑩氏:元三井物産会長)の倫理憲章についてのコメント

http://college.nikkei.co.jp/article/47141710.html

第315号:卒論イロハを知らない学生&社会人

灯火親しむ晩秋の候、勉学にじっくり打ち込むには最適の季節ですが、大学では卒論の締め切りを前に右往左往している学生も見かけます。私は任期付き教員なので正規のゼミはもっておりませんから、直接卒論の指導をすることはありません。しかし、たまにアドバイスを求めて駆け込んでくる学生がおります。状況を聴いてみて、卒論の書き方の無知さに愕然とすることがあります。

 

まず、なぜ指導教官ではなく、私のような授業や就職支援で縁のある教員に相談に来るのか尋ねてみるのですが、「先生が放任主義なのです」と回答はほぼ同じです。論文の作成においては、通常の授業のようにシラバスや教科書はなく、参考文献は自分で探し不明な点は教員のアポを取って指導を求めていく能動的な学習(というより研究)スタイルが求められますが、それが「教えてくれない」という生徒意識から変わっていないのですね。座学で出席しさえすれば単位の貰える科目ばかり履修していた学生には卒論の指導教官は不親切に見えるのでしょう。

 

次に、論文のテーマや問い(リサーチクエスチョン)を尋ねますが、あまりにもテーマが大きすぎたり、問いが漠然としていたり、そのままでは締め切りはおろか10年かかっても仕上がらないような設定になっていたりします。(恥ずかしながら、私も最初はそうでしたが。)そして、調査対象や方法を聞いてみると、身の回りの友人100人にアンケートをとる等、新橋のサラリーマン100人も驚くような偏りかたです。

 

さて、こうした学生の勉強不足に嘆息しながら新聞を見ていると、ここにも不可思議なアンケートや分析の記事が出ていたりします。例えば倫理憲章の記事等では以下の様な表現は気になります。

 

「8月への後ろ倒しは失敗だった」⇒内定率は良く失敗の定義が不明

「就職活動期間が長くなった」⇒後ろ倒しになったので今期は当たり前

「今年は昨年より大変だった」⇒学生は毎年就活をしないので比較困難

 

極めつけは「就活で学生が学業をおろそかにした」ですが、解禁日を4月や6月にして学生が勉強に励んでくれるなら諸手を挙げて賛同します。そんなに簡単に学生が勉強してくれるなら親も教職員も苦労しませんね。時期を前倒しにして学生が勉強するようになったかを是非検証して欲しいです。

 

こうしてみるとマスコミ関係の方々は、もしかすると卒論を書かずに卒業した方々ではないのかな?と思わされます。つい先日も国連関係者が「日本の女子生徒の13%が援助交際に関わっている」との根拠不明な発言をされましたので、世界的な傾向かもしれません。

 

正解の無い問題を考える、事実をもとに意見を展開する、受け売りはしない、卒論で教えるべきことが改めて大事になってきたと思うこの頃です。

 

第314号:「容姿端麗」の風評利益

就職活動で常に高い人気を誇るのがキャビンアテンダント(CA)ですね。航空業界はグローバル市場の乱気流に巻き込まれて業績も乱高下ですが、日本のCAだけは常に安定した高高度人気職種です。労働条件もますます厳しくなりながら、この業界は「風評利益」に恵まれています。

 

つい先日、私の女子学生から就職相談がありました。まだ1年生なのに早いなあ、と思いつつ話しを聴いてみることに。

学生「CAになりたいのですが不安なのです・・・」

私 「ほう、何が不安なの?」

学生「周りにCAを志願している人が多くて・・・」

私 「うん、人気職種だからね。」

学生「部活の先輩がCAに内定したのですが・・・」

私 「おお、それはいろいろ教えて貰えるね。」

学生「でも先輩はとても美人で勉強もできて・・・」

私 「まだ1年生だから頑張る時間はあるよね。」

学生「でも容姿はもう変わらないと思うので・・・」

私 「じゃあ、諦めるの?」

学生「子供の頃から夢なので諦められなくて・・・」

私 「じゃあ、頑張ろうよ。」

学生「でも、本当になれるのかどうか不安で・・・」

 

と、小一時間、自分探しの旅にお付き合いしましたが、相談後にだいぶスッキリした顔つきになったのは良かったです。(容姿はそうすぐに変わりませんが、顔つきは変わりますね。)

 

乙女心をかき立てる航空業界は罪深いなあと思いつつ、たまたま人事の方に聞いたら「いや、それはこちらも困っているのです。人気が先行してしまって・・・」との当惑したご様子。一般企業からすれば、相当な費用をかけて知名度向上をはかるのに羨ましいことですが。

 

ここまでは良くある話しですが、先日、大学内でもこうした『風評利益』が起きていることを発見して驚きました。大学は来期のゼミ選考の時期ですが、その中に美人ばかりのゼミがあるのです。学生達は「昔からあの先生は面食いだから」といいますが、先生は頑なに否定しているとのこと。ことの真実はさておき、そうした過去の実績のせいで学生間では「あのゼミに入れたら美形!」との風評が確立し、宣伝も何もしないのに毎年美形が集まり続けています。

 

これは最新のマーケティング4.0か!と思いつつ、一般企業で妙に美形社員を採用担当者に据えている企業が数社浮かびました。げに採用戦略とは罪深く悩ましいものです。

 

▼参考URL:「容姿端麗」は、CAになる必須条件なのか(東洋経済オンライン)

http://toyokeizai.net/articles/-/86875

第313号:キャリアコンサルタント法制化

就職課の皆さまも採用担当者もキャリアコンサルタントの資格をお持ちの方は多いでしょう。周知の通り、キャリアコンサルタントは平成28年4月に法制化(国家資格化)される予定です。たまたま厚生労働省の方がこの法制化について解説するセミナーがあるので受講してきました。

 

私がキャリアカウンセラーの資格の一つであるGCDFを取ったのは10年前になります。今でも資格更新は続けていますが、最近は大学キャリア教育の方に注力していますので、この法制化については注意していませんでした。そのため勉強に行ったのですが、正直、この法制化の意義がよくわからず、逆に新たな課題が見えてしまいました。

 

国家資格化によりキャリアコンサルタントの認知度やステイタスが上がるのは良いことだと思います。しかし、税理士や社会保険労務士とは異なり、キャリアコンサルタントでなければできない仕事というのが明確ではないと思います。衛生管理者のように一定規模の企業にはキャリアコンサルタントの配置が義務づけられるというなら別ですが、受講していたキャリアコンサルタントの方々の発言で多かったのも、資格はとったけど仕事がないというものでした。

 

私が大学教員になったのも10年前ですが、キャリアコンサルタントの方から「どうやって大学教員になったのですか?」「キャリア教育の仕事があれば紹介して下さい。」と問われることが増えてきました。私も任期付き教員・非常勤講師という不安定な雇用状況なので、そうした方々の気持ちは痛いほどわかります。大学キャリア教育もだいぶ普及してきましたが、良いキャリア教育のできる教育者は少ないし、内容の充実度もまだまだです。しかし、キャリアコンサルタント資格保持者はコンサルティングはできても、キャリア教育は実務経験がないと難しいです。

 

こうした状況の中で、就職課職員やキャリアコンサルタントを対象に法政大学でビデオ教材の研究会を始めたのもこうした方々に機会を作れたらと思ったからです。(ちなみに、国もキャリアコンサルタント向けのキャリア教育支援の講習会を実施しており、法政大学の事例も紹介されています。)

 

就職活動に悩む学生を支援するには、まずはキャリアコンサルタントが自分のキャリアに悩むというジレンマを解消しなければならないと思うのです。

 

▼参考URL:キャリアコンサルティング(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/career_consulting/index.html

 

▼法政大学のキャリア教育事例(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11800000-Shokugyounouryokukaihatsukyoku/0000090424.pdf

 

第312号:就職と結婚との共通点

就活はよく恋愛に例えられてきましたが、10月1日に多くの企業で行われる内定式はさしずめ結納にあたるのでしょうか。ならば、その次に来る結婚のことも考える成長機会にして欲しいと思います。それは大人の恋愛結婚)とビジネスの共通点を知ることでもあります。

就活を恋愛に例えるというのは、そのプロセス(選考過程)を中心に考えることといえますが、大人の恋愛はその後の結婚生活(結果とその先)まで考えることです。恋愛時代は自由に相手を選んだり迷ったり出来ます。しかし、結婚(就職)となると相手は特定され、不自由の中での工夫を考えなければなりません。その場合、以下の3つのポイントが大切です。

1.卒業時期は自分で決める

結婚までの恋愛期間は人それぞれです。小中学校の幼馴染みが結婚相手になる人もいれば、社会人同士の合コンで出会って数ヶ月で決める人もいます(ちなみに私の友人には3日で決めた人がいます)。結婚するための恋愛期間は長い方が良いか、短い方が良いか、こうした議論はナンセンスです。長すぎて飽きてしまった、一目惚れで盲目的だった、いずれにしても自由恋愛期間を卒業して結婚する時を決めるのは自分自身なのですから。

2.自分の言動に責任をとる

結婚に至るのがお見合いであろうが自由恋愛であろうが、結婚後に失敗したと思っても、それを他人のせいにしてはいけません。これは採用担当者の中で良く話題になりますが、入社した新卒社員が「採用担当者にだまされた」と不満を言います。しかし、これだけ情報が社会に溢れている時代で入社前にまったくわからないというのもおかしなことです。仮に採用担当者が巧妙に採用広報をしていたとしても、一つだけの情報だけで意志決定せず、できるだけ調べて決めるのが大人の恋愛です。ついでに言えば、大学でも一次情報(フィールドワーク)の重要性は教えていますが、たった一つだけの情報を一般化しないようにとも教えていますね。

3.意志決定が更に良くなる努力をする

最後に大事なことは、結婚後(就職後)は自分の意志決定が良い方向に向かうよう努力することです。家庭も企業も相手と一緒に作る社会です。考え抜いて最良の選択をしたつもりでも、思い通りにいかないことがありますし、自分自身も相手にとって期待通りの人物ではなかったと思われるかもしれません。だからこそ、卒業は始まりであり就職はスタートだと言われるのですね。少しの失敗で簡単に意志決定を翻したり不満を言っているようでは結婚も仕事も一人前にはなりません。自分の意志決定を本当に最良の結果にする努力がなにより大切です。

内定式が近づいて、多くの採用担当者が期待と不安におそわれながら、内々定を出した学生との再会を楽しみにしています。実は上記のポイントは私が採用担当者としてこの時期に内定者に伝えていたことです。学生には説教に聞こえたかもしれませんが、社会に出る前の学生に大人の心構えを教え、不安を取り除くのも大事な仕事です。採用担当者が求めるのは、こうした大人の恋愛、つまりビジネスができる若者なのです。

第311号:フリーライダーの成れの果て

大学教育では、「アクティブラーニング」が盛んにいわれています。座学だけではなく能動的な学習が大事だという点には異論はありませんが、運営するには準備やノウハウが必要でなかなか大変です。その課題の中には「フリーライダー(ただ乗り)」があります。これはこれまでの大学教育では出てこなかった大きな課題ですが、うまく指導できれば良いキャリア教育となります。

アクティブラーニング」が出てくると「フリーライダー」が大きな問題になるのは、アクティブラーニングではグループワークを導入することが多いからです。経産省が主張する社会人基礎力にもある

チームで働く力」の養成のためですが、残念ながら大学の授業はそれを養成するようにはできていません。(そもそも成績表に「チームワーク力」という項目がありませんし、大学教員もチームワークは苦手そうです。苦笑)

一方、社会では逆で、コミュニケーション力を発揮してチームワークができなければ仕事は進みません。それが如何に求められているか、そして学生のチームワーク力が如何に低下しているかは、多くの企業が採用選考にグループワークやグループディスカッションを導入していることからもわかります。

企業の中にも昔から働かない人は「給料泥棒」などと言われており存在していましたが、以下の理由であまり目くじらを立てられませんでした。

1.体を使う仕事が多かったのでサボると目立ってしまう

2.個人の成果より組織の成果が優先だった

3.個人の業績を測定する意識や手法がなかった

ところがこれらの理由が、ITの進化でPCに向かうようになり、個人の目標管理が設定されるようになり、個人の成果に応じて評価するようになってきたため、周りの人への気遣いがだんだんと忘れられてきたようです。政府が勧めるメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行していくと、この傾向はますます加速されるでしょう。その結果、企業においてもフリーライダーが注目されてきて、書籍や雑誌にも扱われるようになってきました。

社会を見ていても、こうした周りを気にしない人は増えていますね。電車の中でミュージックプレーヤーでヘッドホンをシャカシャカ鳴らしている人、真剣に化粧している女性、等々。

先日、ある企業採用担当者からもこんな話しを伺いました。経理部長が部下について嘆いていたそうです。仕事もろくにできない社員が事務所でスマホばかりいじっているので注意したところ、次の言葉が返ってきたそうです。

「誰に迷惑をかけているわけじゃないから、いいじゃないですか。」

こんな社会人にしないためにも、アクティブラーニングは真剣に取り組まなければなりませんね。

▼参考文献「フリーライダー あなたの隣のただのり社員」渡部幹(講談社現代新書)

http://www.amazon.co.jp/dp/4062880563