早くも秋学期も半分以上終え、学生の勉強の秋も集大成の時期に・・・、と言いたいところですが、今年度は異変が起きています。企業主体のインターンシップが、頻繁に開催され授業を欠席する3年生が急増しています。しかも、インターンシップという名ばかりの早期母集団形成の採用活動になっていますから。
経団連ルールがなくなった初年度ということで、想像はしておりましたが、これだけ授業で可視化されると悩ましくなります。私は複数の大学で非常勤講師や就職ガイダンス、就職相談員(キャリアカウンセラー)をやっていますが、高偏差値の有名大学ほどインターンシップへの勧誘が多くなっています。上位校の学生は、山の様な案内メールの取捨選択とスケジュール調整に追われていますが、中堅以下の学生は、何事もないように大学祭に夢中になっていたりします。
学生の秋学期履修登録や授業出席にも大きな変化が出てきました。先輩からいろいろアドバイスを貰った学生等は、3年生の秋からインターンシップが増えることを聞いているので、私の授業の様に出席がうるさく授業外課題もある科目は避け、いわゆる「楽単」を中心しています。そうしたことを気にせず私の授業を履修した学生は、出席に苦労して(私は就活やインターンシップによる欠席は認めず、休んだ場合は補講やレポートを課します)、昨年度は殆どいなかったリタイア(授業放棄)者が17%、更に出席日数が厳しそうな学生も17%出ています。おそらく30%は単位未修になるでしょう。
どんなに「勉強は学生の本分だ」、という懐かしい説教をしても効果はないでしょうし、企業の囲い込みもますます進むと思われます。最近の「名ばかりインターンシップ」では、終了後に学生に個別のメールが届き「貴方のインターンシップでの言動は有望だったので、内密に早期優遇の選考を案内します」と呼び込まれます。現実的にはインターンシップに参加しなくても、その企業への門が閉ざされたわけではありませんが、学生としては千載一遇の機会として飛びつきたいでしょう。
一方、企業側からすると、有名校の学生を早期選考する作業は、学歴フィルターも似ていますが、採用選考の業務を考える上ではどうしてもやりたくなります。というのは、今のネット時代の新卒採用方式では、どうしても採用選考開始時期が集中し、一気に応募者が来るので対応がこんなになるからです。インターネットでのコンサートチケット販売が開始日に応募が集中し、サーバーがパンクすることがあるのと同じです。
つまり企業の早期優遇選考は、応募者数の平準化という意味があるのです。そして、それは来たるべき(?)通年採用へ向かうプロセスといえるかもしれません。通年採用になると、応募者のキャリアに応じて企業の対応にも差が出てきます。即戦力の学生(日本では殆ど不可能だと思いますが)には、応募段階で早期に選考プロセスが汲まれ、更に面接の評価に応じて賃金や配属等の高処遇が決定されます。
世間では「新卒採用は時代遅れで通年採用に向かうべきだ」という言説が広まっていますが、そういう方々に中途採用と同じ通年採用で就職・転職したことがあるのか、本当の通年採用をやったことがあるのか?と問いたくなることがあります。その目線で見ると、今の早期囲い込みは新卒採用しかやったことのない企業採用担当者(日本は中途採用の経験も転職もしたことのないピュアな採用担当者が意外と多い)の訓練になっているのではないでしょうか。全員が初心者ですから、学生も大学も企業も当分、混沌とした状態は続きそうです。