yoshi のすべての投稿

第252号:採用担当者にはどう聞こえるか?

採用担当者がもっとも嫌うというか、面接の仕事で非常に辛いのは、同じことを何度も聴かされることです。同じ作業をひたすらに強制させられることは、チャップリンのモダンタイムズではありませんが、苦痛以外のなにものでもありません。しかし、採用担当者は面接に面白さを求めているわけでありません。学生の皆さんには自分の話が(大勢の学生の中で)どう聞こえるのか?を考えて欲しいと思います。これは経営戦略でのマーケティングにも通じる基本的な仕事力でもありますから。

 

話している内容が同じでも、表現方法が異なるだけで印象はガラッと変わりますし、評価も変わります。ちょっと実例でみてみましょう。

 

「~では誰にも負けません」

とは学生が本当に多用する表現です。これを採用担当者目線(ではなく耳線?)で聴いてみると、前向きに評価すればプライド・自意識の高さとして感じられますが、何度も何度も聴かされるとつい、「なんで誰にも負けないと言えるのか?証明できる事実はあるのか?」と受け止め、客観性の欠如というネガティブな評価になります。

 

「~には自信があります」

上記より少し控えめな表現ですが、前向きに評価すれば個性・自負を感じます。ネガティブには上記と同じく、「どれだけ凄いのか具体的に示してみろ!」となります。

 

では、これはどうでしょう?

「~の難しさを痛感しました」

こう話す学生は意外と少ないです。上記と違って、物事の捉え方の客観性(自己評価)や謙虚さを感じます。学生が社会に出る前に持っておいて欲しい感覚とは、根拠のない自信ではなく、事実をしっかり見据えて自分を客観的に評価出来る能力です。更に、そこからどんな対策や課題が見えたかがあれば、なお良いです。

 

以上、同じ経験をもつ学生が3通りの表現をした場合、それぞれに印象が変わります。勿論、アナウンサーや接客業の採用でない限り、こうした話し方の工夫だけでは最後まで通らず、やはり学生時代に何を具体的にやってきたのか、で決まります。イマドキの大学生が大好きな「自分らしさ」ですが、それは何なのかを、自分の視点ではなく相手の視点で考えて表現し、社会の門番たる採用担当者のゲートをくぐってほしいと思います。

 

最後に、上記は私の個人的な視点であり、採用担当者によって受け止め方は千差万別ですが、表現の違いで印象が変わる、だから相手目線になる、これはどの採用担当者でも同様に求める能力だと思います。また、上記表現はここで書いた時点で、もう大勢の方々に伝わっていますので、使うなら早い者勝ちです(笑)。

 

第251号:中小企業経営者の採用談義

先日、「中小企業経営者の求める人材像を探る」という座談会を見学して参りました。これは金融機関が設定したもので、規模は小さいながらも優良な中小企業の経営者(社長)数名が新卒採用について自由に議論して貰う企画です。周知の通り、大企業と中小企業では、告知の仕方から選考に仕方、更には入社してからの人材育成まで全く異なります。大企業向けに「作られた就職活動」しか知らない学生には未知の世界でしょうが、大学生の進路指導にとっても今後の課題だと思います。

 

今回、コメントされていた経営者は、資本金3000万円、採用規模は若干~10名程度の製造業の方々で、中国等の海外に積極的に事業展開をしてます。歯に衣着せない中小企業経営者(社長)の話は、どれも個性的で興味深く、なるほどと思わされますが、共通点も多々あります。異口同音に語られていたコメントは以下のようなものです。

 

▼女子学生が元気

・女子が素晴らしい。やりたいことをしっかり話す。(男子はモゴモゴ)

・女子学生は採用募集告知がなくても飛び込みでメールでアプローチしてくる。

・中国の女性は男は頼りにならないから頑張る。あのハングリー精神は見習って欲しい。

・性別で能力差があるというよりは、これまで男性中心だったから相対的に目立ってきたのでは?

 

▼専門性をしっかり学んでいて欲しい

・就活をやり過ぎた就職マシンのような人材はいらない。

・人間の芯がなくて、表面だけぺたぺたと何かを貼り付けたような人材はいらない。

・基本的な学力が弱くなっているような気がする。新しい学科も良いが基本をしっかり。

 

▼チャレンジ精神がほしい

・常に自分から挑戦して全力で実行する人が良い。(シンプルだけどこれにつきる)

・起業家が少ない。起業家精神の作れる人を採用したいし育てたい。

・信用金庫は転勤が無いから入ったという新人は情け無い。

 

▼大手就活サイトは使わない

・大手就活サイトをやめて大学に直接コンタクトしている。(数が多くてもダメ)

・大企業が終わった後に、大学内セミナーを直接求人している。

 

元気な中小企業の採用方法を見ていると、新卒中心だけで採用活動をしている大企業がとても疲弊しているように見えます。「個性的な学生が少ない」と嘆く大手企業採用担当者の多くが、没個性の採用活動をひたすら続けていることに気づいていません(気づいていても動けません)。

ロート製薬が発信した「脱・とりあえず採用」も、こうした原点に戻ろうという考えなのだろうと思います。前例のないことに試行錯誤しながら取り組んで行く、それは就活学生にも企業採用担当者にも課せられた今後の課題なのでしょう。そんなことを思わされた座談会でした。

 

第250号:AKB48型とPerfume型のES

メディアに登場するアイドルにはいろいろなタイプがありますね。昔のように一芸に秀でた技を提供するタイプもあれば、マルチの才能を発揮するタイプもあります。どちらが良いかというのは好みの問題で正解はありませんが、今が盛りのエントリーシートを見ていると、大学生の好みと採用担当者の好みの違いはハッキリしているように感じます。

私はTVの芸能番組は見ませんので最新のアイドルの動向や人気の曲などはわかりませんが、キャンパスにおける大学生の話題や、放課後にチームで踊っているダンス・サークルを見聞きすると、何となく傾向はわかります。最初は違いのわからなかったAKB48Perfumeも区別できるようになりました。たまたま研究仲間にこの2チームの違いで修士論文を書かれた方がおられましたので、指導を仰いでみたところ、成長する過程を応援することを楽しむアイドルチームがAKB48であり、完成された踊りを応援するのがPerfumeだということです。更に、ファンの年齢層が若い(大学生層)のがAKB48で、わりと中高年にも指示されているのがPerfumeだそうです。

ここで、なるほど!と思ったのは、最近のエントリーシートの内容と同じだということです。大学生の書く自己PRは、結果よりも過程に重点があるものが多いです。自己成長をアピールしたいのですね。「頑張ったことはなんですか?」という問いに対して、自分の内面の葛藤や悩みに挑戦している姿勢を詳しく書いてくる人が多いです。そのバリエーションも多種多様で、まさにAKB48型です。

一方、学生より年配である採用担当者の好みは、やはり結果・成果・具体的行動を求めているPerfume型と言えるでしょう。それはエントリーシートの設問を読めばすぐにわかります。下記のとある有名企業のエントリーシートの設問をご覧下さい。

・あなたが決断を迫られた最大の場面はどのような時でしたか。また、そのとき、あなたはどのように考え、行動して決断したか、記述して下さい。

・あなたの過去の経験の中で、新しい発想、経験、機会や物事の仕方を探究して地域や組織、人びとに変化・変革を起こした事例を記述して下さい。

・あなたが目標に対してリーダーシップを強く発揮し、主体的に周囲の人と共に成果をあげた事例を記述して下さい。

・あなたが自分と異なる価値観を持った人たちと協働して目標を達成した経験について記述して下さい。

この4つの設問で求められている「行動」「決断」「経験」「成果」「事例」「達成」という単語のオンパレードから、内面の成長プロセスよりは外面のアウトプットを求めていることは明らかです。

ということで、趣味の世界ならともかく、企業に提出するエントリーシートなら、プロセスの後に来るアウトプットまでしっかり書いた方が良さそうですね。大学生のパフォーマンスに期待しましょう。

第249号:登録を促す就職ナビサイト

「今年は母集団形成が異常に順調なんだよね。」つい先日、馴染みの採用担当者から伺った言葉です。かつての理工系推薦制度のような大学との強力なパイプがあったり、人材紹介業等のアウトソーシング等を使わない限り、採用担当者にとって自社へのエントリー数(母集団形成)は重要な問題です。ところが今年は、いくつかの同規模企業の採用担当者から同じような話を伺います。さて、これは正直に喜んで良いものなのでしょうか・・・?

 

この話を伺った企業は経団連には加盟しておりませんので、倫理憲章にはこだわらずに既に採用面接を始めています。企業規模はそれなりに大きさですが、あまり知名度が高い方ではないので、例年、母集団形成に苦労されています。ところが今年は、Webエントリー数、そこからセミナーにやってくる確率、更にセミナーから採用選考面接に進む学生が殆ど辞退なくやってくるそうなのです。

 

少し気になったので、就職活動中の学生に尋ねてみたら、面白いことを言っておりました。「最近の就職ナビサイトは、企業への登録数が少ないと『あなたはエントリー数が他の人より少ないのでもっとエントリーすべきです。』というメッセージが出るんですよね。プレッシャーをかけられてるようで、気分わるいです。」

*ちなみにこのシステムは、新卒だけではなく転職(中途委作用)のナビでも使われています。

 

なるほどですね。こんなメッセージを毎日見せられたら、自分のペースをしっかり持てる学生ならば気にせず無視できるのでしょうが、気弱な学生は焦っていくつもエントリーすることでしょう。実際、私の教えている女子大学の真面目な学生も慌ててエントリーしまくっています。この現象の背景にあるのは、就職情報企業に対して厳しく募集段数を求める企業採用担当者のニーズです。これは就職ナビサイトだけではなく、最近なかなか学生が集まらない合同企業セミナーでも同様です。せっかく費用をかけて出展したのに、肝心の学生来場数が少なくなって主催者は苦労しています。

 

就職ナビサイトが広報ツールとして登場してもう20年近く経ちました。初期の頃の広報ツールから母集団形成ツールとなり、今はマッチングの機能まで備えてきています。もはや就職ナビサイト無しに企業が採用活動をすることは難しいです。その反面、物心ついた時からITの恩恵を受けている若者には、もはや就職ナビサイトも特別な存在ではなくなり、こうした後押しやてこ入れがないと動かなくなってきたのかもしれません。mixiにfacebookにLineと、さすがに全部は使い切れていませんからね。

 

さて、母集団形成が今のところ順調だというこの採用担当者の方は、続けてこんな話しをしてくれました。最後にそのままお伝えしましょう。

「正直、早く開始して確かに良い学生は集まりやすいけど、逆に全く慣れていない学生も多く、きっともう少し練られれば良い物を持ってそうなのにと感じるケースも多々あります。おそらく今後は早目に内定出しても、結局他社に逃げられるケースが続出し、結局グダグダ続けるはめになるんじゃないかと思ってはいます・・・。」

この採用担当者の懸念が当たらなければ良いのですが。

第248号:期末レポート採点とES評価

大学の期末試験の時期になりました。私の授業(キャリアデザイン系科目)では、筆記試験ではなくレポート提出を求めています。半年ほど前のコラムで、私のレポート採点基準は企業のエントリーシート(ES)の評価基準と同じであると書きましたが、レポートとESを一緒に書くようになったこの時期だからこそ、学生には大事にして欲しいと思います。読まれることを意識した書き方は、相手を動かす文章力ですから。

前回お伝えした採点基準の中に、『前向きであること』と『品格がある』というものがありました。これらは採点基準の中では上位に位置するものですが、わかりやすく言えば、そのレポートを読んだ相手の気分が良くなるということです。ここで学生が勘違いをしがちなのは、相手にお世辞を使うのか、ということです。「自分に素直」でありたい学生は、嘘やお世辞をつくのが嫌いで、「自分をもってない」と宣います。しかし、試験ではそうはいきません。それで評価されることに気づいてないと、単位は出ないし、就職試験も通りません。

具体例をあげると、『前向きであること』とは、講義を聴いて感じたことだけを書くのではなく、そこから更に原因の分析や将来への対策も書くことです。私の講義では、キャリアモデルとして偉人の業績を紹介したり、ユニークな学生生活を過ごした先輩学生に体験談を話して貰ったりしています。以前であれば、多くの学生が「もっと頑張らなければと思った。」「この人のようになってみたいと思った。」等の感想が大半でした。しかし、数年前からは「私とは違うと思った。」「今日の話を聴いて不安になった。」等が多くなり、「~が不安だ」「~が不安だ」の感想文のオンパレードです。

私は、「不安なのは十分わかったから、では、その不安の原因は何で、どうすれば良いかと書かなければ単位はだせません。それがキャリアデザインです。」と伝えています。それを何回も繰り返すことによって、徐々にではありますが、学生の書き方が不安の向こうまで書くようになってきます。

もうひとつの『品格がある』とは、授業でゲスト講師が来た際に「お話しから何でも感じたことを自由に書きなさい」と指示しますが、仮にその話がつまらなかったり分からなかったりした場合でも、「今日の話はさっぱりわかりませんでした。」とか「言いたいことがわかりません。」という表現をせずに、相手に配慮した書き方をするということです。

例えば「今日の講話は私にとって未知の分野で新鮮だった」とか「お話しを伺って、自分の理解力の未熟さに気づかされました」等の大人の表現をするということです。単純な話者なら喜んでくれますし、鋭い話者の場合は自分の話し方を反省します。いずれにしても、こうした感想文やレポートは相手に評価され、相手の行動を促すということです。

こうした文章を書くためには、ボキャブラリー知識)と感情コントロール自制力)と戦略的思考計画性)が必要です。それこそが、大学で教えるべきことであり、企業や社会が求めていることでしょう。皆さんも、主催された社会人講演会で、学生の感想文をゲストに見せるのに冷や冷やしたことはありませんか?こうした点を指導しておけば、安心ですよ。

 

第247号:12月解禁は大学教育破壊

今年も学生から「お願いメール」が届くようになりました。「お忙しいところスイマセンが、エントリーシート(ES)を添削して戴けませんでしょうか?」というものです。1月は期末試験を前にどれだけ教職員が忙しいのかわからないのでしょう。勿論、それは学生も同じなのですが。それでも何とか時間をとってみるのですが、文章力は年々低下していて読んでいて情け無くなります。

 

いきなり感情的な文章から初めてしまい恐縮ですが、それは情け無い学生のESがたくさん届くようになってきたからです。ESの実例を以下にあげましょう。有名企業に応募した学生の志望動機です。

 

「私は地道な作業をこなせるだけではなく、挑戦する力があります。御社のテレビCMは私のもっとも好きなCMです。音楽や映像のインパクトも大きかったのですが、貴社の技術力を感じました。貴社の商品はお客様の希望に答えるだけではなく、気づかない部分にまで目を向けさせ、サポートしてくれるものだと思っています。(以下略)」

 

この文章は最初の2文だけでもう先を読む気がなくなります。これは採用担当者としても教員としても同じです。まず1文目が結論とは思えません(課題が自己PRならこの出だしでも良いのですが)。次の2文目になると、もう1文目との論理関係が飛躍(破綻)しています。3~4文目となると、また別の展開に向かってしまいそうです。これは論文の書き方の基本である、パラグラフ・ライティング(主文+説明文+結文)という基本的な論理構成をわかっていないということです。文学作品やブログならばともかく、起承転結の「転」は論文では使わないのが原則です。

 

昨年もESの書き方について「一次情報にあたる」「複数の情報を集める」「持論を展開する」という基本的な取り組み方の欠如を指摘したのですが、それ以前の文章の書き方のレベルが年々下がってきています。そこを気づかせ、鍛えるのが大学の授業であり期末試験なのですが、3年生にもなってこんなESを書くようでは、論文についても心配です。

 

更に心配なのは、文章力だけではなく、こうした依頼をする学生の思考や態度です。「添削して下さい」と頼んでくる学生は、大学入試の小論文でも担任の先生に書いて貰ったのか?と思わされます。自分の書いたものに対して評価やコメントを伝えるのは良いのですが、「どう書けば良いのですか?」などと聴いてくる学生の態度を教員は許してはいけません。企業でも良い上司なら「どうすれば良いのですか?」と手ぶらで尋ねてくる新人には「お前はどう思うのか持ってこい!」と指導します。

 

知識やスキルは短期間に習得することもできますが、思考や行動様式は短期間には変わりにくいものです。大学は自ら考えて試行錯誤する能力を4年間かけて育成する場のはずですが、それが就職活動の早期化で妨害されている現状も情け無いです。せめて3年生が終わるまでは学業に専念させてやって欲しいものです。影響を受けているのは、一握りの優秀な学生では無く、多くの勉強が必要なふつうの学生なのですから。このままでは恥ずかしくて採用担当者にあわせる顔がなくなります。

 

第246号:採用活動に関する大学との共同研究-6

今年も人事労務管理を研究している大学のゼミ生との共同研究を行いました。本年度のテーマは『インターンシップの効果(フィードバックの有効性)』でした。倫理憲章の設定により、今シーズンは1dayインターンシップが激減し、5日間のものが急増しました。また採用直結の表現も使えなくなりましたので、正直、採用担当者からの関心からインターンシップは視野の外になってきたようですが、学生と企業の意識の違いは相当にあるようです。

 

この研究は、9月から12月にかけて企業と学生の意識調査を、定量調査(アンケート)と定性調査(インタビュー)を行うもので、学生の就職活動と企業の採用活動の認識差を明らかにして、企業に対して学生の目線から提言をしていくものです。本年度は、689名の学生アンケートと66社の企業アンケート分析、そして11社の企業インタビューを行いました。その結果、以下のような傾向が見受けられました。

 

・企業の意図がなくても(採用活動とは関係ないと明言していても)、学生はインターンシップを採用活動の一環と思い込んでいる(期待している)。

・インターンシップは、実施企業への応募意欲向上だけではなく入社意欲向上にも効果があり、その主たる要因は(インターンシップのプログラムよりも)社員との関係性構築である。

・企業はインターンシップの成果についてフィードバック(評価)を伝えているが、学生が求めているのは組織成果ではなく能力・適性に対する個人評価である。(そこまで対処している企業は少ない。)

 

先週、これらの研究内容報告会を開催し、10名ほどの企業人事担当者に対してプレゼンテーションを行い、学生と採用担当者との討議を行いました。その結果、採用担当者からは「目から鱗がおちた」「インターンシップのあり方を見直したい」というコメント戴き、好評のうちに終了いたしました。

 

振り返ってみると、この3ヶ月半の研究は、私の仕事(人事コンサルティング、大学教育)のインターンシップだったと言えるかもしれません。参加した4名の学生達は、当初は知識・経験不足から非常に苦労しており、社会人からは厳しい指摘を貰い、煮詰まった時には喧嘩までしておりました。しかし、そうした時期を乗り越えて学生達は大きく成長し、上記のような成果を出すことができました。

私自身、改めてインターンシップの効果を認めると同時に、これによって学生の能力評価も可能になる(採用活動に自然とつながる)ことを体感できました。人材の育成と評価は本当に苦労しますが、手間をかけただけの成果は必ず得られるものです。翻って、多くの採用担当者のかけている手間は、本当に意味があるものなのか、と考えさせられました。

 

最後に、この研究活動を終えた学生から届いたメールを下記にお伝え致します。ありきたりの文章ですが、きっとこの学生は自分に誇りを持って就職活動に臨むことでしょう。

「中学・高校時代は部活を頑張った!と胸を張って言えたのですが、大学に入ってからは本当に頑張ったものがなく、悶々としていましたが、今回、胸を張って頑張ったと言えるものができました。本当に感謝しております。」

末文になりますが、皆様、良いお年をお迎え下さいませ。

第245号:経団連の加盟企業とは

12月となり企業の採用広報が始まりました。一気に学生と企業が動き出すのを見ていると、日本経済団体連合会(経団連)の影響力はさすがなものだと思わされます。経団連に加盟している企業は1285社(2012年3月現在)で、産業全体から見ればわずかなものですが、この方針に準ずる企業は多いものですね。

 

経団連の定めた倫理憲章を改めて見てみると、その主旨はなかなか良いもので、就職活動をする学生にも是非一読を勧めたいものです。憲法と同じで、存在は知っていても実際に読んだことのある方は少ないでしょう。これを読んで次に思うのは、「こんな良いことを言っている企業は何処なんだ?」という自然な疑問です。ところが、経団連の加盟企業は、不正利用を防止するという理由から、Web上での公開はされておりません。(経団連会館に訪問すれば加盟企業は閲覧できます。)

 

せっかくの倫理憲章を遵守する優良企業を知りたい(是非、入社したい)と、学生が思っても簡単にはわからないのは困ったものです。一方で多くの外資系企業のように、経団連に非加盟の企業は倫理憲章を無視して既に選考を始め、内定を出している企業もありますから、ますます就活学生は疑心暗鬼になります。

 

ところが、つい12月11日、経団連から『「採用選考に関する企業の倫理憲章」の趣旨実現をめざす共同宣言』がなされ、そこにはこの倫理憲章を遵守する企業群(825社)の名前が公開されました(文末URL参照)。こうして見ると優良企業が名を連ねておりますが、マスコミ業界が見当たらないのは残念です。

 

経団連もなかなかやるものですね。こうなると次に対応して戴きたいのは、やはり企業の採用広報時期の問題です。ただでさえ多忙な師走から、期末試験後の春休みに変更して戴きたいものですが、それができないなら、倫理憲章を守っているかどうかの監査と罰則の設定です。これも空しい希望かと思っていましたら、とある業界では内部告発制度を設定していてお互いを監視しあっておりました。江戸時代の五人組を彷彿とさせますが、抜け駆け防止には効果があるのでしょう。

 

何度かこのコラムでもお伝えしたとおり、私個人は、採用広報開始は春休みの始まる2月から、採用選考は夏休みの始まる8月から、というのがベストだと思っています。マスコミが宣伝するように、就職活動が準備不足の学生が多いのなら、その準備がもっともしやすい時期にすべきではないでしょうか?

12月に選挙という暴挙(?)は40年ぶりだそうですが、採用選考開始時期は、立法など必要なく良識ある企業の判断で改善できることなのですから。

 

▼参考URL:「採用選考に関する企業の倫理憲章」の趣旨実現をめざす共同宣言

http://www.keidanren.or.jp/policy/2012/085_sengen.html

第244号:百貨店主催の就活セミナー

つい先日、百貨店(高島屋等)が就職セミナーを開催する報道を目にしました。化粧品会社が就活メーキャップを各大学で展開しているように、リクルートスーツの選び方や着こなし方を指導するのかと思いきや、それだけではなく、内定塾の講師が面接指導まで行い、はては親にまで心得をアドバイスしてくれるとか。いやはやこれは大人の七五三だと思わされました。しかし、冷静に考えてみると、そこには企業の逞しい販売戦略があり、そうした貪欲さから学生が学ぶものもあるかもしれません。

 

世の中はどんどん複雑になってきました。この時期、多くの大学で「業界研究」が開催されていると思いますが、最近の企業活動はますます複雑になってきて、これまでの「業界」という枠組みではなかなか捉えきれなくなってきました。例えば、以下のような例です。

・富士通:コンピュータの開発からシステムの開発(ハードからソフト)へ移行

⇒新卒採用もSEが主流に。(学生の多くはPC&携帯電話が主流と思っている)

・明治ホールディングス:食品・製菓から医薬品が増加

⇒新卒MR採用は、Meiji Seika ファルマへ分社化。

 

まだ新卒採用までは移行しておりませんが、冒頭の百貨店の例のような変わった例もあります。

・クボタ:品質の良い状態で日本の米を香港に輸出販売を開始。

⇒顧客である農機具ユーザーの支援と、海外の米市場の開拓。

・ビックカメラ:三菱電機の電気自動車を販売開始。

⇒来客数が減少している自動車ディーラーよりも増加している家電店へ

・アマゾン:家電製品を格安販売(儲けは書籍で十分だせる)

⇒ビックカメラ同様に来訪者の囲い込み戦略。ネット上はワンストップが有利。

 

これらは百貨店が就職セミナーを始めたように、狙いは顧客の獲得(囲い込み)であり、本業を伸ばすために需要を創造していくマーケティング戦略です。こうした状況がうまく続けば、いずれは採用対象も変わってくることになります。

 

やや複雑な話になりましたが、就職活動をする学生に理解して欲しいのは、業界毎の知識ではなく、各業界・企業がどのような戦略をとって生き残ろうとしているかです。そして、そこで求められるのは、その業界だけの知識では無く、ビジネスを創造していく発想力や行動力です。

 

最近の広告代理店のビジネスは、不特定多数に向けた大規模で大量な広告では成果に結びつかなくなりました。そのため、特定のニーズに絞ったイベント等を開催し、そこに集まった人々に向けた商品を販売する手法が増えてきています。つまり、大企業の採用担当者が就職ナビや大規模合同説明会よりも、大学内セミナーにシフトしてきているのと同じです。

 

大学生諸君が百貨店で就活セミナーを受けながら、そんなことに気づいてくれたら、きっと「今の」企業が求める資質や能力にも気づけることでしょう。こうした中で学生には物事の本質を見る目を養って欲しいと思います。百貨店の志望者が「私は御社で就職情報サービスを立ち上げたいと思います!」と言えば高評価になるかもしれません。

第243号:大学祭ライブのイマドキ

大学祭のシーズンもそろそろ終盤ですね。私もいくつかの大学を回ってきましたが、禁酒が増えたせいか例年よりやや落ち着いている感じがいたします。自分が大学生だった頃と比べると、高校生が非常に多くなってきて、オープンキャンパスの役割も果たしているのでしょうね。授業だけではなく、課外活動もキャンパスライフの大きな魅力ですから。そして、そのサークル活動の様子を見ていると、学生の資質も垣間見ることができます。

 

私は体育会に所属しており、大学祭の頃は試合のトップシーズンだったので、残念ながら自校の大学祭も殆ど見る機会がありませんでした。4年生になって引退後、初めて楽しむことができたのですが、各大学の軽音楽部のライブを回って上手なバンドを見つけるのが好きでした。サザンなどのプロ級の学生バンドも当時は今より多かった気が致します。

 

そんな多くの学生バンドを聴いているうちに、上手なバンドとそうでないバンドの違いに気づくことがありました。それは演奏ではなく、演奏の前のコメントでわかります。あまり上手くないバンドの口上は、こんなものが多かったです。

「今日はちょっとアンプの調子も良くなくて、体調もイマイチなんですが、まあ、とりあえず聞いて下さい・・・。」

照れ臭さもあるのでしょうが、もう演奏はきかずに帰りたくなりますね。反対に、上手なバンドに多いのは、こんな口上です。

「今日はようこそおいで下さいました。全力で演奏しますので、是非、楽しんでいって下さい!」

 

要はその演奏が、自己満足なのか、相手に聴いて貰うものなのか、という意識の違いですね。これは採用面接での、採りたくない学生と採りたくなる学生との違いと同じです。ESでも自己PRでも体験談でも、それは自分の想いを一方的に伝えるのではなく、相手が聴きたいものなのか、相手に聴かせる技術があるのか、という意識の有無です。

 

最近はケイオンが大ブームですので、何処の大学でもバンド活動が盛んなのは個人的には嬉しいことです。楽器もエレクトロニクスの進歩で、楽器が演奏できなくても作曲ができるようになりましたし、歌だって音声合成でコンピュータに歌わせることのできる時代です。誰でも音楽を楽しむことができるようになった反面、内輪の小グループだけでこぢんまりと楽しむサークルが増えた気がします。見知らぬ一般の聴衆に聴いて貰うという意識では無く、サークルメンバー同士だけで演奏と聴衆を入れ替わって盛り上がっているのは、カラオケと同じですね。

 

それと、もう一つ昔の大学バンドと違ってきたのは、ライブ会場に父兄らしき親御さんがチラホラと見かけることです。昔もライブチケットを友人に頼んで買って貰うのはありましたが、流石に親まで巻き込むことはなかったように思います。これも企業の採用選考で親の影がチラホラ浮かぶのと同じことかもしれません。演奏を聴いて「是非、君を採用したい!」とスカウトしたくなるような学生バンドに出会いたいものですが。