春からずっとキャリアセンターの業務が激務のままだ。23年卒(4年生)の就活継続フォロー、24年卒(3年生)の夏インターンシップ派遣選抜&案内、低学年(1~2年生)向けのキャリア教育(起業家教育とあわせて文科省がやれとうるさい)、季節労働だったはずの大学就職課&企業採用担当者が、いつの間にか年中仕事に追われるようになった。通年採用どころか通年多忙&全学年対応だ。
これは壮大な雇用創出で、世界に類を見ない新卒就活産業の肥大化である。しかし、構造的要因(少子化&採用(就職)活動のステルス化)で、そう長く続くとも思われない。現に、何処の大学でも就職セミナーに学生が集まらなくなってきた。業者も大学も受講学生集めに躍起になっている。
しかし、その反動で業界や公的機関では、ますます就活の長期化による仕事減少(節税)防止対策が増える。『今の状況では若者が被害者になる、将来が心配だ』という錦の御旗をたてる。結果、レントシーキング企業の暗躍が終わらない。
*営業の数字があがらないので、営業期間を延ばす(就職活動を長期化させる)のは、某就職企業の常套手段だ。ナビサイトなんて本来、半年で十分なのに年間利用で費用は倍増だ。
もっとも、採用担当者の視点では、ナビサイトの役割は情報提供より、応募者の採用選考プロセス管理が中心になってきている。
⇒ステルス化の原因
こんな「作られた就活」をさせているのなら、採用担当者の「ガクチカは?」という質問に、学生には「就活です!」と回答させたい。昔から言ってきたことだが、冗談ではなくなってきた。今の就活にかける学生の時間を、勉強や部活や社会活動にかけさせたら、若者は飛躍し、「ガクチカ」も充実するだろう。それが本当の就活のはずだ。
『コロナで失われた2年間で学生に「ガクチカ」を求めるのは酷だ』という耳触りの良い業界人の言葉もよくきく。しかし、だからこそ、環境のせいにする若者と、そうでない若者の差が明確にわかる。
経営学における環境とは、自分では如何ともし難いもののことだが、そこでどうするかを考えるのが経営だ。心理学的には最終的にはfight-or-flight (または立ちすくんで動けなくなる自己防衛)だ。環境は変えられないので、どうするか、どうしようもないなら逃げる、それを若者に求めるのを、高齢者の説教というのか。
しかし、それは大学キャリアセンターや企業採用担当者にもいえることだ。いつまでもマスク社会に付和雷同して「仕事アリバイ」を作り続ければ、いずれは「ゆでガエル」だ。
若者に期待していることを、大人が言動で示せなければ世界はメルトダウンする、大人が本当に高齢者になり若者ではなくなる。危機の今は、「アリバイ作り」の仕事から脱却する最大の機会のはずだ。