第416号:通年採用の本当の意味

*これまでダイヤモンドHR社のコラムとして書いてきましたが、今回より個人的に気楽に幅広く書きます。(^0^)

期末試験の採点が大詰めだ。今年度は企業が採用活動を秋学期の授業期間中にまともにぶつけてきたので、履修放棄の学生が急増した。既にメディアでも騒がれ始めているが、規制廃止した以上、これはどうしようもなく、今後も益々、盛んになるだろう。慌てて「1dayインターンシップは遺憾」とか言い出したって、何を今更だ。

企業側にも居たし、大学側にも居たし、いまは中間の立場(やや大学寄りというより学生寄りかな)にいるので双方の言い分はわかる。一番の被害者は学生のはずなのだが、中には加害者同様に内定した企業のエージェントになっていたりして益々カオスだ。

3年生で既に内定を得た者がだんだん増えて来た(就活を止めたわけではない)一方で、「これから就活始めるんですが、何から始めたら良いですか?」と相談に来る者も多い。

*「企業が絞れない」という学生相談が多いが、聴いてみると絞るほど多く回っていないのに「絞る」という発想(日本語?)が変だ。今の学生は、最初から「絞って」無駄をしないようにと考えてるね。こういう学生は「無駄の効用」を知らずに他者に聴いてばかりだから、いつまでたっても無駄が続く。

多くの大学を見ていると、企業は明らかに高偏差値の大学からアプローチしてくる。それは世界でも当たり前のことだ。

企業が通年採用にする一つの結果(「狙い」とまではいえないだろう)は「採用期間の平準化」だ。経団連の企業が言うように、優秀な学生を早期に囲い込まないと外資系に奪われる。そこに決着が付いたら、一般採用を始め、最終人数調整の採用に向かう(採用活動で重要なのは、何時始めるかより、何時終われるか、なのだが)。

結果、大手企業の新卒採用は、五月雨式(文字通り5月頃まで?笑)続くことになりそうだ。影響を受ける中小企業は、その前後で必死に動くだろう。(そうか、それでこの冬は晴れ間が少ないのか。笑)

これから「通年採用」の本当の意味がわかってくるだろう。

それは、1社が1年中、採用活動をしているという意味ではなく、世の中の企業の何処かが常に採用活動をしているということだ。市場全体からみれば1年中オープンしているということだが、プレーヤーは時期によって変わる。(1年中やっているのは黒に近い灰色の企業だ。笑)

学生側からすれば、常に誰かが就活をしていることになる。

学生にとって悩ましいのは、情報の非対称性の激しい労働市場で、何時始めて何時止めるかを常に自分で考えて決めなければならないことだ。中高大学受験と違って、周りが決めてはくれない。それが「自分の頭で考える」ということだ。

時間が経てばわかるだろう、新卒一括採用の学生にとっての最大のメリットは、企業の採用活動時期(ゲートの開く時)がわかることだ。中途採用の様に、何時ゲートが開くかわからない採用市場では、エージェント(人材紹介)に頼る人が増えてくる。そうして、米国型の通年採用労働市場になっていく。

ただ、本当にこんな経済学的な理論で動くだろうか?
法学的にあるべき姿を取り戻すことができるだろうか?
政府は社会学的に無責任に傍観するだけか?

そして採点は続く・・・。