第409号:「サクラ」の学生を募った中小企業の説明会

季節外れのサクラが咲いたようですね。東京都の公費を使った中小企業の就職説明会で、主催者側から報酬を受け取った大学生が「サクラ」として参加したという報道がありました。このニュースを聞いたとき、業者への憤りと同時に、まあそれもあるだろうなあという厭世観も感じました。というのは、こうした事例は過去にもありましたから。

報道(朝日新聞デジタル、下記URL参照)によると、大学生が約3時間の就職説明会に参加することで5000円の報酬を得ることができ、友人を誘うと+αの報酬も手にすることができるとのことです。これに応じて参加した学生の詳細は不明ですが、以下のようなタイプが考えられます。

1.就活する気はなく、単に報酬に惹かれてきた学生

2.完全に就活を終えた学生(他企業内定者)

3.就活時期ではない学生(低学年者)

4.就活をしていない進学希望者

5.就活はしていてもその業界に全く関心のない学生

上記は「サクラ」度合い順といいますか、悪質な順番に並べました。1~3は本来、主催者が募集段階で排除しなければならない層です。4~5は、場合によってはまともな応募者になりうる可能性もあるので、まあ許せる気もします。進学や他業界志望者を、説得して自社志望者にするのは採用担当者の大事な仕事ですから。

今回の事件は、クライアント(参加企業)が費用を出したのではなく、公費(東京都)が負担したようなので、クライアントからのチェックも甘かったかもしれません。企業採用担当者が自社費用で会社説明会に参加する際は、必ず主催者の集客力をチェックしますから。「ネットで募集します」というような営業トークだけでは信じられないので、その業者がターゲットとなる学生層明確なパイプをもっているかを確認するはずです(中小企業の採用担当者だとそこまで余裕はないかもしれませんが)。

私自身、以前「サクラ」学生から直接話しを聴いたことがあります。その学生はいわゆる「逆求人」のイベントで、主催企業から「良い学生が集まっていないので参加して欲しい」と頼まれ、既に内定を持っていて就活を終えているにもかかわらず求職者として参加していました。そのイベントも今回の事件と同じく、クライアントは中小企業が中心で、「中小ベンチャー企業志望の優秀な学生との出会いの場です!」という触れ込みでした。ちなみにこのイベントには「サクラ」ではない学生の方が多かったですが、その学生達は本当に優秀だったようで、結果的に皆、大企業に内定してしまいました。

内定辞退者予測サービス事件に続いて、またしても業界のコンプライアンスが問われる事件ですが、業者にとっても学生を集客するのが本当に困難な時代になったのでしょう。少子化がますます進むことで就職市場の構造は変わり、天災のように「これまでに経験の無い様な」状況になります。採用担当者も業者も必死に知恵を縛らなければならない時代ですが、通年採用やジョブ型雇用が進む中、「騙される奴が悪い」というグローバル指向には進んで欲しくありません。

参考URL:「「サクラ」の学生募り中小企業の説明会」2019/10/18(朝日新聞デジタル)

https://www.asahi.com/articles/ASMBL5CTVMBLUTIL040.html?iref=pc_ss_date