夏休みに入り、学生達は海に山に繰り出し、部活動やサークルの夏合宿のシーズンです。高原の避暑地に行くと、どこからともなくクラシック演奏のしらべが流れてきて、音楽系部活の練習だなあ、とわかります。体育会学生は採用担当者に人気ですが、オーケストラ(オケ)の部活経験者もわりと人気があります。それは体育会同様、企業での社会活動との共通点が多いからです。
経験者の方には「オケは体育会だ!」という言葉は当たり前のことでしょう。しかし、クラシック音楽とはまったく縁の無かった採用担当者にとっては、上品な趣味としか見えていないことがあります。私もたまたま大学時代にオケ部の親友に教えてもらって、初めて理解しました。以下のような点で、オケの経験は、ちゃんとした社会人としての能力として評価出来るのです。
1.体調(健康)管理
仕事で休まないのがなにより一番です。これは音楽学部の学生全般的にも言えることで、音楽というとひ弱に思われることがありますが、意外とそうではありません。かつて採用した音楽学部のおしとやかな事務職女性は「体調が悪くて・・・」という理由で休んだことがありませんでした。オケでは一人が休むと部員全体に影響を及ぼします。自分一人だけの都合が組織に迷惑をかけることを、身をもって知っているのです。ちなみに、体力で自信のあった運動部の私が、健康診断でオケ部の友人の肺活量には完敗でした。
2.期日までに課題をやり、他者に評価される。
ケイオンのように(と一括りにはできませんが)自分たちが楽しければ良い、良かったら聞いて下さい、というサークルと違うところです。期日までに指定された課題を達成しなければなりませんし、一夜漬けはききませんので、コツコツと着実な努力を求められるところも仕事と同じです。ちなみに、ソリスト(声楽、ピアノ、バイオリン)の場合は、ちょっとわがままだったりしますが。
3.演奏以外の庶務
演奏だけでなく、演奏をするための関連部署との折衝等(高校レベルだと顧問の先生等が担うことも多いですが、大学では学生が自主的に行うのが普通)を行うこともオケ部の学生が人気の理由です。上級生になれば、部員全体のスケジュール管理に指導、会場費用等の予算管理も行い、社会人とのコミュニケーション(交渉)もあります。演奏ではなく、こうした裏方の作業の方が、募集職種によっては、意外と高評価になったりします。
ちょうど高校野球の決勝が終わったところですが、甲子園での応援演奏を見ていてもオケ(野球の応援は弦楽器のない吹奏楽)経験者の体力と根性とチームワークがわかりますね。しかし、その高校時代のハードな体験の反動か、大学で継続活動しない学生も多いです。自己PRの就職相談で、「頑張ったことは、高校時代のオケ部のことでも良いですか?」との質問をよく受けます。
採用担当者としては、大学時代に頑張ったことを聴きたがるものですが、運良くオーケストラの経験がある採用担当者にぶつかったなら、きっと目を細めて耳を傾けてくれることでしょう。でも、その高校時代の経験を、大学生活にどう活かしているかを語ることもお忘れなく。