この22日に経団連の「採用と大学教育の未来に関する産学協議会」から「中間とりまとめと共同提言」が発表され、昨年の会長による採用ルール見直しの全貌と言いますか、いよいよ本体が姿を現わしてきました。
経営学を学んだ方には釈迦に説法ですが、新卒採用という方式は経営学者アベグレンが発見した「終身雇用」「年功序列」という雇用慣行から生まれたものです。つまり、経団連会長の昨年からの発言の真意は、これまでの採用ルールのみの見直しとは次元が異なり、戦後続いてきた日本の人事制度を見直す改革の鏑矢だったわけです。これは人事部に焦点を合わせると、人事部の解体ともいえます。日本の企業に多く見られる人事部中心採用から、欧米型の部門別(職種別)採用への以降です。
詳しくは、末文に揚げた経団連発表直後にコメントされた八代尚広昭和大学教授のコラムでご理解戴けます。八代尚広教授が最初に書かれた人事関係の著書は「人事部はもういらない」(1998)という刺激的なものでしたが、今回の経団連発表もこの路線に沿っている気が致します。
ちなみに、私はこの著作が出版された直後、八代教授にお話を伺ったところ、この本のタイトルは出版社が命名したもので、八代教授の本意ではなかったそうです。もっとも、当時人事部だった私がこの著作を読んだとき、人事部は不要ではなく、もっとガンバレ!と言われているように感じました。
この人事部の解体ということは、具体的に以下のような現象です。
・新卒採用から中途(通年)採用への移行
・自社新入社員研修から外部研修業者への移行
・採用権限の人事部から各部門(職種)への移行
実はこの現象を、私は過去に何度が見ています。ひとつはバブル崩壊時の1990年頃で、多くの企業が採用を控えたため、採用担当者が異動もしくは退職しました。もうひとつは、日本で長年事業をしてきた某外資系大企業が人事部を改革した時です。この企業は当初中途採用中心でしたが、業容が拡大するに従い、日本に工場を作り、日本型雇用に移行して新卒採用を始めました。しかし、トップが変わり業績改善のために人事部員を入れ替え、抜本的に人事制度と採用活動を見直しました。
こうした現象が日本企業の何処まで広がるかはわかりませんが、経団連が舵を切ったことで今後は様々な影響が出てくるでしょう。各企業採用担当者にとっては自分のキャリアに関わりますので、この提言の最終発表と社会の受け止め方には注視せざるを得なくなります。
▼参考URL:
「新卒一括採用の見直しだけでは年功序列の日本型雇用が変わらない理由」2019/4/23 (八代尚広氏:ダイヤモンドオンライン)
https://diamond.jp/articles/-/200661
「採用と大学教育の未来に関する産学協議会 中間とりまとめと共同提言」2019/4/22 (経団連)
https://www.keidanren.or.jp/policy/2019/037.html