新年度に入り、大学が一気に活気に溢れてきたのと同様に、企業の採用活動も本格的になってきました。経団連採用ルールが存在していても(存在しているから?)、企業が学生と直接にコンタクトする「ダイレクト・リクルーティング」はますます進んでいます。その代表的な手法がリクルーターの活用ですが、そうした情勢の中で残念な「就活セクハラ」が発生し、日本を代表する企業から逮捕者が出てしまいました。
正直、このようなテーマを書くのは気が重いのですが、ことの重大性と現在の社会環境を考えると触れておかなければならないと思います。というのは、今回の大手ゼネコンの事件では(報道で見る限り)企業側には責任は無く、暴走した社員個人の責任ですが、上記のような学生の就活状況ではいつまた起きても不思議ではありませんし、こうした状況下では企業採用担当者の社会的責任を考えざるを得ないからです。
リクルーターを使う企業であれば、学生とコンタクトする際のルールを決めて厳守させることは当然ですし、更に学生に対しても自社のリクルーターの運用について自社の採用サイトで公開すべきです。リクルーターを使わない企業であってもその旨を明示して、仮に暴走社員が不適切なリクルーター活動をした場合は個人責任であることを明確にしておくべきでしょう。しかしながら、こうした企業の動きが少ないのは、そもそもリクルーターというのは公開メディアを使わない「選択的秘匿性の採用手法」という宿命があるからで、暴走社員にとっては最高の武器になりえます。
そのため当面の方策としては、大学での就職ガイダンスの中で学生に注意喚起することしかないでしょう。私も女子大学でキャリアドバイザーを行っておりますが、見知らぬリクルーターや、最近増えている新卒人材紹介企業からのアプローチには注意するように伝えています。
そもそも採用活動というものは学生と密室で個別にコンタクトする機会が多く、セクハラが起きやすい業務です。政治家ではありませんが、日頃まともな社員がつい調子に乗って不適切な言動をおこしがちです。それは、平成に入って生まれた「会いに行けるアイドル」のビジネスモデルとも似ています。偶像で手の届かない存在であったアイドルを、会える話せる握手ができるようにして大量生産したことは、巨大なビジネスになりましたが、一方で不祥事を発生させています。しかも今回の様にいつも曖昧に処理されています。
それは主催者の意図するところではない、「会いに行けるアイドル」には恋人禁止等のルールがある、と言い訳しても、起こるべくして起きた事件に未成年を扱う大人が無責任とはいえないでしょう。法律上の「未必の故意」とまでは言えないにしても社会的責任と見識が問われるべきだと思います。
企業のリーダーたる経団連はすぐに対処を考えるべきだと思います。採用解禁日などよりこちらの方が緊急の課題ではないでしょうか。先日、野党から提出された「セクハラ防止法案」に、この就活セクハラについても盛り込まれるとのニュースが入ってきましたので注視しておきたいと思います。