平成最後の年の瀬、皆様お疲れさまでした。今年も大学を揺るがす様々な出来事がありましたが、私も体育会出身者だけにスポーツの不祥事が特に記憶に残っています。そんな年末、法政大学の体育会本部の学生から講演依頼がありました。新たに幹部になる学生(約100名)にリーダーシップについて話して欲しいということで、喜んで引き受けました。
今回の講話の趣旨は以下の通りです。
1.スポーツの価値が見直される時代(デジタル全盛時代の優位性)
2.アカデミック・アスリートのすすめ(学問と運動の融合)
3.コミュニケーション力(指導力と組織運営力)
4.組織を動かす実践知(部員のモラルを高める知見)
5.キャリアモデル(より高みを目指すために)
リーダーシップ論は、組織の長であるリーダー(役割)の心得という旧来の視点から、リーダーシップ(主体性・影響力)とは組織メンバー全員が持つべきもの、発揮するものとなってきています。しかもリーダーの役割やリーダーシップとは自然発生するものではなく、機会と努力があって開発されるものであるから、講演や研修で学ぶ必要があるのですね。これは企業でも全く同じです。
体育会の学生は、そうしたことを実戦の場で体験しているので、その持論を理論化するのは意外と楽です。多くの学生達が自分達の体験してきたことの意義に気付いておりました。それによって、彼らは自分自身の経験に自信を持ち、経験を言語化することによって他者を指導できるようになります。
更に、新幹部は3年生で就活も控えているので、以下のような体育会出身者が企業人事部に好まれる理由についても話しました。1年生から4年生までの組織だった運営経験は、企業での仕事の縮図であり、社会に出てから経験することを学生時代に経験しているのです。しかし、当の学生達がこれらに意外と気付いていなくて勿体ない点です。
1年時:組織のルール、協調性、行動の素直さ迅速さ
2年時:上級生の自覚と責任、後輩指導力
3年時:最前線の現場での判断力、行動力、達観力
4年時:組織統率力、モチベーション育成力、人生哲学
これまでの体育会は、好きな運動だけやっていれば良い、という風潮もありました。スポーツ推薦で入学し、プロ選手を目指している学生であっても、人生百年間、現役でスポーツ選手であり続けることはできません。今回、講演を依頼してきた体育会幹部の学生はこんなことを言っていました。
「尊敬していた有名選手の先輩が、引退してからガッカリするような人生を送っているのです。そうしたことにならないように、体育会学生達にはもっと学んで欲しい。」
とても素晴らしい視点ですね。学生自身が主体的にこうした発言と行動をとるのは、体育会学生のあるべき姿だと思います。オリンピックも近くなり、来年は体育会学生の良いニュースをたくさん知りたいものですね。末文になりますが、どうぞ皆様も良いお年をお迎え下さい。