入試の季節が近づいてきました。いよいよ2018年問題が数字として現れてくるのでしょう。この問題は18歳人口が限られているので、年々厳しい結果が出てくることは間違いありません。企業側には採用活動の未達という現実への対処が求められるので、新卒一括採用の本格的な見直しになるでしょう。そんな背景の中で、放送大学の運営は参考になるかと思われます。
新卒一括採用の効用については賛否両論ありますが、18歳人口の減少で若者労働力が供給面から破綻してくることは確実なので、将来性が低いことには是非もありません。日本の労働力問題と同じで、女性・高齢者・外国人に期待するように、大学は共学化、社会人入学、留学生募集等、対策を講じてきましたが、この中では社会人入学(リカレント教育)がまだ手薄のように思います。
それを私が肌身で感じたのは、放送大学でのキャリア教育の授業からです。私は7年前から放送大学の非常勤講師として面接授業を担当してきました。内容は教育社会学やキャリア教育に関するものが中心ですが、私のクラスを受講する社会人大学生のレベルが年々、向上しているのです。大衆化の進む一般の大学では、逆に年々学力の低下を感じています。
例えば私の担当科目の「キャリアデザインの基礎知識」では、当初はフリーターの社会人学生、就労経験がない若者、現役をリタイアして趣味で学ぶ高齢者が多く、カルチャースクールのような雰囲気でした。ところが最近は、大学や公的機関の就労支援者、企業の人事採用担当者等の現場で実践しているミドルクラスの方々が増えてきました。今年度は約40名の受講生のうち、キャリアコンサルタントの有資格者が10名以上おり驚きました。
私のシラバスで想定していた初学者の内容を越える具体的で実戦的な質問が飛び交い、キャリアコンサルタントやキャリア教育担当者の養成講座のようになってきました。これはこれで有意義な授業になっているのですが、こうなるとカリキュラムも基礎編・応用編・実践編等に構成しなおさなければ多様なニーズに十分にこたえられません。ちなみに放送大学ではキャリア科目が少なく、私の講義は抽選になっていると最近、知りました。
こうしたハイレベルの社会人学生の学習動機は、現状の仕事を向上させるため「越境学習」に来ている方が多かったので、転職や就職を考えているわけではありません(放送大学にはキャリアセンター等の機能もありません)。しかし、これだけ有能な社会人学生が増えてきたのなら、しかも在学生にキャリア系実践家が居るのなら、就職相談員は内部調達でピアサポートも可能でしょう。社会人の学び直し(リカレント教育)が単なるカルチャースクールではなく、真の社会人キャリア教育の基盤になれば、放送大学は質も量も一般大学を凌駕する大学になるかもしれません。
放送大学は元々、反転授業対応(通信教育)で、アクティブラーニングにも対応(面接授業)しており、かつ一般の大学にない敷居の低さで9万人の学生(学部+修士)を集めています。入試改革、授業改革、就労支援等、2018年問題の対策に、多くのヒントになるのではないでしょうか。