「この秋は大学の就職セミナーに学生の集まりが今ひとつです。」と、先日、大学就職課職員の方から伺いました。昨年までは100人規模で集まった人気講座に数名の申込しかない日があるとか。この大学だけの現象なのかは定かではありませんが、一葉落ちて天下の秋を知るように、2018年問題を控えて就職指導のあり方もそろそろ見直されるべき時期なのかもしれません。
最近の学生を見ているとだいぶ忙しそうです。大学祭のシーズンのせいかと思いきや、主力の3年生は就活で忙しかったり、文科省ご指導の学業重視政策で大学祭そのものが縮小になったりしているところもあるそうです。確かに、例年ではこの時期にあまり見られなかった平日インターンシップが増え、学内では入ゼミ生募集を兼ねたオープンゼミで授業を欠席する学生も目立ってきました。
こうした中で学生の就職指導を進めるには、大学教育との融合を本気で図るべき時期になってきたのかもしれません。10年ほど前から登場・発展してきた多種多様なキャリア教育は、本来の大学教育と就職指導をつなぐ役割を果たしてきたと思います。それらは「社会人基礎力」を代表にするように、当初は大学外部からの要請が強かったせいか、本来の大学教育に「ネジ止め」されてきましたが、これからは「融合」することによって就職指導の効率化が図れるのではないでしょうか。その視点から、私はキャリア教育について以下の三つの定義をもっています。
1.生徒から学生へ導くもの
正解のある問題を効率的に解く力を求められた高校の学習方法から、正解のない問題に取り組む意思、自ら問いを設定して解き明かす力を身につける大学の学び方の違いを指導・演習すること。
2.大学の学びを社会に向けて応用する
研究活動の成果を社会に展開する応用力と発信力を身につけ、大学低学年次に身につけた資質を更に伸ばす。PBL(Project Based Learning)を用いた産学連携型授業で社会の評価を受けながら実践する。
3.学問を統合して理解するもの
大学教育には高学年になり専門科目が中心になるに従い、幅広い視野を忘れがちな構造的宿命がある。その学際領域の学びを育むために各学部の知見を得た高学年次に学部横断の公開授業を行う。この学習からいずれの学問にも共通の「アカデミックスキル」を気付かせ、大学の学びの汎用性を認識させる。
上述の三つの定義を総じて「キャリア教育とは大学と社会をつなぐもの」といえましょう。バレエに例えれば、本来の大学教育はクラシックバレエ的で、世俗の事象や経験をメタ認知化(言語化・理論化・法則化)して天上をめざす伝統的学問でしたが、その後にモダンバレエ的な地に足を着けたフィールドワークが登場してきました。前者は理想を求め続ける故に天から降りられず、後者は多様で実践的なので地上から離れられません。この天に上がった概念を地上に戻す(有効活用・応用する)のが、現代の実践知型キャリア教育(PBL・インターンシップ等)ではないかと思います。そんな形で発展すれば、就職指導の形もこれから新たな形態に変わっていくのではないでしょうか。
▼参考URL:学園祭 縮小傾向…「就活熱」「学業重視」 2017/10/27 (毎日新聞)