エントリーシートや面接では、時々、これは何を知りたいんだろう?と思わされる質問を見かけることがあります。最近、学生から聞いたのは「自主性と主体性の違い」でした。これを聞いて応募者の何を知りたいんだろう?これを聞いたところで実証できるのだろうか?と思いました。
とある企業コンサルタントの論では、以下の様に述べられています。
「自主性」⇒予め明確にされている課題を(他者に言われなくても)進んでやること。
「主体性」⇒目標が明確でなくても自分で考え判断して取り組むこと。
上記では目標設定の有無を判断基準にしています。となると、自主性より主体性の方が上位のようですね。説によっては、自主性が基本で主体性が応用とも述べられています(自主性を身につけた人が主体性を発揮できる等)。
さて、この論に従うとして、それをそのまま面接で学生に問うことで何がわかるでしょうか?経営学のリーダーシップ論の期末試験ならともかく、そうしたピンポイントの質問は単なる知識の有無で、採用担当者の自己満足になるおそれがあります。面接の前にちょっと本屋で見知って受け売り回答できれば、採用担当者の覚えはめでたく「ういやつじゃ!」と(一次選考は)合格するかもしれません。
しかし、結局それは採用担当者が好きなフレーズを知っているかどうかの評価に過ぎません。本当に自主性や主体性を持っているかを見極めるのなら、そうした実績を聞き出すコンピテンシー面接を行う、発揮能力を見るグループワークを行う等で測定するべきでしょう。採用担当者が評価軸の定義(基準)に「自主性」と「主体性」をもつのはなんら問題ありません。しかし、その基準をどんな選考手法で測定するかをもってなければ意味がありません。
誰でも、知ったばかりの知識は使いたくなるものです。例えば、コーチングを習った面接者は「あなたの今の気分は何色ですか?」と聞いて、その色の説明をさせることがあります。これは自己理解のワークで定番の質問で、緊張しやすい応募者をほぐしてみるとか、発想力をみるとか、用意してない回答を見たい等の意図をもってなされるのなら良いですが、そうでなければ単なる面接者の自己満足になってしまいます。そして、一番、恐ろしいのは採用担当者ご自身がそこに気づいていないことです。
まあ現実、こんな問題に直面したら、正解を当てるのではなく「曖昧ですが~」「私見ですが~」と持論を展開できれば良いと思います。説教が好きな採用担当者はきっと解説してくれるので、その反応を見ながら「なるほど~」と共感を見せればきっと結果もついてくることでしょう。そうした対人スキルは社会でも有用ですし、大学の期末試験でヤマが外れても諦めずに発揮して欲しい能力です。