第348号:似て非なる入試改革と採用改革の陰で

4月になり、新入生&新学期の授業で大学は活気づいています。今年も多くの若者が大学の門をくぐりましたが、皆様の大学では如何でしょうか?少し前の報道の大学受験者数ランキングで皆様もご覧になったでしょうが、なんと法政が全国2位になって教員である私も驚きました。その理由はやはり、最近増えている入試改革(入試方法の多様化)が大きいように思います。それは企業の採用改革と似ていて、入り口を工夫して母集団を増やすことですね。

 

企業がマスメディア採用からダイレクトリクルーティングという多様な採用活動を展開し始めたのは、大きくて(志望動機の)薄い集団より、小さくても濃い集団を狙ってのことです。応募者の指向性に合わせて受験スタイルを変えて志望動機を高めるという手法は似ていますが、企業では応募者からの受験料収入がありませんから、いたずらに規模を大きくできないのは異なるところです。

 

こうした入試改革と採用改革が同時期に行われている背景にあるのは少子化で、構造的に売り手市場が続きますから、ますます志願者に合わせた入試・採用改革は行われるでしょう。しかし、それは結局限られたパイの奪い合いに過ぎません。法政のような都市圏のメガ大学が受験者を集めて派手に取り上げられる陰で、逆に地方・郊外の小規模大学では逆に受験者・入学者の減少が起きています。そしてこのままでは、この問題(大学間学生数格差)はますます激しくなり、経営がたちいかなくなる大学も増えてくるでしょう。

 

結局、大学も企業も、次の課題は、奪い合いから育成に向かうことです。大学であれば、若者人口は減りますが、社会人・留学生を迎える施策は多くの大学で成されてきました。これをもっと本格的に進めなければなりません。しかし、社会(企業)から大学に移った教員から見ると、大学の授業は良いものが多いのですが、良さを伝える工夫はまだまだです。そもそも教員がその良さに気付いていない方が多いですし、そういったことに無関心の教員も多いです。

企業にとっても、厳選採用ではもたなくなってくるでしょう。次はそこそこの人材をできるだけ早くデキル人材に変えていく能力開発が重要になってきています。しかし、企業の多くはバブル崩壊後、採用担当者や能力開発担当者の人員削減を行ってきたので、自社で育成する技術を忘れかけている企業が増えてきています。

 

手前味噌ながら法政の田中総長もそこに気付いており、受験者増をよろこびながらも「今は拡大路線ではなく、教育の質を高める時だ」と述べています。

人類の歴史が、縄文(狩猟)文化から弥生(農耕)文化に変わっていったように、持続可能な社会にしたいなら、資源は奪うものから育てるものに変えていかなければなりません。青森県の三内丸山遺跡の発掘が進んでいますが、この遺跡の脅威の発見は縄文時代でありながら農耕もしていたことです。日本人はこうしたハイブリッドが得意なのかもしれません。そうした想いを新たに大学も企業も新年度を頑張っていきたいものです。

 

▼参考URL:「法政、なぜ関東の志願者トップ 和服総長の勝利宣言」(日経スタイル)

http://style.nikkei.com/article/DGXMZO14950530V00C17A4000000

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