3月も残り少なくなり、大学内就職セミナーもひと休みで、卒業式と入学式のシーズンですね。私事ながら私も年初に修士論文を提出し、先日修了が認められて大学卒業式に学生として出席できることになりました。研究テーマは、大学と企業のミスマッチの検証とその対策です。大学の教育改革と企業の採用改革を同時に行う提言ですが、これは大学を「メディア化」することです。
大学メディア論は、東京大学の社会学者である吉見教授が提言するものです。私はこの論を読んだ時、これを大学キャリア教育として応用してみようと思いつき、キャリア教育の定義を「大学と社会をつなげるもの」と決めました。それは社会の出来事を大学の各学問の知見を使って解きほぐし、広く社会に伝える役割です。その代表的な手段がビデオ教材を使った授業で、この5年間で10本の業界・企業を扱ってきました。
ビデオ教材そのものは就職セミナーでも使えるものですが、授業として使う場合は産業理解だけではなく、ビデオ教材を正課授業との関わりを考えさせてディスカッションをしたり、レポートを書かせたりする点です。そうした過程を経て、学生として必須の「メモを取る」「不明な点を考え討議する」「思いついたことをプレゼンテーションやレポートにまとめる」「締め切りまでに完成させる」ということを指導してきました。
こうした効果は、大学内就職セミナーを見ていてハッキリわかりました。上記授業を受講していた学生は、採用担当者の話しが終わって質疑応答の時間になると、真っ先に手を上げて深い質問を投げかけていました。一方で講義型の受け身の授業ばかり受けてきたと思われる学生は、セミナー中もメモをとらず聴きっぱなしで、質疑応答でも無言であったりレベルの低い質問(採用選考や待遇面に関するもの等)しか思いつきません。
そして今年度は更に進め、チーム分けした学生達にビデオ教材のテーマ設定から企業選択・訪問・撮影交渉まで体験させてみたところ、見事に国際航空物流企業(ANA Cargo社)の了解を取り付けて最新作を仕上げることができました。最初は上手くいくか心配しましたが杞憂でした。大任を与えられた学生には自主性がうまれ、判断力も責任力もつきました。来年度は規模を広げて多くの学生にインターンシップとして経験させ、その成果物を他大学とも提供できれば大学メディア化は更に広がると思います。
これまで学生に会社案内やWebを作らせる企業インターンシップは定番プログラムとしてありましたが、企画から更にメディア化、授業化まで行うものはなかったのではないかと思います。もしこうした学生発の成果物が蓄積され、大学というメディアで授業や就職セミナーで共有できれば、春の大学内説明会の風景も変わってくるかもしれませんね。
▼参考URL:『大学とは何か 』吉見 俊哉 2011年(岩波新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/400431318X/
▼参考URL:法政大学産学連携ビデオ教材新作発表会(3月29日)