第322号:期末試験答案とエントリーシートの共通点-2

もうひとつ期末試験もエントリーシートも選考基準で同じだと思う点をあげます。それは採用選考基準が教員(企業)毎に異なるということです。大学は正解のない課題に取り組む場ですが、そうした考えが身に付いていない学生には悩ましいことでしょう。言い換えれば、大学の試験に対処する知見があれば、就職活動での選考にも対処できるということです。

前回あげたエントリーシートの書き方については、比較的どんな科目や企業でも共通だと思いますが、それは誰でも求められる基本的なスキルだからです。これらは単位認定(選考合格)のための必要条件でありますが、(私の場合は)これだけでは十分ではありません。設問に対する回答が、文量も形式も整っていたとしても、表現されている内容が題意とズレている場合には合格にはできません。例えば、試験のヤマが外れたら「カレーライスの作り方」を丁寧に書けば単位が貰えるという都市伝説は私には通用しません。

しかし、選考基準が教員(企業)によって異なることは当然にありえます。以下のような視点をもった教員や採用担当者なら、カレーライスの作り方での答案でも合格にするかもしれません。

・論理的な視点が身に付いている   ⇒能力重視

・諦めずに挑戦する意欲がある            ⇒意欲重視

・この学生は前回の成績が優秀だ   ⇒実績重視

・この学生は日頃から真面目だ            ⇒態度重視

・この学生は発想がユニークだ            ⇒個性重視

・単位が取れないと可哀想だ              ⇒情実重視

こうした成績評価をするのはアンフェアですが、皆さんも大学時代に理由もわからずに良い成績が取れたり、逆に何故不合格になったか理解に苦しんだりしたことはありませんでしたか?企業の採用担当者にもそうしたことがあります。例えば、有名大学の応募者のエントリーシートはスルーパスにしたり、縁故応募者の場合などには見て見ぬふりをしたりして合格させることがあります。但しそれは初期選考だけで、最終的に内定することは滅多にないと思いますが。

というわけで、就活でエントリーシートを出して(これは面接でも同じだと思いますが)、通ったり落ちたりする現象がおきますが、それは普通のことで、学生側の理由だけではありません。

もし、いくら回っても全然、選考を通らないならば、それはきっと必要条件をクリアしていない学生側に理由があります。そこを改善しないで数多く回っても結果は変わらないでしょう。逆に、いくつも内定を取る学生は、こうした必要かつ十分な条件を満たしているからでしょう。

こうした現象は不合理なように見えますし、学生には納得できないことかもしれません。しかし、それは社会人(採用担当者)も同じです。社会で働いていると「正解」がある方が少ないですね。より良い答えを考えながら、模索して生きていく。大学の試験はそうした点で採用選考と同じだと思うのです。

第321号:期末試験答案とエントリーシートの共通点

期末試験答案の採点も佳境を迎えているところですが、試験の終わった学生(3年生)からはエントリーシート(ES)を見て欲しいという相談も増えてきています。企業(採用担当)出身のキャリア教育担当教員としては、いつまでも採点が終わりませんが、無数に答案を見ていると期末試験もESも選考基準は同じだと思わされます。

私が授業で学生に口を酸っぱくして伝えているショート・レポートや答案の書き方の注意点は難易度順に以下の通りです。こうした書き方は、中高時代に習っていないのか、マークシート中心の大学受験では必要なかったのかわかりませんが、出来ていない学生が相当数にのぼります。

1.量があること(答案に空白エリアを作らない)

2.見やすいこと(誤字脱字は勿論、私の授業では鉛筆は不可)

3.漢字を使うこと(文字数を圧縮でき、知性も伝わる)

4.自分の意見(学んだこと)があること(聴いたまま書かない)

5.事実+意見であること(単純な感想を書かない)

6.前向きであること(否定的表現を語彙でカバーする)

7.品格があること(読者の心情を意識した書き方)

そして、実際に答案(ES)の採点をしていると、以下のような気持ちにさせられます。

1.結論から書け

⇒最初の2~3行で先まで読む気がおきるか。採用担当者ならすぐにNG判定で読むのを

やめられますが、大学試験では先が面白くないと判断できても読まねばなりません。

2.問われていることを書け

⇒山が外れてとにかく自分の覚えていることを書くのは、諦めない姿勢として評価出来ますが、

それが設問とどのように関わるかという意味づけ(論理構築)がないとNGです。

3.読める字で書け

⇒残念ながら私は考古学者ではありません(象形文字は読めない)。

最近、ますます読みにくいクセ字・悪筆が増えています。

「採点」より「解読」に時間がかかり苦労させられています。

こうしたライティング・スキルは大学でも教えるべきことなのでしょうが、如何に多くの学生が「読まれる」こと意識した文章を書いていないか、教えられていないかがわかります。今はちょうどシラバス作成の時期でもありますので、上記内容は「評価基準」に書いておこうかと真剣に検討中です。