第304号:デキル採用担当者は我が道を行く

ワークスアプリケーションズ、キヤノンマーケティングジャパン、ネスレ日本、ロート製薬、岩波書店、ドワンゴ、三幸製菓・・・これらの企業の共通点がおわかりでしょうか?そうですね、ユニークな採用活動で一世風靡(?)した企業群です。採用活動の後ろ倒しで不安を語る採用担当者も多いですが、こうした企業の採用担当者(または経営者)は、面白い時代になったと微笑んでいます。

 

各企業の独特な採用手法を振り返ってみましょう。

・ワークスアプリケーションズ              ⇒採用直結型インターンシップ

・キヤノンマーケティングジャパン   ⇒元祖採用活動後ろ倒し

・ネスレ日本                       ⇒シーズンレス採用

・ロート製薬                       ⇒ネット不可、電話・葉書エントリー

・岩波書店                         ⇒社員紹介優遇採用

・ドワンゴ                         ⇒採用選考有料化

・三幸製菓                         ⇒日本一短いエントリーシート

 

上記の中には10年以上前から独特な方針を続けている企業もあれば、経営者のトップダウンでいきなり始めたケース、あまり公開するつもりではなかったけれどネットに広がってしまったケース等、状況はマチマチです。必ずしもデキル採用担当者が行ったというものでもありませんが、結果的にうまく回っているようです。

 

これらの中でもいま脚光を浴びているのが三幸製菓です。同社は上記に上げた事例だけではなく、超多様な採用選考手法(おせんべい採用等)を駆使し、昨年頃から急速に採用業界で注目されてきました。たまたま同社の採用企画をしている方とお話しをする機会があったのですが「我が道を行くデキル採用担当者」の考え方に共感致しました。具体的にいうと以下のような点です。

 

・他社のやらないことをやる(採用手法を広報活動にする)

・割り切りがしっかりしている     (ターゲッティングが明確)

・効率測定の技術をもっている(データ分析ができている)

・採用担当者の思い入れリスクを知っている(情より理を優先)

・採用担当者にとって経営者が最大の抵抗勢力だと思っている

 

話しをするほどますます面白くなったのですが、何故こんな「我が道を行くデキル採用担当者」になったのかというと、他業界から転職してかつ人事以外の部門から異動してきたからでした。つまり既存のやり方に率直に疑問をもち、改革ができたのですね。更にこの方の素晴らしいと思ったのは、社会にも学生にもフェアであることです。それを表すご本人の言葉を最後にご紹介致します。

 

「正しい選考をして、学生が正しい選考をされていると感じる企業にはちゃんと学生が集まり、うまく回っていますので、採用選考後ろ倒しはそんなに気にしなくても大丈夫です。今は採用担当者にとって面白い時代になったと思っています。」

 

第303号:相談後の礼の重要性

GWが明け、新入生もいよいよ大学の勉強に本格的に取り組む時期ですが、この春に社会へ巣立った新社会人達も世間の風に吹かれ始めます。この季節になるとよくあるのが、卒業した新社会人達の営業研修や見習いとしての飛び込みセールスです。私のところにも毎年やって来るのですが、彼らの訪問スタイルを見ていると、それは就職活動がうまくいく学生とそうでない学生との違いのように感じることがあります。

 

強制的にノルマを与える飛び込みセールスはブラック企業の例とされるようになってきたので最近は表立っておりませんが、訪問販売を必須とする産業では避けて通れない試練でしょう。私も商社で半導体の飛び込み営業をしておりましたので、その苦労と必要性もわかりますが、今回ご紹介するような新社会人とのお付き合いは避けたくなります。

 

その新社会人とは、私が授業におけるグループワークで相当に苦労しながら指導したメンバーの一人です。頭はとても良く仲間からも一目置かれるリーダー格の存在でしたが、時間や連絡にルーズでプライドが高く、考え方や行動に自己中心的なところがあって手を焼きました。そんな卒業生から先日こんなメールが届いたのです。

 

「鈴木先生、お久しぶりです!これからそちらの大学に伺うことになったのですが、今日は授業ですか?もし、瞬間お時間があればご挨拶させていただけたらと思ってます!急なご連絡で申し訳ありません。よろしくお願いします。」

 

こんなに愛想の良かった人だったかなあ?と思いつつ、当日は都合がつけずに会えない旨を返信したところ、その訪問理由は入社した会社の取り扱う大学生向けの商品を、私の授業で学生にプレゼンテーションしたいという依頼(飛び込み営業)でした。残念ながら都合がついたとしても、授業において営利活動をお手伝いするわけにはいきません。営業活動に張り切る新社会人の気持ちはわかりますが、そこは協力出来ない旨を丁寧に伝えました。

 

さて、問題はここからです。昔の学生であれば、必ず「それは残念です。事情はわかりましたので、また機会があれば宜しくお願い致します。」という形ばかりでも返事が来たものですが、この新社会人からは何の返信もありませんでした。ここで本人に悟って欲しいのは、こちらも申し訳ないと思いながらお断りした気持ち、そして何か別の方法や機会を設定してあげようという気持ちもあることです。しかし、自分からの都合を一方的に伝えて自分に役に立たないと見切るような人間は、可愛さ余って憎さ百倍です。(正直、そうなるだろうとは予想しておりましたが。)

 

こうした現象は最近の学生にますます増えている気がします。皆様方も就職相談に何度も来ながら結果報告をしない、お礼の挨拶もなく音信不通になる学生と接したことはありませんか?結局、こうした若者は大切なことを気付かずに過ごしてしまい、せっかくの機会や人の信頼を失うことになります。若者には堅苦しいと思われるかもしれませんが、知能だけではなくこうした人の心を普通に察することが、就活の最後の最後での差になるのでしょうし、社会の中でも他者から求められるかどうかになると思います。