3月になり、大学内での企業セミナーが一気に始まりました。いつもなら大学入試後でしばし春眠をむさぼれる季節なのですが、キャンパスは大勢のリクルートスーツ学生と企業採用担当者でごった返しています。私も長いお付き合いのある神戸大学へ就職支援のお手伝いに行きました。行き先は、キャリアセンターではなく、工学部同窓会です。珍しいことに、神戸大学の理工系学生の就職支援についてはキャリアセンターよりも積極的な活動をしており、企業採用担当者の評価も高いです。
大学同窓会というのは、本来卒業生同士の親睦・交流を深めることが目的ですが、歴史が長くなると、在学生への様々な支援を始めるようになります。奨学金や寄付金等の財政的な支援が多いですが、工学系では百年以上の歴史をもつ同窓会もあり、京都大学のように大学内で大規模な就職セミナーを開催するところもあります(私も採用担当者として何度か訪問しました)。
私は大学院時代の研究で、大学同窓会の就職支援機能について調査しておりましたが、就職支援については、同窓会には以下のような強みがあります。
1.常に最新の卒業生名簿を保持している
⇒個人情報保護法の影響で就職課では卒業生紹介が困難になってきた
2.大学内組織・企業の双方にネットワークがある
⇒存在そのものが大学と企業の絆である
3.営利目的ではない、自由公正な活動ができる(大学内第3セクター)
⇒独自収入(主に会員費)があるため、就職事業にする必要がない
4.財務的に安定している同窓会は、奨学金等の財政支援も可能
⇒海外への留学生支援、新入生向けの学費援助等
(法律改正で一般社団法人への移行等の課題も出てきましたが)
5.膨大な人的ネットワークをもち、年々人的資産が増加する
⇒大学就職課では困難なOBを対象としたキャリア支援も可能
欧米の大学では、卒業生が入学者募集まで手伝うところもあり、母校に対する支援という意味では学ぶところが多いです。しかし一方で、就職課職員の方に尋ねてみると、同窓会は意見が厳しくてつきあいにくい、という声もよく耳にします。これは、大学運動部と同じで、卒業した先輩がいろいろアドバイスや資金援助を下さるのは嬉しいのですが、必ず一緒に説教がついてくるのと同じなのかもしれませんね。社会でも銀行に融資を頼めばいろいろ言われますから。
ともあれ、企業の採用活動がネット中心から徐々にダイレクトリクルーティング(インターンシップ&リクルーター等)に変わってくると、そうした窓口として大学同窓会が機能してくれれば大学としては強い味方になるのではと思います。