大学受験シーズンで多忙な職員の方々の裏側で、教員は期末試験やレポートの採点シーズンです。私の授業の筆記試験は記述式解答の設問なので、エントリーシートの採点や面接での選考と評価基準が同じになることがあります。それは採用担当者が好きな「求める人材」と似ています。
皆さんもよく耳にすると思いますが、採用担当者に「求める人材」を問うと、以下の3つを応える人が多いです。
1.素直な人
2.伸びしろのある人
3.一緒に働きたくなる人
これらはどんな組織でも一緒でしょう。要は、若者の最大の魅力である成長・変化していける力をもった人です。自分の中に他者の意見や考えを素直に取り込む余裕があり、そうした伸びしろをもつ若者とは誰でも一緒に働きたくなるのではないでしょうか?
さて、私の期末試験の設問では「授業で取り上げたケースを元に、論理的に持論を展開しなさい」というものを出すことがありますが、その時にこの「求める人材」か否かを感じさせられます。ケースというのは、社会問題であったりゲスト講師の話であったりしますが、このケースの受け止め方に個性が出てきます。現象や思想に共感的・前向きに受け止めて持論を展開する者もいれば、批判的・客観的に受け止める者、否定的・排他的に切り捨てる者等々。
これらの回答からは性格の違いだけではなく、文章力(表現力・ボキャブラリー)の技術の違いもわかり、個性と能力が評価できます。つまり、上記の3つのパターン+文章スキルの優劣(2パターン)で評価してみると、6つに分類できます。
この中でもっとも採用してみたいと思うのは、共感的・客観的に受け止めて前向きな文章を書く者で、つまり上述の「求める人材」に近い人物です。批判的・排他的な者でも、文章の礼儀をわきまえて書く者はすぐに減点にはなりませんが、相当にレベルが高くなければ、他者を受け入れて自分の成長につなげる魅力に欠けます。自分の世界で小さくまとまっていると感じますから。
というわけで、日頃の授業のリアクションペーパーでも期末試験からでも、就職活動のうまくいきそうな学生とそうでない学生は判断できますし、育てることもできます。
ちなみに、採用担当者の方々は「伸びしろ」とか「一緒に働きたくなる」ということは良くおっしゃいますが、それをどういう質問や試験で見分けるかの方法論まで気づいていない方もおります(フィーリングで語っている)。だからこそ、応募者である学生が意識的に魅力を感じさせて欲しいですね。