第296号:今年度の新卒採用担当者4大業務

昨年末から企業のインターンシップ参加を理由に授業を欠席する学生がポツポツと出ています。思わぬところで企業採用活動の進行を垣間見ているわけですが、就活「後ろ倒し」の今年度は相当に採用担当者も混乱することでしょう。それは変革に必要な痛みだと思いますが、今後の新卒採用担当者の業務は、リクルーター、インターンシップ、キャリア教育、アウトソーシングの4つに集約されそうな気がします。

 

この4つの業務は、4つのメディアと言う事ができます。既存の紙媒体からネット媒体、そしてヒト媒体への移行です。企業の採用活動は業界や規模でまちまちなので、全体が一斉に同じ手法に動くとは限りませんが、ヒト媒体というメディアは、マスメディアと違って以下の特徴があります。

 

1.選択性 ⇒ターゲットリクルーティング

2.秘匿性 ⇒シークレットリクルーティング

3.信頼性 ⇒ダイレクトリクルーティング

 

狙った人材を(選択性)、こっそりと(秘匿性)、高い精度で(信頼性)採用する、ということで、特にリクルーターとインターンシップに当てはまります。この二つの業務は、今がまさに花盛りで、採用広報を後ろ倒しにされた企業が必死に取り組んでいます。ヒト媒体は、マスメディアと違って直接に学生とコンタクトできるので、そのやりとりから自然と採用選考情報が入るので精度(信頼性)も上がります(苦労して見つけた人材が必ずしも入社してくれるわけではありませんが)。

 

キャリア教育は、大学のコーオプ教育と連携することで大学に入り込むことです。これは企業単独で動くわけにはいかず、大学との何らかのチャネルがあって初めて実現できますから実施可能な企業は限られます。文科省指導でキャリア教育導入を求められている大学などは、お互いに渡りに船ですが、うまくコーディネートできる大学教職員との出会いがないと実現は困難です。なお、企業は本気で社会貢献と考え、採用部隊ではない企業人が担当したとしても、学生への企業認知度理解や学生の能力把握は自然と進みます。

 

アウトソーシングは、新卒人材採用の活用です。昨年もこのメルマガで新卒人材紹介の可能性には触れましたが、多様で面白いサービスが出てきています。NHKでも取り上げられた「ワイルドカード社」の他社内定者横取りサービスは企業人事部からの評価も高くて急成長しており、同業他社も追随する動きがあり、これまで人材紹介を新卒で使うことに抵抗のあった企業も、変革期には導入してきそうです。採用ノウハウがなく、「後ろ倒し」で採用難になるといわれる中小企業では、元々、採用ノウハウも採用予算も少ないので、アウトソーシングのような成功報酬型は相性が良いのです。

 

採用選考が「後ろ倒し」初年度の今年は、学生の就活時期が長くなり、景気上昇局面もあいまって、複数内定を取る学生が増えると予想されます。一つ内定をとったらドンドン上を目指したいのが応募者の心理で、その時間が十分与えられたわけですから。というわけで、冒頭で述べた通り今年度の採用・就職活動は相当に混乱しながら新しい手法が出てくる時期かなと思います。

第295号:とある企業の5日間インターンシップ例

今週の夕方、繁華街を歩いていると新年会らしき集団をみかけました。妙にスーツの似合わない賑やかな若者たちで和気あいあいとしていたのですが、インターンシップ体験者の集団でした。某有名企業のインターンシップを受けた仲間たちの懇親会が開かれたようです。そんなに大きな声で話していたらバレバレだよと、他人事ながら気になりました。採用担当者の方を見ていると、年末はインターンシップの運営で忙しかったようですが、その後もフォローで気を抜けないようです。

 

有名企業で行われる年末のインターンシップでは、いわゆる「ファーストトラック」という有名大学の学生にターゲットを絞った小規模で内容の濃いものが早期に行われています。外資系企業等が好んで行いますが、先日、とある企業のインターンシップの全容を教えて貰いました。定番の5日間コースで、以下のような構成です。

 

1日目:参加学生同士の顔合わせと企業セミナー&課題提示

2日目:指定課題について人事担当者に1回目のプレゼンテーション

3日目:指定課題の現場担当者(営業部)を訪問取材

4日目:人事部長に2回目のプレゼンテーション

5日目:現場&人事担当者に3回目のプレゼンテーション

 

指定課題とは、この企業の実際の客先を指定して学生が何らかの提案をするもので、参加者を複数のチームに分け(6人/チーム)、コンテスト形式でプレゼンテーションを行い、順位を決するものです。新入社員研修でも行われる形態のものですが、人事側では画一的に運用ができて現場の協力も取り付けやすく、教育効果もあがりやすいものです。

 

ファーストトラックというだけあって、このインターンシップに参加するためには、本番の採用選考と同様にエントリーシートと面接で選考を通らなければなりません。更に、このインターンシップの受講態度を見ていれば、受講者の生の姿もわかります。つまり、来年の夏の採用活動解禁を待たずに、合格レベルの学生を判定することが十分に可能です。

 

しかし、ここから大変なのは見極めた学生の継続的フォローです。5日間のインターンシップを終えた後は、リクルーター(人事部以外の若手現場社員)がメンターとして張り付き、定期的に連絡をとってきます。学生の個別の就職相談には勿論、インターンシップの同窓会を企画してくれたり、至れり尽くせりです。学生としては、エリート意識をくすぐってくれて良い気分だそうですが、昨年の実際の採用活動解禁時期には、インターンシップの結果に拘わらずダメな人はバッサリ不合格にされていました。

 

というわけで、冒頭のようなインターンシップ同窓会のようなものが年末年始に行われているわけですが、採用活動の後ろ倒しになったいま、多くのリクルーターが先の長いフォロー活動に入り、疲れ気味のようで同情を禁じ得ません。(もっとも、こうしたファーストトラック学生は全体から見ると少数です。)