景気の上昇ムードを受けて採用担当者の顔が明るいです。新しい人材を求める仕事は、企業にとって大事な活力の補充であり、未来への希望があるということですから。ところが、財布の紐を緩めているある採用担当者から、採ってあげたくてもなかなか採れないので困った、という話しを伺いました。
このGWに、それほど有名ではありませんが、好業績で業界大手企業の人事部長と情報交換を行ったときのことです。学歴フィルターなどまったく無縁の人物重視の採用活動を行っているのに、なかなか最終選考まで上げられないというのです。その理由が「あまりに学生が正直すぎて、自分の思っていることを臆面も無く話すので、社員としてお客様の前に出すのが心配だ。」というのです。
実際の面接の会話において、以下のようなセリフを堂々と話されたそうです。
「私は人見知りで、なかなか人と打ち解けられませんが・・・」
「私はゲームが大好きで、何時間でも集中できますので・・・」
「御社はネット上で、ブラック企業と言われていますが・・・」 etc.
人物は素直で良さそうなのに、これではとても社長面接には上げられないとのこと。
実は、私も最近、なかなか内定が出ない学生の就職相談で似たような言葉を聞きました。その学生も愛想の良い子なのですが、こんなことを話すのです。
「たまに変な質問をされる採用担当者の方が居られますが、私はできるだけ笑顔で接するように心がけています。つい先日も『貴方を動物に例えると何ですか?』と聞かれましたが、落ち着いて『私を動物に例えるとナマケモノです。』と応えてきました。」というのです。(この質問を今でもする採用担当者って本当にいるんですね。)
この回答に呆然としながらも、学生に「何故、ナマケモノなの?」と尋ねたところ、「私はいつもゴロゴロしていますが、何かある時は機敏に動けます。ナマケモノは、ピンチの時にはとても素早く動くそうですよ。ご存知ですか?」私はしばらく言葉を失いました。この学生は全く無邪気に自分の話に自信を持っているのです。もうちょっと採用担当者の気持ちを察して、必要以上に盛らなくても良いですから、繕って話して欲しいものです。
授業で学生のレポートを見ていても、似たような現象がチラホラ増えてきました。キャリア教育等で社会人ゲストの仕事の現場の体験談を聞くと、「ゲストの方の話しを聞いて不安になりました」「私はついていけそうもありません」というような言葉がとても多いのです。確かに正直なコメントなのでしょうが、これを読んだゲストはどんな風に感じるのかを全く察することができていませんし、もっと心配なのは、自ら「不安だ」「不安だ」と何度も書くことにより、自己暗示をかけてしまうことです。
今の若者は生まれた時から不安な経験しかしていないというよく指摘されますが、楽観的になれとまでは言わずとも、自分だけではなく相手にも不安を感じさせるような話し方は避けて欲しいものですね。