第257号:ターゲット採用の会社側の事情

最近のメディアでは「企業はターゲット採用を強めている」という文言を目にします。私が人事部に初めて異動したとき(1990年前半)、先輩から「ターゲット校はここと、ここ!」と言われました。私の就職活動時代はまだ「指定校制度」というのが世間一般に言われていましたので、まあ、うまい言い方があるものだ、と感心したものです。このターゲット採用の設定について、現場をみてみましょう。

 

「ターゲット校」という言い方は、特定の大学だけを相手にする「指定校」とは違って、採用担当者の気分も楽です。何処の大学でも応募できる窓口はそのままで、積極的にお伺いする大学を絞るわけですから。カタカナになっているのも何やらカッコ良い感じがしますね。

 

ターゲット採用の正体を会社側の事情で見てみると、それは採用予算の大きさです。どんな企業にも、ヒト・モノ・カネの予算には限界があります。ターゲット採用は、その限られた予算を何処にどのように振り向けるか、です。ターゲット大学がとても広いのは、やはり予算が大きくて、かつ以下のような特色のある企業でしょう。

 

・従業員が1万人以上いる企業

・人事部員以外のリクルーターを動員できる企業

・学生を将来のターゲット顧客と想定しているBtoC系企業

 

そうでない多くの企業では、もっとも効果の高いと思われるところに重点的に予算を振り向けるわけですが、ターゲットの設定にはいろいろな考え方があります。かつての郵送によるダイレクトメールの送付先をイメージすればわかりやすいでしょう。大学優先か、学部優先か、です。前者は「ターゲット大学」を決めたらその大学の学部に優先順位を付けてアプローチします。後者は「ターゲット学部」を決めて、次に大学毎にアプローチします。

 

このどちらを選ぶかは、なかなか悩ましい問題です。「地頭」は良さそうだけど、戦力になるのは少し時間がかかりそうな学生と、「専門性」はピッタリしているけれど、将来的に伸びて行けるかわからない学生と、皆さんならどちらを選ぶでしょうか?

やはりものを言いそうなのは、その企業において、どちらのタイプの社員が社内で活躍しているかです。特に、入社2~3年目の新人は、採用する「ターゲット学生」としてイメージがしやすいので、「××君のようなタイプを探せ!」と良く言われます。

 

ということで、一部の有名大学を除き、皆さんの大学がターゲットになるかどうかは、入社した卒業生の頑張り次第かもしれません。そうした有望な卒業生が、大学にリクルーターとして戻ってくるようになって欲しいものですね。

 

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