ようやく前期授業の成績採点が終わりました。私の授業は元々50名前後を想定して組み立てられたものですので、法政大学のような大規模大学で1クラスが100名(時に200名)を越えるような場合は一苦労です。本音を言えば、出席票の集計と1回の期末レポート・試験だけで採点する方がはるかに楽なのですが、それでは社会で求められるリアルタイムコミュニケーション力が鍛えられないのです。
私の授業の成績評価の配点は、出席点が35点、期末レポートが20点、そして最も配点の高いのが毎回の授業の後に提出させるリアクションペーパーの45点です。つまり、私の授業ではただ出席するだけではなく、しっかり授業を聴いて自分の意見を書かなければ単位がとれません。そしてこのリアクションペーパーの採点が膨大な作業になっているのです。
学生にとって大変なのは、リアクションペーパーを書くための時間を十分に与えていないことです。記入する時間をちゃんととって欲しいという学生からの要望もありますが、あえて行っておりません。というのは、これによって採用選考でも就職後の業務でも必須の「生きたコミュニケーション力」を求めている、鍛えているからなのです。
生きたコミュニケーション力とは「動的コミュニケーション力」とでも言うべきもので、いま目の前でおきている現象・状況を理解把握しながら考え分析し、アウトプット(発言・記録)する力です。高校までの授業とは異なり、教員である私が発言したことや板書(殆どは授業前に配布済)したことをそのまま書き取るものとは異なる能力です。この力は、例えば営業活動でお客様との会話の中から情報を収集・分析し、次の提案や交渉を行う場面等、仕事上の渉外場面で必須です。
一方、学生のもつコミュニケーション力とは、静的なものが多いように見えます。例えば、ファーストフードでのアルバイトなど、お客様との対応がある程度定型化している業務(効率上、お客様の方を企業の都合の型にはめています。注文後、他にお客が居なくても「一歩右にずれてお待ち下さい」と言われます。)では殆ど求められません。極論すれば、今の日本社会では、動的コミュニケーションとは正社員に必須、静的コミュニケーションとはアルバイトに必須ともいえるでしょう。
実を言うと、採用担当者も面接ではこの生きたコミュニケーション力をフルに発揮しているのです。質問を投げ、応募者の回答を分析して次の質問を考えては記録を残す・・・、応える学生も大変ですが、面接官も必死なのです。
期末レポートでは多くの学生が「10数回のリアクションペーパーの作成によって相当に書く力がついた」「メモのコツを掴んだ」「他の授業でも応用できる」というコメントを書いてくれました。
学生にとってリアクションペーパーを書くのは大変ですが、それを見る方も相当に苦労しております。お互い大変ですが、これが社会に通用するキャリア教育のひとつと信じて汗を流していきたいと思います。「一つのことに集中すると周りが見えなくなる」「自分の都合で相手を待たせる」学生達を鍛え直すために。