第225号:岩波書店の紹介採用はあたりまえ

岩波書店の採用手法(とりあえず『紹介採用』と呼びます)が話題となりました。既にネット上では沈静化してきたようですが、私も意見を述べてみます。結論から言えば、これは岩波書店(従業員約200人)のような中小企業ではよくあることです。法的にも何の問題もありませんし、私が採用コンサルタントならば、推奨したいくらいの方式です。

 

・縁故(コネ)採用ではない

どこの企業でも、縁故採用というのは発生します。というのは、縁故採用というのは採用担当者が積極的に働きかけるものではなく、応募者側から売り込んでくるものです。それも採用担当者の雲の上から。なので、紹介採用は縁故採用とは異なりますし、仮に縁故採用であったとしても、民間企業である限りどんな採用方式をとろうと自由です。公務員や何処かの地方自治体の教育委員会のでもないのに、厚生労働大臣の事実関係を調べるなどとは論外です。

・優良中小企業は紹介採用で十分

岩波書店の説明の通り、採用数が数名という中小企業では、ITを使った大量母集団形成を行う今の新卒採用方式(とりあえず『リクナビモデル』と呼びます)は不合理で、数百万円もの費用などかけていられません。実際、中小の優良企業は本当の縁故採用でも(応募者側から)人気で、取引先の業者や金融関係からの紹介だけで意外と良い人材が集まります。中小企業でリクナビモデルを使うのは、ITベンチャーのように社会での評価がまだ浅かったり、急いで人材を集めなければならない場合です。

・ミスマッチ防止でほめても良い

紹介採用は、かつて普通に存在した「指定校制度」と似ています。今回の論議で、岩波書店を指示した方々が指摘しているのはリクナビモデルの非生産性で、巨大母集団の選抜に学生も採用担当者も疲弊しており、これは壮大なミスマッチ生産システムと言っても良いでしょう。厚生労働大臣が顕彰すれば、ハローワークの仕事も少しは楽になることでしょう。

・紹介採用は逆リクルーター制度

岩波書店の主張では「これは選考基準ではなく応募条件」だそうですが、いずれにしてもこれは応募者の努力で作ることができるものです。もし今回の論議を機会に同社の方々がアプローチしてくる学生に積極的に会ってくれるようになったなら、これは「逆リクルーター」または「全社員リクルーター」ということですし、新しい採用方式ですね。OB/OG訪問の開拓能力が求められるわけです。

 

ただ、今回の経緯を注意して見ていると、岩波書店もまったく新しい採用方式として積極的に行ったわけではないように感じます。もともと慣行になっていたのを書面にして関係各位に連絡したのがネット上に公開されて炎上し、そこで同社も開き直って説明したように見えます。ネット社会と対極にあって泰然としていた紙文化重鎮の岩波書店らしい盲点で、さぞや驚いたことでしょう。

以下、参考サイトURL:

▼岩波書店、採用で「著者か社員の紹介必要」(読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120202-OYT1T00976.htm

▼謹告、小社の「定期採用」報道について(岩波書店)

http://www.iwanami.co.jp/company/index_s.html

 

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