毎年大学後期は企業の人事労務管理を研究している大学のゼミ生と採用活動に関する共同研究を行っておりますが、今年は『学生・企業間におけるグローバル人材の認識差』がテーマでした。研究にご協力戴いた企業人事担当者(約10社)を招き、今週その報告会を行いました。グローバル人材というものは就職セミナーでは頻繁に目にしますが、学生と企業の認識には埋めがたい大きな溝があるようです。
この研究では学生(425人)と企業(76社)から集めたアンケート回答に加えて、直接訪問した企業(約10社)のインタビューをまとめています。その中でマスコミでもよく取り上げられる「グローバル人材を見据えた新卒社員に必要なもの」については、以下の点について学生と企業とで大きな違いが見られました。
・学生が重視しているが、企業はそれほどでもないもの(上位3つ)
1位:高度な語学力、2位:異文化適応力、3位:国際的視野
・企業が重視しているが、学生はそれほどでもないもの(上位3つ)
1位:情熱、2位:向上心、3位:一般教養
これらをみると、学生は具体的なスキルに着目しており、企業はそれよりも資質や人間性に着目しているのが明らかです。研究では更にこうした現象が現れるメカニズムについても考察し、企業の情報発信方法について課題があることを指摘いたしました。何分、大きなテーマだけに企業からの指摘も厳しく研究の不十分な点も明らかになりましたが、学生企業相互に有意義な質疑応答がなされました。
このゼミ学生達は全員3年生なので、12月になって始まった企業セミナーを周りながら研究報告をまとめるのに非常に難儀しておりましたが、その就職活動から面白いことを2つ発見しておりました。
・グローバル化に遅れている企業ほど、グローバル化が大事だと主張している。
⇒進んでいる企業はそれほどアピールしない。
・グローバル人材に求めるものは、どこの企業も似ている
⇒「情熱」「向上心」とは良く聴き、勢いはわかるが曖昧でよくわからない。
結果、企業への提言としては、現在の企業の一般的な採用方法(Webエントリー⇒大規模セミナー⇒ES⇒面接)は、時間・労力が取られるわりには学生と企業の理解を埋める機能を果たせておらず、長期インターンシップ等の新たな告知採用方法が必要である、となりました。当たり前の結論ですが、採用担当者の方々も実はそれは課題と思っていると共感されていました。今回のテーマが壮大だったので学生達は苦労しておりましたが、その研究結果またまた大きな問題が浮き彫りになったわけです。
しかし、この研究活動を通じて、学生達は就職活動や企業の採用活動、そして新卒就職市場についておそらく日本でトップレベルの理解に達しました。そして、大学の研究こそが一番の就職活動であるということに気付いてくれたわけです。指導には大変労力を取られましたが、こうした調査分析報告手法は、どんな学問でも指導できるはずです。苛烈な就職環境に惑わされずに対処する能力を、大学は与えていきたいものですね。末文になりますが、良いお年をお迎え下さいませ。