第220号:オリンピック選手から学ぶこと

私は今年から筑波大学でスポーツを専攻する学生達を対象とした講義の一コマを担当しており、9月に「アカデミック・アスリート」というテーマでスポーツを通じた大学生のキャリア形成についてお話ししました。この講義はトップアスリートとなったスポーツ選手の講話から、選手として教員として、そして社会で事業を展開するビジネスパーソンとしての智慧を学ぶとても面白い授業です。その最終回で、冬季オリンピック・フィギュアスケート部門で金メダルを取られた荒川静香さんのお話がありました。私も1聴講者となって拝聴していたのですが、そのお話もまさに金メダル級の内容で、スポーツ選手だけではなく、すべての学生の参考にもなるものでした。

 

荒川さんのお話の全てをここでは書ききれませんが、これから就職戦線に臨む学生の方々に役立つと思われることを1つお伝え致します。それは、自分の短所に目を向けるということです。最近は自分の長所を伸ばすという考え方をする人が増えているようですが、荒川さんの場合は自分の短所を徹底的に見つめ、それが長所になるほどに対策を考え抜いています。自分の短所に目をつぶるのは、自分の可能性を閉じてしまうことだと話されていました。また、荒川さんは実はプレッシャーには弱いそうです。しかし、それに負けないために、考えられる全ての事態を想定してその対策を考え続けることで無心になって努力されています。最近のオリンピック選手は「楽しむ」という言葉をよく使いますが、荒川さんはそれを「楽しめるくらいに努力した人が勝つ」と考えており、それは「楽しむ」を単なる精神論ではなく技術論に高めているということです。

 

ちなみに荒川さんは早稲田大学の受験に際し、あえてスポーツ推薦を避けています。授業もどんなに練習が忙しくても友人からノートを貰うのではなく、自ら授業に出席して勉強したそうです。更に生活費のためにコンビニやファーストフードでアルバイトまでされていました。こうしたふつうの学生として過ごすことを大事にする点は、毎日の積み重ねの習慣が大きな成果を招くことを知っているスポーツ選手らしいと思います。

最近、荒川さんは15歳の高校生向けの著書を出されましたが、この本は勇気や元気を貰いたい大学生にとっても非常に参考になります。就職戦線を前にしてプレッシャーに負けそうな学生にはきっと良いものが得られるでしょう。荒川さんの大学時代の就職活動についても触れられており、就職課の片隅におかれても良いですね。是非、一読をお薦め致します。

 

▼参考URL:筑波大学勇者の鼓動-未来を創るスポーツ王国論Ⅱ

http://www.tsukuba.ac.jp/education/g-courses/detail.php?subject_id=211

▼参考URL:筑波大学最新情報「プロフィギュアスケーターの荒川静香氏が本学で講義」

http://www.tsukuba.ac.jp/topics/20111122095725.html

▼参考URL:茨城新聞「短所に向き合い克服」荒川静香さん、筑波大で公開授業」(2011/11/15)

http://ibarakinews.jp/news/news.php?f_jun=13212774117191

▼参考URL:「乗り越える力」荒川静香著、講談社

http://www.amazon.co.jp/dp/406216910X/ref=pd_sim_b_2

 

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