ネット上でキヤノンの大学別新卒説明会が「学歴差別」だと話題になりました。日本人(というよりもマスメディア?)はこの言葉が本当に好きなんですね。これはおそらく採用担当者の単純なうっかりミスでしょう。企業の広報活動も担う採用担当者としては不注意だったと思います。
そもそも企業の採用活動は自由であって、縁故採用だけでやろうが、指定校制度をやろうが、先着順位採用をやろうが、世間に迷惑をかけない限り、何の問題もありません。日本中のすべての企業が同じ基準や方法で採用活動をする方が不気味です。しかし、世の中にはいろんな理解をする人がおられますから、いたずらに誤解を招いて自ら風評被害やクレーマーを呼び込むようなことは避けたいものです。ネット時代の今は一気に情報が拡散しますし、有名大企業の採用担当者は世間への影響も大きいので特に注意が必要です。
公開されてしまった画面を見ると、受付学校順が偏差値順になってしまっていて本音(?)が丸見えです。これは完全な配慮不足で通常の採用担当者の感覚ならば、ここはふつうアイウエオ順にするか、せめて「並び順は応募者の多い学校順です」と説明を付記するところです。公開している企業の採用実績校の並び順と同じように。(採用担当者は採用実績校を何処まで出すか結構、悩みます。スペースの都合で全学校を掲載するのは困難なときは、採用実績数が少なくてもターゲットにしたい学校を優先してあげるものです。)
私は今回、キヤノンの方のコメントの(「学歴なんてどうでもいい」)方も少々気になりました。こういった場合、ノーコメントというのも多いのですが、それを回答した同社には敬意を表します。しかし、大学教員のはしくれとしては「学歴は重視していますが、学校名はどうでも良いと思います。」と言って欲しかったです。勿論、ここで私が言う「学歴」とは、ちゃんと勉強した学習歴のことです。今はちょうど期末試験の時期なので、学生のレポートを採点していると、ちゃんと学習している学生はよくわかります。それが仕事力に直結しているとは限りませんが、少なくとも企業のエントリーシートの選考基準とは相当に近いと感じています。
今回の件で、仮に「学歴差別」が声高に指摘されたとしても、企業採用担当者は泰然としていれば良いと思います。これも期末試験の時によくあることなのですが、いろいろクレームを付けてくる学生には本当に勉強をしている学生は少ないです。以前も学歴フィルターのテーマで書きましたが、本当にできる学生は、環境に文句をつけている暇があったら環境を乗り越えようとします。これは仕事力とも似ていて、できる社員は難問に対していつも対策を考えますし、できない社員はいつも言い訳を考えます。
▼参考URL(J-CASTニュース)
「露骨な学歴差別なのか キヤノンの大学別新卒説明会」
http://www.j-cast.com/2011/07/20101639.html