第183号:内々定者向け圧迫面接

採用選考面接にはいろいろな手法や形態がありますが、これは本当に意図的に行われているのかな?と思わされるのは「圧迫面接」です。ネット上に展開される匿名就職情報サイトでは、「××企業で圧迫面接をされた!」という書き込みを見かけますが、その多くは学生側の被害妄想のように思えます。最近の学生はかつてほどストレスに強くないことが原因だと推測されますが、何分、密室で展開される採用選考面接の性格上、その実態を把握することはできません。しかし、これは明らかに「圧迫面接」だな、と感じさせられるシーンがあります。それは、採用選考で合格判定が出て、内々定を出した学生に対するものです。

 

ちょうどこの原稿を書いている時に、とある有名企業の最終選考を終えて内々定の結果を戴いた学生から、就職活動の進捗報告がありました。

採用担当者「内々定、おめでとう。来春、当社に入社してくれるね?」

内々定学生「はい、お世話になります。」

採用担当者「では、今後、君が一番、やっちゃ行けないことがあるけど、何だかわかるかな?」

内々定学生「えーと、わかりません。何でしょう?」

採用担当者「それはね、内々定辞退だよ。それは人として最低の行為だからね。」

内々定学生「はい、御社は第一希望ですから大丈夫です!」

 

と、就職課の皆様もこうしたエピソードは度々、耳にされていることでしょう。このシーンは、一見和やかに見えますが、採用担当者に良識(というより法的知識)があるならば、これは明らかなコンプライアンス(遵法精神)違反の圧迫面接ですね。実を言うと、この学生は別に本命の企業があり、そちらに合格したらこの企業はサッサと辞退するつもりでいます。本人の言う「第一希望」とは「(結果の出ている企業の中での)第一希望」という意味ですから。(さて、この後、どうなることやら・・・。)

 

別の学生のケースで、この続きを聞きました。めでたく(?)本当の第一希望に内々定し、第一希望から第二希望になった企業に辞退の意思を電話で伝えたところ、案の定、呼び出されて本格的な圧迫面接が行われました。会議室で3人の社会人に3方を囲まれて、

右の社会人「こっち向いて、謝れよ!」

辞退学生 「申し訳ありません。」

左の社会人「なんで、俺に背を向けてるんだよ!」

というような調子で、延々と1時間、しぼられたそうです。これが本当の圧迫面接ですね。

 

私も採用担当者でしたから、学生から裏切られる気持ちの辛さはわかります。しかし、こうした態度を取る企業は許せません。実名を明かしたい気分です。1年先で入社直前の辞退ならまだしも、超早期化の採用活動を行っておいて、こうした圧迫面接を行うのは人として最低の行為だと思います。

これは誰でも知っている超有名大企業でのケースですが、こうした企業がセミナーでアピールするCSR重視の経営とは何なのでしょう?超早期化の採用活動に対して有効な是正策がない現在、少なくとも内々定者の基本的人権(職業選択の自由)を侵す圧迫面接は禁止する、という行政指導くらいあっても良いのではないでしょうか。まあ、狐と狸の化かし合いと言えば、それまでなのですが。

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