第164号:「新卒就職戦線総括」から

今週発売された週刊ダイヤモンドの特集に「新卒就職戦線総括」が掲載されています。今年の就職戦線の問題点をなかなか公平に指摘しておりますのでご参考になると思います。その中でいくつか気の付いた点をあげてコメントしたいと思います。

 

▼企業の問題:

「年末には内定を出し始めるテレビ局や外資系金融の狼藉ぶりも相変わらずだ。」

年末の寒い中、テレビ局の前に長蛇の列を作る大学3年生の状況を何故、報道しないのでしょう。今回の不況は、学生・大学・企業、それぞれに不毛な消費をもたらす就職・採用活動の早期化・長期化を本気で問題にして対処をすべきです。一部の識者が的確に指摘しているにもかかわらず、そういった声を大きくとりあげて欲しいと思います。何度でも言いたいと思います。

 

▼大学の問題:

「この10年大学はキャリア教育に力を入れてきたと“自己評価”しているが、・・・。」

大学におけるキャリア教育自体が未発達な状態ですが、大学が力を入れるべきは大学本来の授業を通じて高度な見識と実行力をもった人材を育成することでしょう。企業が求めるダントツ1位の「対人コミュニケーション力」は、ゼミ活動を工夫することで十分に養うことができます。それを行わずに、親に向けての就職説明会や下手な自己分析など行うのは本末転倒です。30年前の大学ならば、そういったノウハウが無くとも学生自身が考えて自己責任で行動したものですが、大学大衆化の現代では新たな手法が必要です。企業との連携によるプロジェクト・ベースの授業も結構ですが、企業の求める人材像などに迎合せず、企業に対して誇れる人材像を提案する矜持が欲しいです。

 

▼学生の問題:

「就職の厳しさを目の当たりにした今年の学生の多くは、早々に見切りをつけてしまったのである。」

今年の就職活動が本当に厳しいのはもう書くまでもありませんし、1年以上も就職活動を行っても内定の得られない学生には本当に同情します。しかし、あえてここで言いたいのは、今年内定した学生の共通点です。毎年この時期は就職活動を終えた多くの学生に体験談をヒアリングしており、「この急激な経済不況で大変だったでしょう?」と聞いてみると、内定を獲得した学生は全く同じ言葉を口にします。『確かに大変でしたが、環境のせいにしたくはないですからね。』

聞いていて思わず、膝を打ちたくなります。こうした学生は就職活動だけではなく、おそらく勉強やサークル活動やアルバイトにも同じ意識で取り組んでいることでしょう。

 

前回も書いた通り2010年卒学生の就職活動は終わったわけではなく、「総括」という言葉で締めくくる時期ではありませんが、こうした環境をしっかり受け止めて次のステップを踏み出したいものです。企業も大学も学生も。

 

*引用雑誌:「週刊ダイヤモンド(7月11日)28号」118頁

 

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