恒例の企業の人事労務管理を研究している大学のゼミ学生と採用活動に関する共同研究を行いました。今年は「リクルーター制度の役割」というテーマです。リクルーターの位置づけや活用方法は企業毎に異なり、またこの制度そのものの実態が見えないので調査には苦労しました。企業の声で面白かったのは、リクルーター制度の運営に重要なのは「社内の協力体制」だということです。ということは、リクルーター制度を導入している企業は、良い社内コミュニケーションを行っている企業かもしれません。
*ここで言うリクルーターとは、人事部以外で採用活動を行う一般社員のことです。
リクルーター制度を研究するのに際し苦労したことは、リクルーター活動を行っている企業で調査に応じてくれるところが少ない点です。学生200人を対象に行ったアンケートでは、最もリクルーターの接触が多かったのは金融業界でしたが、訪問調査は殆ど断られてしまいました。そもそも秘匿性の高い採用手法なので、自社のノウハウや訪問先大学を知られたくないという心理があるのでしょうか。
逆に訪問調査やWebアンケートにも快く応じてくれたのは製造業です。こちらは理系採用が中心となりますが、足繁く大学に通うリクルーターの実態がよくわかりました。
回答数は少ない(23社)ですが、企業がリクルーター制度の運営で重要だと思っていることは、以下の通りです。(複数回答中、上位回答のみ)
1.社内の協力体制 ⇒60%
2.採用担当者の熱意 ⇒47%
3.熱心なOB社員 ⇒39%
4.人事部の統率力 ⇒26%
5.リクルーターの研修 ⇒21%
質問の回答選択肢には、リクルーターへの報酬や評価、経営トップの理解等もあったのですが、意外にもこれらはあまり重視されておらず、冒頭に述べた通り、リクルーター制度は人事部と一般社員のボランティア的な活動だということです。「人事部に協力してやろう」「仲間を集めなきゃね」そういった社員が居ないとリクルーター制度は上手く運営できません。
対照的に、今回調査研究に応じて戴けなかった企業はノルマとしてリクルーター制度を運営し、学生何人と会うことを義務づけていることが多いようです。(学生側のアンケート回答から)
社員の自発的な行動から、人事部の指令から、どちらもリクルーター制度を動かすエネルギーですが、できれば前者を「正統派リクルーター制度」と呼びたいものです。というのは、そういった採用活動は社員の愛社精神の醸成や社員教育という意味もあり、日本企業の特異とする長期的信頼関係の構築そのものですし、そういった企業で若者が育って欲しいと思うからです。