第151号:『チェンジ(変)』はチャンス

次期米国大統領も日本人が選んだ今年の漢字も、今年の締めくくりは『チェンジ(変)』ですね。採用担当者は変化対応に慣れているとはいえ、流石に100年に一度とか言われる大きなものだと不安になることも多いです。しかし、必ず対応策はあるはずですし、特に今の時代の変化(特の現在の経済システム)は人間の心理が大きく影響しているので、一番の対策は楽観的な意志をもつことだと思います。

 

米国の金融破綻と見ていて日本人に不思議に思えるのは、どうして政治家も官僚も経済学者もあんなに楽観的なんだろう?ということです。桁外れの損失を前にしても『これはこうなるから大丈夫だ!」と熱弁をふるいます。「全世界に一言、謝れよ!」と言いたいところですが、翻って我が国は世界でもましな方なのに、政治家もニュースキャスターも悲観論のオンパレードです。唯一、楽観的な首相が頼もしく見えたりします。

 

さて、こういった経済不況となると企業の経費削減圧力は激しく、いわゆる3K=広告費、交際費、交通費、が大幅に見直されます。採用担当者のもつ予算(採用関係費用)は、まさにこれが中心ですから、採用予定人員も採用予算も失い商売あがったりになってしまいます。(バブル崩壊時にはついでに採用担当者も削減されました。)

 

しかし、ここでその『変』に対応していくのも採用担当者の重要な課題です。採用活動の方針を変えて費用がかからない方法に切り替えていきます。例えば『広告メディア』から『人メディア』への切り替え等を考えます。マスメディアの広告宣伝には莫大な費用がかかりますが、人間関係を通じた広報活動には費用よりも信頼関係が重要で、費用ではなく手間暇をかければ方法はいろいろあります。あまり遠くへの出張はできませんが、不況期でも足繁く大学訪問したり電話やITで関係維持を行う企業は頼もしいし、信頼できる会社が多いです。「金の切れ目が縁の切れ目」になってしまっては、採用担当者の能力も問われます。

 

やはり『チェンジ(変)』はチャンスですから、こんな時にこそこれまでできなかった冒険もできます。思い切って採用選考活動を遅らせてみるとか、採用選考もエントリーシートやWebテストは止めて全員面接にするとか、清水の舞台から飛び降りる覚悟があれば、何でもできるでしょう。

 

同様に、大学就職課の皆さんに求められるものも大きく変わってくることでしょう。経済環境変化対応に加えて、ゆとり世代学生の就職支援もこれまでと同じでは難しくなってくるように思われます。

 

サブプライム・ローンのように、今の採用活動・就職活動における『変』も複雑に絡んで大きくなっておりますから、1企業や1校だけでの対応では解決できません。少しは米国の楽観主義を見習いつつ、

是非、企業も大学も一丸となってこの苦境を乗り越えていきましょう。

どうぞ良い年をお迎え下さい。

 

第150号:内定取り消し報道の影響

少し前に内定取り消しについて触れましたが、一般的にも報道されるようになって新聞紙上を賑わしております。現時点で厚生労働省が把握している件数は約300件で、珍しく迅速に国の雇用政策として取り上げられていますが、状況を冷静に見ることが必要だと思います。一見、社会への影響は大きいようですが、今回のケースをよく見てみると、特定の産業の特定の企業による事件で、殆どの真面目な企業には縁のないことです。ですから、以前も書いたとおり、あまり慌てることはないと思います。

 

いま大きく報道されている不動産会社は、内定取り消しに対して100万円の「迷惑料」を支払うことを発表しております。他に外資系金融機関も数百万の迷惑料を支払ったとの怪しい噂がネット上で飛び交っておりますが、実態は定かではありません。私はこれらの事件の全貌がわからない限り、その是非を論じることにはあまり意味はないだろうと思いますが、前者のような事例は今後の企業の採用活動に影響を与えると思います。

実際にやったことはないけれど、『内定取り消しを行ったら、どうなるかな・・・?』と考えたことのある企業は多いと思います。そういった経営者や採用担当者にとっては、今回のケースはとても参考になると思いますし、そういった意味では、厚生労働省が悪質な当該企業の実名を公表する規定を設けようというのは大きな抑止効果あると思います。また今後、採用担当者は「選考合格」「内々定」「内定」という企業毎に異なる曖昧な意味を慎重に運用するようになるのではないでしょうか。密かに内々定取り消しや内定取り消しの実行まで考えていた企業も、今回の件で改めて気を引き締めることでしょう。

内定取り消しについての法的意義については、就職課の皆さんもご存知かと思いますが、実際の判例は意外と少なく、しかもかなり以前(有名な最高裁判例は昭和54年)のものです。今回の事件が裁判にはなるかは定かではありませんが、企業の実名と「迷惑料」金額が明らかにされたというのは、判例と似たような効果があると思われます。

 

ということで、現時点で考えると内定取り消しの現実的な影響はあまり出てこないと思います。皆様、就職課への相談は増加しておりますか?私の知る限り、内々定というグレーゾーンでの取り消しはたまに聴くことがありますが、10月以降の書面での回答後に内定を取り消したケースは殆ど無く、それも冒頭に述べた特定の産業の特定の企業に限られるのではないかと思います。

 

メディアが騒いでいるのはこの事件の希少性(ニュース性)のためであり、国が迅速に動いたのも件数が少なく予算(税金)の投入も少ない割にはアピール度が高いからでしょう。そういった意味では「ネットカフェ難民」の時と似ています。

 

当事者の方々には大変なことですが、状況を冷静に見て慌てずに見据えること。やはりそれが大切だと思います。