卒業式も終わりましたが、最後に就職課と採用担当者の心に残るのは留年による内定取り消し者でしょう。少数ではありますが、毎年出てきます。交通事故等による突発的な不可抗力ならともかく、履修単位数の不足や必修科目の不合格等ではなんとも憤りを感じます。
留年が確定した内定者から連絡があるのは、3月の初旬から中旬が多いです。大学側から本人への連絡はもう少し早いと思いますが、企業に連絡が来るのは学生側の万策が尽きてからなのでしょう。3月の入社直前に内定者が減るというのは採用担当者にとっても泣きたくなるような事態ですが、如何ともし難いです。多くの採用担当者はやるせない想いで配属プランを変更して調整に努めます。
しかしながら売り手市場になったいま、企業側ももう少し緩やかな対応を取るべきかもしれません。セメスター制度で半年後に単位が取れるなら、入社時期を半年ずらすとか、アルバイト採用(契約社員)にして単位修得後に正規採用する等の対応です。外資系企業のように、入社時期を選択できる企業であれば、このような対応はかなり現実的です。
よく考えてみると留年で内定取り消しになるというのは、卒業時期(入社時期)が一律で、卒業見込者だけを新卒採用とみなす、日本社会に特有の慣行なのかもしれません。海外のように、卒業後に就職活動を始める社会では、留年による内定取り消しというのはありえませんから。
私もかつて内定取り消しにした学生を採用したことがあります。なかなか優秀な内定者だったのですが、たった1単位を落としてしまい、泣く泣く内定取り消しをして見送りました。ところが、すぐ翌月(4月)に始まった採用セミナーにその本人が参加しているのです。セミナー後に個別に相談してみると、どうしても入社したいのでもう一度最初から受験して来年入社する、というのです。魚心あれば水心で、こちらもそこまで思ってくれているなら・・・、と人事内部で検討して簡易な面接だけで選考を済ませ、すぐに内定を出して翌年に入社してもらいました。
内定取り消しは個別対応になるのであまり表面には出てきませんが、実際はこういった対応を取る企業は少なくないと思います。売り手市場では1名の内定者を獲るのに莫大なコストがかかりますから。もっとも、あまり学生に甘くなるのは日本社会において良いことではありませんけどね。