企業の人事異動の季節にもいろいろありますが、最も多いのは6月末でしょう。多くの日本企業が3月末の決算を経て株主総会を終えた頃です。大学就職課の方々や企業採用担当者もちょうど今がシーズンの切り替えなので、今年も多くの方から異動のご挨拶を戴きました。しかし私は短期間の就職課職員・採用担当者の異動には反対です。それはプロを育てない人事異動だと思います。
定期人事異動は長らく日本型人材育成のシステムでしたが、それが有効なのは環境や市場の変化の少ない安定的な経済成長が続くときであり、かつ転職等の外部労働市場が存在していないときです。まだまだ自分自身の専門性の形成段階にある20代の現場の若い担当者ならば、定期人事異動で組織文化を学びながら自分の適正を見極めていくのは良いことでしょう。しかし、現在のような環境変化の激しい時代では、「その道のプロ」である就職課や採用担当者等の中間管理職の異動については慎重であるべきだと思います。何故なら、この仕事は組織外部に関わる仕事が益々増え、その内容も高度になってきており、この分野で専門性と人的ネットーワークをもった人材が重要になってきているからです。それらは組織の貴重な財産になっているはずです。
就職課も採用担当者も中間管理職が異動になると大変です。特に全く未経験の部署から異動してくると、本人は右も左もわかりませんが、そんな中でも相談や面接に来る学生に、さもベテランのように対応しなければなりません。学生から見たら、就職課も採用担当者も相談のプロだと思っていますし、その信頼がなければ学生も心を開いて話してくれません。かつてはそんな場面でも、その部署の内部で助け合って教え合ったものですが、企業においては成果主義の名の下に他者(後輩)を助ける余裕が無くなってきています。(さて、皆さんの大学は如何でしょう?)
その結果、企業の採用担当者には急速に企画・立案の出来るプロが少なくなっているようです。そんなプロは転職して外部で採用コンサルティングの仕事に就き、退職後も業務委託契約等で継続して同じ仕事を行っているケースも増えてきました。これと似たような形で、大学でも卒業生の就職支援を人材サービス企業に委託したり、学外のキャリアカウンセラーを契約社員として起用している例は珍しくなくなってきましたね。
しかし、外部パートナーとの協働作業で注意したいのも、やはり人事異動です。というのは、人事異動が繰り返されてくると、新しく異動してきた新人よりもベテランの外部パートナーの方が組織の内情や課題に段々と詳しくなります。その結果、社員が外部のパートナーに教わっているなんて逆転現象がおきます。まあ、独立したプロには有り難いことなのですが。