2年ほど前にもここで書きましたが、またプロ野球の就職に関する事件がニュースになりました。球団に入団することを前提に、「栄養費」と称する金銭の授受を行ったものです。事の真相はマスコミに任せるとして、就職・採用の視点でこのテーマを考えてみます。
今回も出てきた就職を前提とする「栄養費」ですが、この行為自体については法的な問題はありません。関係者のご家族が当初「奨学金と思っていた」とコメントされていたように、多くの企業でも奨学金を設定しており、大学の掲示板でも募集広告をごくふつうに見かけます。その中にたまに入社を前提としたものもあります。金額は月に数万円位で、諸般の事情で入社ができなくなった場合は、変換する契約になっています。さすがに今回の事件のような高額なものは一般募集では出ませんが。
奨学金の意義は高い資質と能力と意思をもちながら、進学する経済力が無い有望な若者を支援するために始まったものと思われますが、苦学生という言葉が死語になりつつあるいま、その意義は優秀な社員候補の確保に変わってきているでしょう。内定した学生に奨学金を支給して、アルバイトなどに手を出さずに学業に専念して欲しい、と経済的援助を行う企業もあります。(ホンネは内定者の意思確認にあるのかもしれませんが。)
正社員の場合でも、幹部候補生育成のために海外留学制度(MBA等)を利用する際には、帰国直後に転職したら手当を変換させる規定を設けているところが殆どです。企業にとって、優秀な社員を選抜して重点的に育成投資することは極めて当然の活動です。
つまり今回の事件を見てみると、問題は「栄養費」を出した行為そのものではなく、そういった行為は協定で禁じたにも拘わらず、秘密裡に行ったことにあります。そこが「栄養費」が「奨学金」ではなく「裏金」になってしまった原因ですね。
翻って就職倫理憲章はどうでしょうか?プロ野球と違って、全企業が承諾したものではありませんので問題が発生することにはなりませんから「奨学金」が「裏金」に化けることはないと思います。しかし、
この憲章を遵守する企業から4月1日に内定が出てくるような場合、ちょっと突っ込んでみたくなりますね。大手メーカーの中には他社はどうあれ、律儀に4月から選考を始める企業も多いです。正直者が報われないような日本では困ります。