就職・採用活動の長期化により、入社までの内定期間も長くなりましたので採用担当者は内定者に対しての辞退防止のフォロー策にも気を遣うこの頃です。この時期になると3年生(修士1年生)向けの来シーズンの採用活動も盛んになって参りますが、最近は内定者を採用活動に引き出す企業も多くなりました。入社前教育として集合研修や教材を渡すくらいならまだ良いですが、「戦力」として扱うならば、せめてアルバイトとして扱って欲しいと思うこの頃です。
今は昔、私たちの世代が就職活動を行っていた頃は解禁日が10月1日であり、(4年の)夏休みに内定を持っている友人が居ると羨望のまなざしで見られたものでした。のどかな時代で入社までの内定期間の約6ヶ月、内定した企業の採用担当者に「何か入社前にやっておいた方が良い勉強はありますか?」とこちらから尋ねてみても、「学生のうちに思いっきり遊んでおきなさい。」と言われることが多く、入社前に膨大な課題を与えられるのは金融機関に内定した学生くらいでした。
ご存知の通り、入社前に内定者を最大限に戦力にしているのは人材ビジネス(人材派遣・紹介、就職情報等)業界でしょう。学生自身の日常の活動やネットワークがまさに即戦力になる産業ですから。大学内で後輩を集めて先輩体験談を行ったり、就職活動支援サークルを作ったり、ときには企業の人事部を訪問して就職イベントの提案まで持ってきてくれます。人材ビジネスに内定した学生にとって、これらは確かにとても良い「インターンシップ」でしょう。しかし企業サイドから見たとき、彼らは明らかに有望な戦力になっているわけですから、待遇面での考慮も忘れないで欲しいと思います。
私も以前、学生サークルから起業した就職情報のベンチャー企業とお付き合いがありました。熱心な内定者が稚拙ながらも学生らしい提案をもってきたので、広告でも出してあげようかと、いざ企画書や名刺をよく見てみると連絡先が個人の携帯電話番号・メールアドレスになっていることに気づきました。学生本人に確認してみると、内定企業のボランティアとして自主的に活動しているとのこと。しかし、たとえ本人が納得していたとしても、企業としては無給で働く学生個人と取引するわけにはいきません。その学生さんに法的なことも説明して、アルバイト社員になって貰ってから改めて出直して戴きました。
これは特殊なケースだったかもしれませんが、今は内定者を自社のセミナーに参加させることは多くの企業が始めてきております。これから就職活動を始める学生には先輩体験談はなによりの情報でしょう。しかし、法律やビジネス面で知識の少ない学生には、大人がしっかり配慮してあげなければいけないと思います。逆にこういった面をしっかり学生に教えて配慮し、協力を仰ぐやり方ならば、それは内定者にとっても非常に良い社会人教育になると思うのです。