採用担当者はこの時期ご縁のある大学に招かれて模擬面接の面接官もよく行います。昨年からProfessional Recruiters Clubで就職指導のお手伝いを引き受けている大学でも模擬面接を行いましたが、採用面接という特種な環境下でふつうに会話するというのはなかなか難しいことです。今回、参加して戴いた学生の一部の方は、以前にお会いしたこともあるのでふだんの会話でどれだけしゃべれるか、どれだけ良い人物かを知っているのですが、模擬面接では実力を発揮できない方が殆どです。
ふつう、企業の採用面接では以下の5段階で応募者の合否判定をしているでしょう。
レベル1:立ち居振る舞い(第一印象)
レベル2:話し方(敬語、積極性)
レベル3:話しの構成(論理的思考)
レベル4:話しの内容(実体験の難度、行動力、学習能力)
レベル5:人間的魅力(人間性、本人のもつ哲学)
今回の模擬面接で、レベル4まで会話が進められたのはごく少数でした。
思うように話せなかった学生が多かったのは、模擬面接の実施時期が昨年よりも1ヶ月ほど早かったせいかもしれません。企業の先行早期化に対応して大学内指導も早期化しているようですね。しかし、もっと気になったのは、学生の“とりあえず”思考です。模擬面接を受講するに際し、事前準備をしてからやってくる学生は少なく、まず体験してから考える、という学生が殆どです。そのため、せっかく採用担当者が腕まくりをして望んでも、たった1回の模擬面接ではこちらが指導したいレベルの「会話の構成・内容」まで行けることは少なく、それ以前の「入退室の立ち居振る舞い」「履歴書の書き方」「話し方」までで終わってしまうことが殆どです。
学生の“とりあえず”思考を生んでいる原因に思いを巡らせると、やはり情報過多社会、スピード社会という現代の世相が浮かびます。特に就職活動はそれが凝縮されているようです。企業は早期に、一時期に、大量に、学生への応募エントリー、セミナー参加を求めます。学生は企業が開催する就職セミナーに十分に調べていく間もなく、“とりあえず”参加して、その雰囲気や印象で応募するかどうかを決める。こんな構図を見ていると、採用担当者が学生の準備不足を嘆くどころか、企業の作る情報津波が“とりあえず”学生を生んでいると言っても良いかもしれません。
しかしながらこんな時代だからこそ、事前にしっかりと準備して就職活動に臨む学生が光ってくるのも確かなことですね。努力をする学生にとってはやりやすい、採用担当者にとっても見分けやすい、それが今の少数精鋭採用を生んでいるのかもしれません。