来春の国立大学の行政法人化が目前となり、大学の機構改革もいよいよ本格的になってきたようです。その中でも目を引いたのは、先日の愛媛大学の就職課の設立と課長の一般公募のニュースですね。国立大学の事務系管理職の公募は非常に珍しいことですが、こういった産学の人材交流はどんどん増えて欲しいと思います。このニュースが流れた時、Professional Recruiters Clubのメンバーで応募してみたいと思ったのは一人や二人ではないでしょう。企業の採用担当者の中には将来のキャリアとして、大学就職部で働きたいと考えている方も多いのです。
さて、もし私が大学の採用担当者で、企業採用担当の応募者の面接をする場合、どんなキャリアを重視するかな、と考えてみました。できる採用担当者の選考基準ですね。まず、次の6つの就労経験が欲しいと思います。それは新卒採用と中途採用の業務経験、日本企業と外資系企業での就労経験、大企業とベンチャー企業(中小企業)での就労経験です。6つと言っても転職を5回しているというわけではありません。日本の大企業、外資のベンチャー企業で、新卒・中途採用の業務を経験していれば、転職は1回で良いわけです。この6つの経験で実績を持っている採用担当者は、ほぼどこの企業に行っても通用する人材です。
次に、採用業務以外キャリアとして、能力開発の経験もしくはキャリアカウンセリングの勉強をしていることが望ましいと思います。何故ならば、採用担当の経験だけでは応募者側の気持ちを理解するのが難しいからです。採用担当者は応募者を企業組織の価値基準で評価することには慣れておりますが、応募者個人がどんな気持ちでやってきているかを思いやることはなかなかできません。企業の採用担当者の専門性と大学就職課の似て非なる点です。視点を180度変えて、応募者(就職希望者)の気持ちになって一緒に本人のキャリアを考えてあげるには、研修等の能力開発の業務や社員の個別相談(キャリアカウンセリング)の経験が欲しいと思います。
最後に、学生に対する「愛」と「敬」の心を持っている方が必須だと思います。「愛」は学生一人一人の存在や生き方を全面的に支援してあげること、つまりキャリアカウンセリングの基本的なスタイルですね。自分の価値基準はひとまず横に置いておいて、学生個人の生き方を尊重してあげることです。そして「敬」は向上心をもっているということです。敬語は自分よりも上の存在を認めた時に産まれる言葉です。愛情は動物も持っていますが、常に現状に疑問を持ち少しでも上を目指そうという向上心は人間だけのものでしょう。それを持った人材が、学生に対して時には社会の現実を伝えて厳しい指導をすることができるのではないでしょうか。キャリアカウンセリングが治療的なカウンセリングと異なる点も、ここにあるのではないかと思っています。
今回、大学就職課の現場もあまり知らずに理想的なことを書いてしまいましたが、就職担当者、採用担当者、能力開発担当者、若者の入職という一連の重要な仕事において、それぞれの人的交流が進み、お互いを高め合うような専門性を確立していければ素晴らしいと思います。