先日、お世話になった大学教授のご依頼で大学を訪問し、コミュニケーション・スキル(グループ・ディスカッションとプレゼンテーション)について3回ほど連続講義を行ってきました。これは就職部主催の職業ガイダンスではなく、学部1年生に対しての正規授業の一環で、受身であった高校生時代の意識を変革して能動的なコミュニケーションを指導するためのものだそうです。企業の新人研修で使用していたカリキュラムを応用して参加型のものにしましたので、関心を持って戴けたようです。
今回の講義で最も印象的だったのは、多くの学生は相手と目を合わせて(アイ・コンタクトして)話をすることに慣れておらず、非常に苦労していた点です。そういった学生と話をすると、内面には良いものを持ちながらも、それを伝える意思の強さや意欲が伝わりにくく、印象面でマイナス評価になりがちです。特に採用担当者は面接だけではなく企業セミナー等で、当たり前のようにコミュニケーションをとっていますので、対人スキルには敏感ですから。
私は企業の能力開発担当として営業マンやエンジニア向けのコミュニケーション・スキルのトレーニングを行っておりましたが、これは誰でも基礎的な訓練をすればある程度のレベルに達するものです。本来、大学のゼミ等では丁々発止の討論で鍛えられたものですが、学生さんに尋ねてみると、最近は当番の学生だけがトツトツと話すだけで質疑応答は減り、先生が活性化に苦労されているとのことでした。こんな時、企業における人材育成プログラムは有効だと思います。そろそろ3年生の就職ガイダンスを始められる頃ではないかと思いますが、たまには採用担当者の業界説明だけではなく、能力開発担当者を招待してコミュニケーション・スキルの伝授を依頼されては如何でしょう?すっかり採用選考手法に定着した「グループ・ディスカッション」と「プレゼンテーション面接」は、今後もますます重視されてくると思いますし、これは就職後のビジネス・シーンにおいても必須のスキルです。
去る6月10日、経済産業省・文部科学省・厚生労働省による「若者自立・挑戦戦略会議」が開催され、「若者の働く意欲を喚起しつつ、全てのやる気のある若年者の職業的自立を促進する」ことを目標にした政策議論がなされました。これからの人材育成については産学官で底上げを行わなければ、ますます若者の能力開発を行う社会インフラが弱くなり、その結果、採用活動を行う私たちも有望な人材に出会う機会を失ってしまうでしょう。こういった産学連携の人材育成の機会を増やして、企業の採用担当者が有望な若者に出会える機会が増えることを祈ります。
参考URL:
▼若者自立・挑戦戦略会議の資料http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004140/