昨年、キャリアカウンセラーのトレーニングを受けました。この資格の受講者の約6割が人材紹介・人材派遣のいわゆる人材ビジネスの方々ですが、中には大学・高校の進路指導担当の方、そして企業の採用担当者の方も居られます。もしかするとそれは大学生に対して最も優れたキャリアカウンセラーなのかもしれません。
採用担当者とキャリアカウンセラーの仕事は似て非なるものです。この二つの仕事の共通点は、対人コミュニケーションが求められ、アセスメント評価を行う点です。来訪された応募者のやりたいこと、描いているキャリアを的確に聴き取り、アセスメント・ツール(筆記試験等)によって適性・能力を測ります。話が苦手な応募者に対しては、話がしやすいように歩み寄ったり、場合によってはアドバイスを行うこともあります。一方、全く異なるのがその目的です。キャリアカウンセラーがクライアント(応募者)のために面談を行うのに対し、採用担当者はあくまで企業の採用目的のために面接を行います。キャリアカウンセラーはクライアントの感情・気持ちに対して最大限の注意を払って精神的な関係構築をはかり、クライアントのために最大限の努力をはかります。逆に採用担当者は、応募者の熱意を評価はしますが、応募者の感情にとらわれて私情を移入しては採用選考の公平性を欠いてしまいます。
先日、キャリアカウンセラーの資格をもった採用担当者の方と一緒に、ボランティアで就職活動中の大学生との面談を行いました。就業経験の無い大学生の場合、相談内容は内面にある心の問題よりも、未知の世界へのアプローチの仕方、つまり自分と社会の関わりをどうやって作るかという点が多いようです。そんな時、採用業務を経験しているキャリアカウンセラー、自社の現場を経験してきた採用担当者は自分の経験の中から非常に上手なアドバイスを行っていました。カウンセリングの中でもキャリアカウンセリングの難しい点は、このようなLMI(労働市場情報)の知識・経験が求められる点なのでしょう。キャリアカウンセリングでは指示的な言い方は避けますが、時間の限られた就職活動では学生の内面の課題をいち早く積極的な行動に移していくことが大事だと思います。
余談ながら、いつも採用選考という立場で学生に接する採用担当者は、知らない間に自分の態度が大きくなってしまうことがあります。そんな時、立場が180度変わるキャリアカウンセリングという仕事は採用担当者が忘れがちな心の謙虚さを思い出させてくれる効果もあるようです。