きびしい経済状況が続くなか、企業の採用活動にも大きな変化が出てきています。その変化は景気循環型(一過的)なものと、構造的(継続的)なものとがあります。前者は景気停滞中の間だけ規模を縮小したり停止することで、後者は活動そのものの方法が変わり、景気が良くなっても元には戻らないものです。構造的な変化のひとつに、最近はコミュニティ型採用活動といわれるものが目立ってきました。
コミュニティ型採用活動とは、応募母集団の形成を求人広報とは別の形で行うもので、典型的なのはアルバイトを経験した学生の中から正社員や契約社員の形で雇用するものです。この手法は以前よりありましたが、採用の主流の方法として意識されてきたのはわりと最近のことです。代表的なのは、外食産業、コンビニエンス・ストアのように、チェーン展開を行いお客様との対面コミュニケーションがある業界です。
コミュニティ型採用活動の企業側の主なメリットは、以下のとおりです。
1.契約社員としての雇用もできるので総額人件費を抑えられる。
2.実際の働きぶりをみて有望な社員を採用できる。
3.採用広報コストを下げられる。
つまり、採用活動にかかる直接・間接のコストを削減し、より有望な人材を会社の業務の中から発掘していこうという発想です。現在、流行っているインターンシップ活動も、広い意味ではこのコミュニティ型採用活動の範疇に入るといえるでしょう。採用に直結させていないインターンシップもありますが、学生も企業もこの期間に自然とお互いの見合いを行っているものです。
先日、日経新聞社が発表した採用意欲が旺盛な新規上場企業の多くは、企業の最重点課題として「優秀な人材の採用」を挙げておりますが、このコミュニティ型採用活動を行っているところが多いです。日本経済の構造改革は進んでいるのかどうか実感が湧きませんが、生き残りに必死で業績を伸ばしていく企業は、採用活動も根本的に見直し、型にはまった採用活動をやめ、毎日の営業活動の中に採用活動を取り込みながら、どんどん形を変えています。自社のコミュニティをどう形成するか、これが今の採用担当者の最大の関心事なのです。